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ベトナム対中関係悪化の裏で存在感を増す台湾と日本

HARBOR BUSINESS Online 8/20(土) 9:10配信

 8月上旬、ベトナム最大都市ホーチミン市に滞在する邦人の間ではある事件の話題で盛り上がっていた。7月23日、ホーチミン市のタンソンニャット国際空港の入国審査で中国人女性のパスポートへ「Fuck you」と侮蔑語を書き込まれたと7月26日くらいから中国のメディアで大きく報じられた事件だ。(参照:『新京報網』)

 中国では事件をトップニュース扱いで報じるもベトナムのニュースでは大きく取り上げられることもなく大きな温度差が生じている。

 問題となった中国のパスポートは2012年から発行された新しいパスポートで、この新しいパスポートの4、24、46ページには中国が一方的に主張する南シナ海での領有権を示す九段線が描かれており、ベトナムやフィリピンが猛反発している。ベトナム政府は、対抗処置として中国の新パスポートへは出入国印を押さないオペレーションを実施している。

 そのため、この事件に対してベトナムのインターネット上では、「よくやった!」「英雄だ!」とベトナム人が犯人だと認めた上で賞賛する書き込みも見られる。また、「中国の自作自演だ」「ベトナムの入国審査は確かに青色のペンを使うがタイや他国だって使う。どうしてベトナム人の犯行だと決めつけるのか?」などベトナム人が犯人ではないという書き込みなどが見られる。

◆わりと「似た者同士」な中越関係

 そもそも、ベトナムはインターネットの規制が強く、特に政府やベトナム共産党への批判を厳しく監視している。例え外国人の書き込みであっても厳罰に処される。実は2013年までベトナムでは「フェイスブック」は事実上規制されており、「LINE」もプロバイダーによっては規制されていた。しかし、現時点では規制緩和されて利用できるようになるなど、近年、インターネットの自由度は格段に増しているが、それでも政府批判等は特別な注意が必要だと在留邦人は警告する。

 そんなインターネット監視が強いベトナムだが中国が関係する内容は黙認されているようだ。本来、デモ活動が禁止れているベトナムで南シナ海での緊張が高まった2014年5月に各地で反中デモが発生したときも事実上黙認されたことは記憶に新しいかもしれない。

 このあたりは中国での反日デモに対する扱いと類似している。中国における日本とベトナムにおける中国の位置づけが同じだといえ、ともにデモを政府への不満や批判のガス抜きに利用している。その意味では越中両国は似た者同士だ。

 そして、ベトナムで高まる反中ムードに対してチャンスだと考えている国がある。それは、台湾だ。

◆中越関係悪化をチャンスとみる台湾

 ホーチミン市台北経済文化事務所(事実上のホーチミン市領事館)によると、ベトナムに滞在する在留台湾人は約6万人、台湾は、ベトナムの輸出額順位4位(中国、韓国、日本)、輸出入を合わせた総貿易額で5位(中国、アメリカ、韓国、日本)と上位を占める。

 また、ホーチミン市だけで約41万人の華人がおり、ホーチミン市の全人口の6%になる。華人とは国籍を出身国のまま残している人たちで台湾出身者と中国大陸出身者を合わせた人数となる(2012年)。ホーチミン市5区にはチャイナタウンが広がっており台湾系の勢力が強いと言われる。

 さらに台湾人と結婚して配偶者として台湾で暮らすベトナム人は約10万人、台湾に労働者として従事するベトナム人が約17万人いるなど人・物でのベトナムと台湾の結びつきは強い。

 台湾では、中国の経済発展にともない、経済面で中国への依存度が高まり2010年には全体の輸出の4割を中国(香港含む)が占めるまでになっていたが、その後、停滞し、2014年11月からは減速が始まり、2015年は通年での減少となっている(参考文献:『中国バブル崩壊』日本経済新聞社)。台湾も日本同様に中国からベトナムへのシフトが進められており、ベトナムとの関係強化の動きを見せている。

 2014年の反中デモの際にホーチミン市郊外の台湾企業が中国企業と間違えられて襲撃されるなど中国と混同されることも多く、「台湾と中国の違いや台越関係は良好であることをもっと知ってもらう努力が大切です」とホーチミン市の台湾人駐在員は語る。

◆そして日本も同様に

 日本にとっても台湾同様にチャンスだと捉える人は少なくない。外務省の海外在留邦人数調査統計によるとベトナムの在留邦人は、8543人(2010年)から1万4695人(2015年)と急増している。この人数は大使館や領事館へ届け出た長期滞在者で、ここへ旅行者や短期出張者は含まれていない。

 7月30日には、日本の大手百貨店では初出店となる「ホーチミン高島屋」が観光客が足を運びやすい中心街1区にオープンしたり、日本企業が同国初の地下鉄工事を進めたりするなど日本もベトナムでの存在感を増す動きが加速している。

<取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/20(土) 10:39

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