ここから本文です

コラム|DIYの次なるターム"DIWO"って何?

ローリングストーン日本版 8/20(土) 14:30配信

ローリングストーン日本版 2016年6月号掲載

『DIWO』"Do It With Others"と聞いて、本能的に反応したなら、現代人の証なのかもしれない。理系ではもはや常識であるこの概念について、エキソニモ千房けん輔とあらためて考えてみた。



「DIWO」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「何でも自分でやってみよう」という姿勢を意味する「DIY」(Do It Yourself)に続く考え方で、「Do It With Others」、つまり誰かとの共同作業を指している。

この言葉が登場したのは、2000年代の前半頃。プログラミング言語「C++」のオープンソースツールキットである「open Frameworks」の開発者ザッカリー・リバーマン、3Dプリンタなどの工作機械を自由に使用できるワークショップ「Fab Lab」の創設者ニール・ガーシェンフェルドといった、MITメディアラボ界隈の、テクノロジー方面の重鎮たちが使いはじめたようだ。ガーシェンフェルドは著書『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』(ソフトバンククリエイティブ)で、DIYの実践には誰かとの連携(With Others)が不可欠と指摘しており、実際に情報やツールを共有しながらものをつくる態度や環境は世界的に広まっている。ネット黎明期から活動するアートユニット、エキソニモのメンバーである千房けん輔氏は次のように語る。

「いわゆるmakerムーブメントも、ニコ動の『やってみた』みたいなすごいスピードでつくって、試行錯誤のレベルでも発表することで人とつながっている。ウェブ上でコードをシェアする『GitHub』という環境も、ソーシャルメディアのように自分のアカウントを公開できることで、ほかのユーザーとのコミュニケーションに要するコストを下げ、簡単に参加しやすくなっています」

DIYの次なるターム"DIWO"って何?(2)

そもそもヒッピーやハッカーの思想=自由の精神と反権威主義の系譜に連なる西海岸的ものづくり文化は「フリーカルチャー」や「シェアカルチャー」を拠り所としているのだから、DIYからDIWOへ、つまり「自分でつくること」だけでなく「誰かとのコミュニケーション」自体にも、精神的な満足度の比重が増したのは自然な流れだろう。そして「空き部屋を人に貸す『Air bnb』のように、シェアカルチャーは今後各方面に一般化していく」と千房氏が言うように、エンジニアリングやプログラミング界隈での常識であるDIOWO現在、音楽などその他の文化や社会的な領域にも波及しつつある。

しかし考えてみればDIYの時代から、わからないことを聞いたり道具を借りたりして、誰かと共同作業することは当たり前ではなかったろうか? なぜわざわざDIWOなる概念をつくりだし、「誰か」という存在を再発見する必要があったのか。そこには、「豊かさのシェア」とも言えそうな、創作とコミュニケーションの新しいあり方があるように予感するのだが――。千房氏はこう指摘する。

「ものづくりに関しては、みんなで気軽につくってシェアすることで、尖ったものは生まれてこないと思います。いろいろな人がかかわることでプログラミングのバグが発見・改善されるように、そのコミュニティに順応し、実務的に機能する方面にクオリティは上がるでしょう」

おそらく創作は、個人の利益や目的の追求ではなく、パブリックに奉仕するものへと今後シフトしていくのではないだろうか。近代的自我、競争社会、資本主義を脱した新しい世界の到来。DIWOとはその予兆であると宣言するのは、果たして大袈裟だろうか。

Edit by Hiroshi Kagiyama

Kotaro Okazawa

最終更新:8/20(土) 14:30

ローリングストーン日本版

記事提供社からのご案内(外部サイト)

RollingStone 2017年WINTER

株式会社パワートゥザピープル

2017年WINTER
12月10日(土)発売

880円(税込)

特集:The Rolling Stones
約11年ぶりの新作インタヴュー
ONE OK ROCK
SUGIZO/TAKURO
浅井健一/西島隆弘 AAA

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。