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モノブライト出口博之の特撮自由帳(4)レオパルドン、チェンジロボ、シンケンオー……各年代を彩る特撮おもちゃをイジリ倒します!

おたぽる 8/21(日) 14:00配信

 こんにちは、モノブライトのベース、出口です。
 特撮と切っても切れない間柄にあるのが、特撮玩具、いわゆる「おもちゃ」です。新しく登場したヒーローの変身アイテムや使用する武器、そして搭乗するロボットなど、一年間の放送期間中に実に多くのおもちゃがリリースされています。昨今のおもちゃはどれも非常に良くできていて、子供はもちろん大人でも十分に遊べるギミックは、新商品が発売される度に新鮮な驚きを与えてくれます。

 その特撮玩具の花形と言えるのが、スーパー戦隊シリーズのロボットのおもちゃ。変身アイテムや武器のおもちゃに比べると、2号ロボ、3号ロボは当たり前、続々と発売される拡張キット的な追加ロボットを含めるとお値段もギミックも数段上になり、名実共に特撮を支えるおもちゃと言っても過言ではありません。

 幼い頃の私も『電撃戦隊チェンジマン』の「チェンジロボ」を持っていて、小さなパーツが壊れたりロケットパンチのパーツを紛失しても大事に遊んでいました。しかし、楽しい記憶の傍には「新しいロボットを買ってもらえなかった」という、ちょっと寂しい記憶もあります。子どもに買い与えるには高額なおもちゃですので、ホイホイ買い与えなかった両親の判断は正しいと今では理解できるのですが、ターボレンジャーの「ターボビルダー(規格外にデカい)」を持っている友達を羨ましく思う気持ちは大人になっても胸の奥に居座っており、おもちゃが子どもに与える影響力は大きいと感じずにはいられません。

 ほとんどの特撮少年の心を掴むスーパー戦隊シリーズのロボットのおもちゃですが、ひとつのシリーズにおいて同じフォーマットで毎作違うロボットが登場すること自体、世界的に見ても例を見ないことを考えると、その歴史はある意味で日本の特撮の歴史であり、日本のおもちゃの歴史とも言えます。同時に、ロボットアニメとも影響関係にあることから、日本におけるロボット作品全般の発展に多大なる影響を与えているのです。

 そこで今回は、夜な夜な都内某所で特撮談義をするライター有田シュン氏、可動可能なロボットの貸し出しと特別解説として、我々の特撮&おもちゃの先生であるアニメーション研究家・五十嵐浩司氏にご登場いただき、スーパー戦隊シリーズのロボットを70年代から2016年現在に至るまでの各年代から一体ずつ選出し、実際におもちゃを手に取りながらその魅力と歴史に迫りたいと思います。


■シリーズの始祖、最強との呼び声も高いレオパルドン
 スーパー戦隊シリーズの第1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』(75)と2作目『ジャッカー電撃隊』(77)にはロボットが登場しません。ロボットが登場するのは第3作目になる『バトルフィーバーJ』(79)からなのですが、実はジャッカー電撃隊とバトルフィーバーJの間には1年間の休止期間が存在します。その一年間何があったかと言うと、知る人ぞ知る『東映版スパイダーマン』(78)が放送され、原作のマーベル・コミックでは存在しない東映版スパイダーマンオリジナルのロボット「レオパルドン」が登場し、のちのスーパー戦隊シリーズのロボットの礎を作ったのです。劇中では登場してものの数秒で敵を撃破することから、“最強のロボット”との呼び声も高い、シリーズにとって重要な意味を持つロボットです。

出口博之(以下、「出口」) 今回一番現物が見たかったのが、このレオパルドンです。
有田シュン(以下、「有田」) ついこの間、オフィシャルに認められたレオパルドン!
五十嵐浩司(以下、「五十嵐」) ロボットで言えばこの前に『大鉄人17』があり、その系譜を受け継いでいるのでこの頃はまだ合体ロボットではないんです。

