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日本人が知るべき「世界フィンテック最新事情」

Forbes JAPAN 8/21(日) 11:00配信

まだ少しずつサービスを始めたという段階にすぎない日本のFintech企業と比べ、中国やアメリカでは多くのプレーヤーが躍進し、すでに社会の一翼を担っている。



約5,000億円ー。2016 年4月26日、目を疑うような巨額の資金調達案件が話題となった。その主役は、中国のアリババ・グループが設立した金融サービスの専門会社アント・フィナンシャル。同社の決済サービス「アリペイ(支付宝)」は4億人に使われ、短期資金ファンド「Yuebao(余額宝)」も2 億6,000 万人が投資している。アリババといえば、15 年11月の「独身の日」のセールにおいて、1 兆5,000億円もの売り上げが一日で生まれたことがニュースとなったが、この売り上げはアリペイを介して支払われたものでもある。

中国で続いているFintechの躍進

アント・フィナンシャルは、アリババ・グループの存在感をテコに、この巨額の資金を中国内外のさまざまな金融ベンチャーやインフラに投資していく見込みだ。上流から下流までを押さえにいく同社の戦略はFintechにおいては王道的な戦略といえる。特に、アリババ・グループが東南アジア最大のECサービスLazada(ラザダ)社に巨額の投資を行い、支配権を得るなど、アジア全体への影響力を強めつつある中で、インフラにも手が届くことのインパクトは計り知れない。

中国ではFintech 企業の躍進が続いている。例えば、テンセント社が運営するメッセンジャーアプリ「ウィーチャット(微信)」は、決済手段として「ウィーチャット・ペイメント(微信支付)」を提供し、少額決済の手段として急速に利用度を伸ばしている。今年の旧正月には80 億通もの「紅包(お年玉に相当)」が送金された。こちらも、メッセンジャーアプリという強力なソフトに、決済インフラビジネスが付随してきた形となる。

これらメガベンチャー以外にも、中国では巨額の資金調達が進んでいる。個人同士がお金を貸し合うことができる「Lu.com」や、ECサイト「JD.com」の金融関連ビジネスは、今年に入ってからそれぞれ1,000 億円を超える資金調達を実施した。その結果、今年第1四半期における世界のFintech資金調達ランキングでトップ5 社のうち3 社を中国勢が占めた。

まだほとんどのサービスが今後普及を遂げていくべき段階にある日本のFintechプレーヤーや金融機関などの当局すべてが、このような中国のスピード感を参考とすべきではないだろうか。
--{ 米国におけるP2Pレンダーへの規制強化}--
米国市場ではFintechが今や一般化し、社会制度の一部となりつつある。

それを象徴する動きが、この5月9日にあった。P2Pレンディングの象徴的人物である、米レンディング・クラブ社のルノー・ラプランシュCEOの辞任である。レンディング・クラブは2兆円を超える貸し出し実績を有し、世界的にFintech 企業の代表格とも言われてきたプレーヤーである。報道によれば、辞任に至った理由としては同社が機関投資家に販売したローン債権にコンプライアンス上の問題があったことや、ラプランシュが利益相反の恐れのあるファンド投資を行っていたことなどが取り沙汰されている。

P2Pレンディングは、08 年のリーマン・ショック以降、銀行が貸し渋る中小企業や個人に向けて、代替的な融資手段を提供してサービスを拡大し、近年では貸し手は個人に限らず、ヘッジファンドなどの機関投資家も加わるようになってきた。

P2Pレンディングが主たる金融チャネルの一つへと成長する中で、規制上の懸念がなかったわけではない。P2Pレンダーがローンの借り手と貸し手を仲介するだけであれば、ローンの審査が疎かになるのではないかという懸念である。また、新たなFintechプレーヤーが売却するローンについては、銀行と比べて情報の整理が行われていないため、結果として市場が不透明になってしまうことも懸念されてきた。それだけに、ラプランシュの問題は市場から失望をもって受け止められただけでなく、Fintech 全体への規制強化に向けた論陣を張るメディアも出てくることとなった。ラプランシュの辞任の翌日の5月10日には、米国財務省が「マーケットプレースレンディングの機会と課題について」というタイトルのリポートを公表している。

ただ、この流れはFintechの拡大を阻害しようとするものではない。むしろ、金融システムという社会の重要なインフラの一部にFintechが定着したことで、従来であれば例外的に捉えられてきたプレーヤーを制度の一部として位置づけ、より社会の役に立つ金融システムを構築しようとする試みといえる。米国のような本格普及に至るにはまだいくつかの制度的な障害が存在している日本でも、米国で行われているような議論が、そう遠くない将来、展開されることを期待したい。

瀧俊雄◎マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長。共著書に『FinTech入門』がある。

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:8/21(日) 11:00

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