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50キロ競歩の荒井、銅メダルまでのドラマ その裏にあったカナダ選手の思い

THE ANSWER 8/22(月) 14:09配信

3位フィニッシュ→失格→3位確定、カナダ陸連はCASに異議申し立てする可能性もあったが…

 21日(日本時間22日)に閉会したリオデジャネイロ五輪で、日本は史上最多となる41個(金12、銀8、銅21)のメダルを獲得した。陸上男子50キロ競歩では、荒井広宙(自衛隊)が銅メダル。日本史上初のメダル獲得が決まるまでには、大きなドラマがあった。

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 荒井は3時間41分24秒の3着でフィニッシュ。しかし、レース終盤の48キロ付近で並走していたエバン・ダンフィー(カナダ)と接触したことが妨害行為とされ、まさかの一時失格となった。ただ、日本陸連による迅速な抗議の結果、国際陸連は荒井の銅メダルを認めた。その裏には、栄光のメダルを手放すことになったダンフィーのある決断もあったという。

 カナダ陸連はゴールイン直後、3位から14秒遅れの4位でゴールインしたダンフィーに対して、荒井の妨害行為があったとして抗議。一度はこの異議が認められ、ダンフィーは銅メダルの権利を手にした。結局、日本側の異議で裁定は再び覆ったが、ダンフィーには別の選択肢もあった。

 カナダテレビ局「CBC」によると、カナダ陸連のヘッドコーチ、ピーター・エリクソン氏はスイス・ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所(CAS)への異議申し立てを検討していたという。

 だが、ダンフィーは記事の中で「僕にはCASに異議を申し立てるという選択肢もあったんだ。だが、正直その一歩を踏み出すことはできなかった」と語っている。そして、荒井の銅メダルを受け入れる決断を下した。

荒井とダンフィーの高潔なスポーツマンシップ、「僕らは同じ苦しみの世界にいた」

 灼熱の死闘を戦い抜いた荒井への敬意がそこにあったようだ。

「彼は僕と同じ苦しみの世界にいた。彼は僕の肩に軽く触れた。僕はアグレッシブな競歩選手だから、彼にもたれかかるようなこともあったかもしれない。自分が最後にビデオを見た時に、自分自身にそう(故意の接触だったとは)言えなかった。自問自答せざるをえなかった。もしも、自分がこのメダルを手にしたとしても、誇りに思えるのだろうか、悩まずに眠りにつくことができるのだろうかと。正直、彼の達成したことも奪うことはできない。そう決断したんだ」

 記事によると、ダンフィーは論争を呼んだ接触シーンで荒井の失格を主張する気持ちには到底なれなかったと胸中を吐露したという。

「こんな過酷なレースで3時間半の間、アスリートがどんな苦痛を感じるのか理解できる人は少ないと思う。僕たちのスポーツでは接触は当たり前のこと。ルールに明文化されているか、いないかはともなく、それが完全な常識なんだ。だから、あれが悪意のあるものとか、故意でやったものとは信じられないんだ。もしも、CASに上告してそれが成功したとしても、すっきりとメダルを受け取ることはできないだろう。それは自分自身、誇りに思えないんだ」

 激闘を戦い抜いたライバル同士、心の底で通じ合う高潔なスポーツマンシップが存在するようだ。

ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer

最終更新:8/22(月) 14:49

THE ANSWER

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