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欅坂46は“大人”を敵として時代を描く 「世界には愛しかない」で示されたコンセプト

リアルサウンド 8/20(土) 17:00配信

【参考:2016年8月8日~2016年8月14日のCDシングル週間ランキング(2016年8月22日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2016-08-22/)

 2016年8月22日付の週間CDシングルランキングでは、欅坂46の「世界には愛しかない」が堂々の1位。セカンド・シングルで32万枚以上を初週で売り上げました。これはデビュー・シングル「サイレントマジョリティー」の初週売り上げを約6万枚ほど上回る数字です。

 「サイレントマジョリティー」についてはこの連載でも取りあげましたが(http://realsound.jp/2016/04/post-7151.html)、「世界には愛しかない」に関しては個人的に大きな違いがありました。2016年8月5日~7日に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2016」で欅坂46のライヴを見て、「世界には愛しかない」をリリース前に生で聴くことができたのです。

 欅坂46は、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2016」の2日目である8月6日から出演しました。最初のステージは、11時25分から25分間ほど、野外ステージの「SMILE GARDEN」で行われました。私は都合がありこのステージを見ていませんでしたが、Twitterのタイムラインからは何か「事件」が起きたかのような空気が伝わってきました。「世界には愛しかない」とだけツイートしている友人が複数人いたことも、それに拍車をかけました。みんなどうしたんだ、と。

 そして、その8時間後。私もまた「世界には愛しかない」とだけツイートしかねない状態に突入していました。8月6日の19時25分から30分ほどHOT STAGE(Zepp DiverCity TOKYO)で行われたライヴを見たからです。欅坂46のダンスは、一糸乱れぬほど統率の取れたもので、横一列になって身体を反らせる光景だけでも強烈なカタルシスをもたらしました。これほどのパフォーマンスの完成度を誇る大人数のグループは、久しく記憶にありません。それほど鮮烈なステージでした。

 そして、MCではメンバーの素の部分が見えるような気もしましたが、しかしその進行はすべて準備されているのであろうと感じる部分もありました。そうした部分も含めたステージ全体の完成度の高さにも感嘆したのです。最初から「余白」までちゃんと用意されているのですから。

 そして、「世界には愛しかない」はHOT STAGEでも歌われました。ポエトリーリーディングだと言われていましたが、実際に聴くともっとセリフ的な要素が強く、これをシングル・カットしてくる度胸にも驚きました。白戸佑輔作曲によるコード進行の開放感や、野中“まさ”雄一編曲によるアコースティック感を押しだしたサウンドも、クオリティの高い仕事です。そして、欅坂46と「大人」を対照的なものとして描く秋元康の姿勢は、「サイレントマジョリティー」から一貫しています。

 「語るなら未来を…」(Type-A、Type-B、Type-C収録)は、プログラミングにストリングスやアコースティック・ギターの音色が絡む楽曲。「世界には愛しかない」より緊張感の強い曲調です。

 平手友梨奈のソロ曲「渋谷からPARCOが消えた日」(Type-A収録)もまた「大人」を敵とした楽曲です。そして楽曲の舞台は、建て替えのために2016年8月7日をもって一時休業に入った渋谷PARCO。このタイムリーさも、時代の空気を反映していた「サイレントマジョリティー」に通じるものがあります。「大人」を敵としながら時代の空気感を描くのが欅坂46のコンセプトではないかと感じるわけです。

 「公園通り」という言葉が出てくる歌詞には、小沢健二の1995年の「強い気持ち・強い愛」もふと連想しました。しかし「渋谷からPARCOが消えた日」は、むしろ1980年代の中森明菜を連想させるような憂いに満ちた楽曲です。「誰とどこにいて何してたのかなんて / 制服のそのシワが答えてる」というセクシャルな一節が織りこまれているのも秋元康らしい歌詞。そして、それを歌うのは15歳の平手友梨奈であるわけです。

 なお、この連載で「サイレントマジョリティー」を取りあげたときは、1998年の映画「ラブ&ポップ」との関連性について言及しました。「ラブ&ポップ」という映画の三大要素は、「真夏」「渋谷」「工事現場」だと私は考えています。そして、「真夏」「渋谷」「工事現場」の要素をすべて満たしてしまう楽曲が「渋谷からPARCOが消えた日」なのです。「ラブ&ポップ」的なるものは、セカンド・シングルにも継承されていました。

 長濱ねるのソロ曲「また会ってください」(Type-B収録)も冒頭からアコースティック・ギターの響く楽曲。サンプリングされたかのようなヴォイスが挿入されるトラックも印象的です。

 遠距離恋愛を歌った「青空が違う」(Type-C収録)もまたストリングスやピアノ、アコーステック・ギターの響くサウンド。

 「ボブディランは返さない」(通常盤収録)は、「サイレントマジョリティー」で「渋谷川」を歌っていた「ゆいちゃんず」(今泉佑唯、小林由依)が歌っています。ボブ・ディランっぽい楽曲が出てくるのか……と身構えていたところ、思いっきり日本のフォークっぽい楽曲だったので肩透かしを食らいました。しかし、この曲調はどこかで聴いたことがある……と考えていると、歌詞に「学生街のこの店に」という一節が。ガロの1972年の「学生街の喫茶店」を下敷きにしていることに、この時点で気づきました。アレンジにはCHOKKAKUを迎える入魂ぶりです。

 ちなみに、この連載でAKB48「翼はいらない」を取りあげたとき(http://realsound.jp/2016/06/post-7878.html)に触れたように、「翼はいらない」のMVの舞台も1972年でした。なぜそんなに1972年が好きなのか。それは単なる懐古趣味というよりも、その時代を知る世代にも「刺さる」ものを秋元康が狙っているのではないかと感じます。

 「ひらがなけやき」(通常盤収録)もまさにアコーステック路線の楽曲。グループ名を織りこんだ歌詞の「ひらがなけやき」には、スッと聴けるシンプルな美しさがあります。

 「世界には愛しかない」は情報量が多いのですが、「大人」との関係性を重視した歌詞や、アコースティック重視のサウンドといったコンセプトが多くの楽曲に共通しています。そして、「渋谷からPARCOが消えた日」や「ボブディランは返さない」への言及に多くの文字数を費やしてしまう自分自身に、「まんまとトラップにハマっているのではないか?」と考えてしまいました。シングルなのにコンセプチュアル・アートのようなのが「世界には愛しかない」なのです。

宗像明将

最終更新:8/20(土) 17:00

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