 レオパルドンには合体機構がなくスフィンクス形態から人型への変形機構のみですが、今のものと比べても遜色のないギミック(変形時、足のパーツを展開させると連動して他のパーツも可動するギミック)が搭載されています。
 五十嵐氏所有のレオパルドンは当時のものながらほとんど劣化が見られず、特に銀メッキパーツの輝きは今では「ここまでやらないだろ!」レベルのビッカビカな処理になっています。

有田 カラーリングが黒と黄色とシルバーの配色が渋いですね。
五十嵐 強い色ですね。先端にいくほど濃い色になると強そうに見える。『マジンガーZ』でやっていた手法ですね。これをやっていないのがガンダムぐらいで、ほぼ白。

 胴体は金属で構成されていて、手に持った感じの工具のそれに近いずっしりとした質感はまさに超合金、ロボットならではの重量。あくまでロボットであることの表現も各部の細かいディティールに現れていて、例えばモールド処理で終わる足の裏も変形時にバーニアの役目になる構造から、きちんと別パーツで処理されています。

五十嵐 ロボットの見せ方の基本で、メカニックであるということ。これはロボットだから、メカとしてちゃんと妥協せずに作ってある。

■デザインが一新された80年代の金字塔、チェンジロボ
 爆発的な人気を誇る『電撃戦隊チェンジマン』(85)に登場するチェンジロボ。作品の世界観もミリタリー色の強い作風からか戦闘機、戦車、ヘリコプターの3機の見事な合体が、スーパー戦隊シリーズのロボットの合体の歴史に新たな風をもたらしました。
 ロボットでヘリコプターが用いられるのは珍しく、合体機構を考えると戦闘機、戦車が妥当ですが、ヘリコプターの胴体を半分に分割して胸部、腕部の役割を持たせる発想は立体パズル的な面白さもあり、単純な組み合わせではない現在のロボットの原型と言えます。

有田 合体後も、元の乗り物のディティールがデザインとして残っている点が素晴らしい。
五十嵐 バンダイのお家芸とも言える、機能がデザインを兼ねる、というやつですね。

 合体後、太ももに流れる赤い直線のラインは、合体前はチェンジドラゴンが乗るジェットチェンジジャー1の垂直尾翼にもなっていてまさに乗り物の機能がデザインを兼ねる代表的な例です。
『チェンジマン』放送当時の80年代中盤はロボットアニメではリアル志向の作品が多く、『機動戦士Zガンダム』や『超獣機神ダンクーガ』などが放送されていて、そのリアル志向の影響が、チェンジマンの前作『電子戦隊バイオマン』(84)のメカ描写(コックピットにフィギュアを乗せる等)にも見られます。メカである、乗り物である、という巨大ロボットの本懐を前面に押し出すことによって、謎の力ではなく搭乗者の力によって動く説得力を生み出しているのです。

 出口、有田氏はともに『チェンジマン』は幼少期リアルタイムで見ていた作品であり、チェンジロボも所有していたことから思い入れも強く、ほとんどの会話が「すげー!」と「カッケー!」で成立していました。


■海外展開も視野に入れた90年代無敵のロボット 
 80年代までのロボットは作品の世界観とはある意味では隔絶された存在として、あくまで「ロボット」としての役割を持っていました。前述の『チェンジマン』は、作品の世界観が軍隊なので登場する乗り物との親和性は高いですが、例えばシリーズ初の5台合体ロボットのグレートファイブは、合体前は乗り物は戦闘機やヘリ、戦車。マスクマンの世界観(モチーフは拳法、第六感的な気の力)を見ると、その乗り物である必要性が薄い、という点があげられます。
 90年代に入りシリーズの世界観がファンタジー寄りに、いうなればアニメ寄りにシフトしていき、ロボットに合体する乗り物も戦闘に特化したものとは限らず、幅広いモチーフが取り入れられ誰がどのメカに乗っているかわかりやすくなっています。

五十嵐 70年代は『スター・ウォーズ』、80年代には『機動戦士ガンダム』などのリアルロボットブームの影響を受けて、実写作品もリアル志向になるという関係性がありましたが、90年代は巨大ロボットアニメが下火になっていた時代。バンダイさんがスポンサーのアニメも『NG騎士ラムネ&40』や『疾風!アイアンリーガー』『ヤマトタケル』『覇王大系リューナイト』など、ちょっとひねったロボット作品が多かった時期ですね。そして、スーパー戦隊シリーズも10年以上続いてきたので、新しいものをいれようとする流れがありました。

