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藻谷浩介が現場を歩く「里山資本主義」――八戸市の大成功事例

HARBOR BUSINESS Online 8/21(日) 9:10配信

アベノミクスの恩恵は、都市部や大企業が中心で、地方や中小企業にはほとんどまわってきていない。特に、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の経済的復興はまだこれからだ。HBOは、エコノミスト・藻谷浩介氏の講演ツアーに同行して東北復興の“現場”を歩き、地域の特性を活かした「持続可能な経済」について考えた!

◆【青森】八戸市の魅力をフル活用!住民同士の連携で地域振興

 地方経済活性化のための「里山資本主義」を提唱する藻谷浩介氏が「大成功事例」と高く評価しているのが、青森県八戸市の地域振興だ。

「町田直子氏(NPO法人『ACTY』代表)らが中心となって、地元食材や自然景観、飲み屋街、漁港や朝市など、地元の魅力をフル活用して、地域振興につなげているんです」(藻谷氏)

 藻谷氏が特に絶賛するのが、日本一の規模といわれる八戸港館鼻岸壁「みなと朝市」だ。朝3時前から300以上の店が岸壁前の広場にずらりと並ぶ。地元産の魚介類や農産物などが売られ、屋台でさまざまな地元名物を食べられる。3~12月の日曜夜明け~9時に開催され、年間約60万人が訪れるという。出店者の年間総売り上げは約6億円、経済波及効果は16億円、新規雇用者150人と推計されている。

「最初は『あんな辺鄙な場所でやっても人は来ない』という声もあったのですが、始めてみたら、どんどん店の数が増えていきました」(町田氏)

 地元住民でつくる「湊日曜朝市会」が自主運営管理を行い、仮設トイレ設置やゴミ分別、場内放送などを行う。スタッフの人件費などは、出店者から1区画1万円を徴収して捻出する。

◆朝市と飲み屋街の相乗効果で「滞在型」の観光客が増える

 朝市は相乗効果も生んでいる。金融街や行政施設に近い八戸市中心部には、レトロ風の飲み屋街「みろく横丁」がある。’02年の新幹線八戸駅開業に合わせて作られたこの横丁は、深夜まで地元住民や観光客で賑わっている。ここでは地元産食材の提供や新名物料理・郷土料理の紹介だけでなく、街の情報発信基地の役割も担う。夜の街で地元の人と接することで八戸の魅力を知り、翌日の観光に活かすことができる。

「それだけでなく、八戸の将来を見据えて『若手起業家を育てたい』という目的もあるんです」(町田氏)

 この横丁の特徴は「数年ごとに出店者が入れ替わる」というシステム。店を始めたい人たちが低予算で開業でき、料理の審査も行われるので、客も安心して入れる。ここで育ったオーナーが周辺に自分の店を開くことで地域の活性化にもつながっている。また、横丁全域がバリアフリーで車椅子用トイレも完備。盲導犬などの同伴も可能だ。

「八戸港の日曜朝市に行くには、八戸市内に泊まる必要がある。すると、夜はみろく横丁で飲む、という観光パターンができます。通過するだけではなく、複数スポットをまわって地元にお金を落としてくれる『滞在型』の観光客を増やす効果があるのです」(町田氏)

◆地元の人ほど、地域の魅力に気づいていない

 町田氏は、市内を通る青い森鉄道車内で地元産の食材を売る活動も始めた。

「1駅ごとに地元のおばちゃんが乗り込んできて、地元産品を売って行くんです。これまで、禁止されていたわけではないのに誰もやらなかった」

 ウミネコの繁殖地・蕪島にちなんだ菓子「八戸うみねこバクダン」を開発したのも町田氏。蕪嶋神社は「株が上がる」とのゴロで投資家を中心に観光客が絶えない神社だが、ここはウミネコの一大繁殖地。空から降る糞に気を付ける必要がある。その光景を見て、洋菓子の専門家に相談して商品開発、地元の人気おみやげ品に育て上げた。

 さらに、蕪島と並ぶ八戸の観光スポット「種差海岸」を絡めたツアーも考えた。地元食材の朝食フルコース、海岸沿いのトレッキングツアー、休憩した浜小屋で地元の野菜や魚介類のもてなしを受けることができるというものだ。

「鮫銀座☆漁師の隠れ家はしご酒ツアー」はさらにディープ。夕方に出発して、港町「鮫」の漁師が集まる居酒屋やスナックをはしごした後に終電で戻るツアーで、一見ではなかなか入れない店を体験できるというものだ。

 こうした地域振興活動をいくつも始めた町田氏は「ACプロモート」という会社を’13年に設立。現在は社員10人以上を雇い、地域の経済活性化に貢献している。大阪出身の町田氏は留学先の米国で八戸出身の夫と結婚、帰国後に八戸市に来て20年以上になる。

「大阪のおばちゃんパワーを前面に押し出して、積極的に動いて地元住民を巻き込んでいくのが私のやり方。自然環境や景観、食べ物などのすばらしさについて、意外と地元の人のほうが気づいていないものです」(町田氏)

【藻谷浩介氏】

’64年、山口県生まれ。日本総合研究所調査部主席研究員。著書に『デフレの正体』、共著書に『里山資本主義』など。NPO法人「コンパス 地域経営支援ネットワーク」の理事長も務める

― エコノミスト・藻谷浩介と考える「持続可能な地方経済」 ―

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/21(日) 9:10

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