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「情けないっす」。エイバル乾貴士は予想外の開幕先発も痛恨の不発

webスポルティーバ 8/21(日) 15:56配信

「何もできなかったすね。情けないっす」

 デポルティーボ・ラ・コルーニャの本拠地、リアソルのミックスゾーンに姿を見せたエイバルの乾貴士には、いつもの人懐こい笑顔はなかった。それも仕方がない。2016~17シーズンの開幕戦となるデポルティーボとの対戦。乾はスペインのどのメディアも予想しなかった先発出場を果たしたが、十分に自分の力を発揮したとは決して言えず、73分にピッチを去った。

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 しかもチームは先制しながら、試合終了間際の疑惑のPK判定で2対1と逆転負けを喫したのだから、乾の表情が曇ったのも当然だ。

 正直、先発はサプライズだった。プレシーズンのエイバルの情報からも、日本人MFの先発出場を期待させるようなヒントはなかったため、こちらは試合前、青と白のユニホームに身をまとった多くのデポルサポーターが集まっていたスタジアム近くのバルでお茶をしながら、先発メンバー発表のTwitterを特に期待もせずにチェックしていた。

 だが、そこには背番号8番「INUI」の名前が11人の枠の中に記されていた。すぐさま会計を終わらせると、道路をはさんだ先にあるスタジアムへと駆けつけた。

 高い位置からプレスをかけるインテンシティあるサッカー。それが昨季のエイバルのよさだった。だが今季の開幕戦は、序盤からロングボールと縦への速い仕掛けをしてくるデポルティーボのサッカーの前に、自分たちのよさを出すことができない時間が続いた。

 それでも55分、ベベのCKにイバン・ラミスが頭で合わせてエイバルが先制点を奪う。だが、その喜びも長くは続かなかった。69分に同じようにセットプレーからペドロ・モスケラに同点弾を決められた。そして試合終了間際の87分には、微妙な判定とはいえPKを与えてしまう。デポルティーボはこのチャンスをしっかりとエースのルーカス・ペレスが決め、逆転に成功した。

 後味の悪い逆転負けを喫したエイバル。ベンチからチームの敗戦を見つめることになった乾は、試合終了を告げる審判の笛が鳴り響くと、足早にロッカールームへと姿を消した。

「監督の狙いとして早めにクロスを上げるというのがあるので、それを意識してプレーした。けど単純なクロスでは相手を崩せないし、ひと工夫をする必要があった」

 この試合、乾のクロスは味方に届かず、全ては相手チームが張った守備の網にかかってしまった。また、シュートに関しても34分の1本のみ。攻撃的な役割を担う選手として物足りない内容であることは、誰よりも本人がわかっていた。だからこそミックスゾーンに現れた乾の顔には笑顔がなかったのだ。

 物事がうまくいかないときはストレスをため込んでしまうものだ。だがそういう苦しい状況でも、必ず自分のことを見守り、後押しをしてくれる人たちがいる。リアソルでのデポルティーボ・ラ・コルーニャとの開幕戦には、少ないながらもエイバルサポーターがチームを鼓舞するために駆けつけていた。

 試合前にバルでお茶をしているとき、2人の息子を連れたエイバルサポーターの夫婦が目の前を通った。母親が着ていたユニホームは背番号8番、乾のものだった。父親はこちらが日本人であることを知ると、「彼はエイバルのベストな選手だぜ」と、親指を立てて話してくれた。

 もちろん乾は彼らのことを知らないだろう。だが、その家族は間違いなくエイバルと日本人MFを応援してくれている。乾が試合後に笑顔を見せるような活躍ができれば、あの一家も笑顔に包まれることになる。乾にはそんな光景が見られるシーズンにしてもらいたいものだ。

山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi

最終更新:8/21(日) 15:56

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