 90年代を代表するロボットアニメと言えば『太陽の勇者ファイバード』をはじめとする「勇者シリーズ」があり、このシリーズでは車や飛行機をモチーフとするいわゆる正統派ロボット作品だったこともあり、その影響でスーパー戦隊シリーズではこれらのモチーフを外した新しいロボット像を模索するフェーズに入ります。

 スーパー戦隊シリーズの海外シリーズ『パワーレンジャー』(93~)の展開に合わせて、忍者モチーフとお城を基本デザインにしたロボットが採用された作品が『忍者戦隊カクレンジャー』(94)なのですが、無敵将軍は安易な海外向けの変化球ではなく、ロボットの本懐とおもちゃとしての面白さを兼ね備えた画期的なロボットなのです。

 獣将と呼ばれる5体の人型ロボットが合体し無敵将軍になるのですが、その合体プロセスは作品を知らないと合体させることができない難解なパズルに近い合体機構を持っていて、合体前と合体後がまったく違う形になる変形機構は圧巻の一言。何よりシリーズ初の「5体の人型ロボットの合体」であることも見逃せません。

 兵器然としたミリタリー寄りなロボットではなく、ひとつのキャラクターとして成り立っているロボットであり、その根底にはこれまでの基本となっているスーパー戦隊シリーズのロボット像の拡大を目標においたチャレンジ精神がある、というのが90年代スーパー戦隊シリーズのロボットなのです。


■文字からロボットへ、パズル合体の最高峰
 90年代にアニメ的要素を取り入れ世界観の拡張に成功したスーパー戦隊シリーズは、2000年代前半にロボットというジャンルにおいてその地位を確立させます。言い換えると、影響関係にあった合体するロボットアニメ作品が少なくなり、スーパー戦隊ロボットが独走状態に入った、ということです。90年代に蓄積された乗り物ではないロボットの変形と、単純ながら予想もつかない合体機構のノウハウは、『侍戦隊シンケンジャー』(09)のシンケンオーに集約されます。

 通常、合体前の単体ロボットは「単体形態」と「合体時形態」のふたつなのですが、このシンケンオーは合体前のエンブレム状態から、動物形態になり、シンケンオーに合体する体のパーツと、3段階に分かれています。
 特にエンブレム状態から動物形態になる変形は単体のおもちゃとしても完成度が高く、バンダイが得意とする変形玩具(タマゴラスやもじバケる等)のノウハウがふんだんに取り入れられており単体ロボットがただ単に合体のためのパーツではなく、ひとつのロボットしての存在感を獲得しています。

 実際に変形合体を試みる出口、有田氏両名。変形機構の面白さに感嘆しながらも完璧な合体には至らず。五十嵐先生の助言によりようやく完成にこぎつける。

有田 シンケンオーの好きな部分、腰のくびれなんですよ。
五十嵐 ギリギリのデザインなんですけどね。腰と太ももが同じラインだけど、格好良さがあるのはデザインの妙。

 今現在のロボットは概ねガンダム的なバランスの格好良さが基準になっているのに対し、スーパー戦隊シリーズのロボットはその基準を一切排した独自の格好良さを追求したものになっているのが非常に興味深い点です。シンケンオーはスーパー戦隊ロボットのひとつの到達点、と言っても過言ではないでしょう。


