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YouTube vs 米音楽業界:争いの内幕

ローリングストーン日本版 8/21(日) 13:00配信

ネットの動画配信ビジネスはアーティストを潤わせてきたはず。ではなぜ、テイラー・スウィフトをはじめとするアーティストたちは離れていくのだろうか? 

アップル流、音楽ストリーミング戦争を勝ち抜く方法

2015年、Deadmau5(デッドマウス)は、自身の代理人であるディナ・ラポルト弁護士へ「YouTubeのこれ、なんとかしてくれ」とSkypeでメッセージを送った。その時YouTubeのとあるチャンネルには、アルバム曲、リミックス、ライブの全編を撮影したものなど、400もの動画が不正にアップされていた。「私は弁護士補佐と一緒に6時間もかけて、400件ものコンテンツ削除依頼を送りました。その後チャンネルは一旦削除されましたが、2日後にまた復活していました。これは私のクライアントにとって大問題です」と、ラポルト弁護士は述べた。

10億ユーザー以上を抱えるYouTubeは、今やネット上で最もポピュラーな音楽配信ソースとなっている。一方、テイラー・スウィフト、ポール・マッカートニー、ベック、キングス・オブ・レオンなどのアーティストにとっては頭痛のタネとなっている。彼らは米議会へ公開書簡を送り、何百万本もの動画を不正に公開しているYouTubeを規制するための法改正を要求した。「アーティスト側に選択肢はない。アーティストが好むと好まざるとにかかわらず作品が不正にYouTubeで公開されてしまっている」と、イーグルスやヴァン・ヘイレンのマネージャーも務めたアーヴィング・エイゾフは指摘する。エイゾフもまたYouTubeに対し、(1)アーティストへのロイヤリティ支払額があまりに低いこと、(2)不正コンテンツ削除の不完全性、の2点についての改善を正式に求めている。

音楽ビジネスは以前と比べて勢いが衰えている

音楽ビジネスは以前と比べて勢いが衰えている。アルバムのセールスも10年前の60%にまで落ち込んでいる。一方でYouTubeはその存在感を増し、アメリカ国内で18歳~24歳のインターネットユーザーの実に98%がYouTubeを利用したことがあるという調査結果が出ている。YouTubeによると、同社の広告収入から30億ドルがアーティストやコンテンツ・クリエイターへ支払われているという。「YouTubeは若者にとって現代のラジオになっている」と、キングス・オブ・レオンやチープ・トリックなどのマネジメントを手がけるケン・レヴィタンは言う。

しかし前出のエイゾフは、「ラジオと違い、YouTubeは悪質なビジネスパートナーだ」と指摘する。YouTubeは不正流出したコンテンツや質の悪いライブ映像の公開を許している。しかも、SpotifyやApple Musicなど他のストリーミング・サービスとは比較にならないほどロイヤリティの分配率が低く、「スーパースターであっても、YouTubeから得られる収入は笑えるほど少ない。YouTubeのロイヤリティ計算方法は非常に複雑で、1配信あたりの正確な金額も不透明である。計算方法を複雑にしてアーティストを煙に巻くやり方は、昔のレコード会社と同じだ」と、エイゾフは言う。

1998年に成立した米デジタルミレニアム著作権法(DMCA / Digital Millennium Copyright Act)により、YouTube等の配信サイトはアーティスト側の承諾なしにコンテンツを配信できる。同法では、リクエストに応じてコンテンツを削除可能な状態にしておくことを条件に、他者が著作権を所有するコンテンツをネット上で配信することが許されている。しかしYouTube時代ともいえる現在、アーティストの代理人は、毎日新たにアップされる星の数ほどの動画をモニタリングする必要がある。これに対しYouTubeは、6000万ドルをかけて開発したデジタル認証技術を使った "Content ID"プログラムというコンテンツ検証システムで不正コンテンツを特定できる、として問題に対処している姿勢をアピールしている。

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最終更新:8/21(日) 13:00

ローリングストーン日本版

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