■シリーズ最新作にしてシリーズ最大のチャレンジ精神が盛り込まれたロボット 
 現在放送中の『動物戦隊ジュウオウジャー』は、シリーズ第40作であり、秋に通算放送回数が2000回を迎える記念碑的な位置づけの作品です。動物モチーフという王道の設定はメモリアルイヤーとしては納得の選定ですが、ロボットであるジュウオウキングに関してはこれまでみたこともないまったく新しい概念の合体機構が登場します。四角いキューブ状のメカ(ジュウオウキューブ)が動物形態になる、ここまではシンケンオーと同じですが、合体のための変形が排されているので単体では体のパーツになれないのです。その新しい合体機構とは、キューブ形態に戻った3体のジュウオウキューブが縦に積み重なり、キューブの中心をビッグキングソードを上から刺すとスプリングが仕込まれた腕部が展開し合体が完了する、というものです。これまで見られた時間をかけて解くパズル的な要素は少なく、逆に一瞬で腕部が展開する「瞬間的な変形」の面白さと生理的な気持ちよさがあります。

 プロポーションに関してはキューブを積み上げた合体、合体時に展開するのが一番上(上半身)に位置するキューブイーグルのみなので、横から背後にかけてはロボット的なディティールが少なく可動部もないためポージングをつけることができません。しかし、合体の手順が3手という少なさは、スーパー戦隊ロボットの変革とも言えるほどの思い切った機構です。この理由は最初にジュウオウキングの完成型が作られ、そこから分解していく中で生まれたもの。これまでのロボットは組み上げて設計されているため、基本概念がビルドアップになります。分解していくことは要は引き算になるので、ジュウオウキングの思いもよらない合体機構が生まれた理由はここにあります。複雑なビルドアップではなく上に積み上げるというシンプルな構造、子供の手にも馴染みやすい積み木の発想の応用はジュウオウキングにおもちゃとしての堅牢さと安全性を与えており、小さな子供が力一杯遊んでもビクともしません。

 シリーズ40作にしてロボットの合体に新しい仕組みを組み込む背景は、長期シリーズの宿命である「マンネリ回避」がひとつの要因になっています。同じモチーフを持つ複数人のヒーローが変身しロボットに搭乗して戦う。この基本フォーマットを遵守しながらさまざまなスーパー戦隊が今日も誕生し戦い続けているのは世界的に見ても非常にレアケースで、これは日本のヒーローの歴史、日本のロボット作品の歴史、そして日本のおもちゃの歴史と言えるのです。

 スーパー戦隊シリーズのロボットにはおもちゃとしての面白さを軸に、劇中と同じ合体機構であること、2号ロボ、3号ロボとの合体変形の拡張性、中にスーツアクターが入ること、そして日本における合体ロボットの誇りが、昨今のアクションフィギュアと比べてずんぐりとしたボディに詰め込まれています。

 正直に言うと、ジュウオウキングを始めて目の当たりにしたとき「大丈夫かなこのロボット」という印象がありました。しかし、放送が始まると子供たちはジュウオウキングの合体、変形機構に夢中になっているのです。何か新しいものを目の当たりにしたとき、大人は自分の経験則からどうしても何かに置き換えたくなる心理が働き本質を見失いなうことがあります。ポージングができない、合体後足が開かない、そんなことはジュウオウキングには関係ないのです。スーパー戦隊ロボットを動かすもの、それは「見立て」なのです。イマジネーションを働かせれば、躍動感溢れるポージングも、劇中と同じ必殺技を繰り出すことができるのです。このイマジネーションがあるからこそ、次々に新しいロボットが私たちの前に現れ、新たなイマジネーションが創造されるのです。

 いかがだったでしょうか?
 実際に目の前にロボットを並べてみると、時代考証や作品の背景を考えるよりも先に「これすごい!」「楽しい!」と子供のようにはしゃいでしまう場面もありました。貴重な当時の玩具を貸してくださり、詳細な解説を頂いた五十嵐浩司先生、ありがとうございました。
 今回は各年代から5体のロボットを選出しましたが、シリーズ全体を見るとまだまだほんの一部にすぎません。2号、3号ロボを含めると、その数は膨大な数にのぼります。いずれすべてのロボットをいち特撮ファン目線でレビューできたら、というのが私の当面の夢です。

■モノブライト公式サイト
http://www.monobright.jp/

■モノブライト セルフカバー『VerSus』をリリース!
発売日:2016年10月12日(水)リリース
価格:1,667円(税抜)
品番;ASCU-2007
レーベル:kiraku records.

最終更新:8/21(日) 14:00

おたぽる