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氷河学者がつくった「架空の地図つぶやきボット」の誘惑

WIRED.jp 8/22(月) 7:32配信

「Sij Big」という名前の国は存在しない。それにもかかわらず、わたしはその国を心に描くことができる。
地図から想像するに、海岸沿いにあるこの国の自慢は熱帯雨林の原生林と、アワビなどの海産物が豊富に獲れる島だ。気候は冷涼で湿度が高いが、ホエールウォッチングは壮観だろう。
…こんな空想にふけってしまったのは、Twitterボット「@unchartedatlas」のせいだ。ウェールズの氷河学者マーティン・オリアリーがつくったこのボットは、家族の歴史物語を綴ったジェームズ・ミッチェナーの小説に出てくるような地図をツイートしてくれる(ミッチェナーの地図は現実に基づくものだが、このボットの地図は架空のものである)。

【架空の地図を見る】

ただしこれらの地図は、一つひとつオリアリーが描いているわけではない。オリアリーがつくったのは、自分の代わりに地図を描いてくれる地形生成プログラム(Terrain generator)である。

最初に作成されるのは高低マップだ。次に浸食作用が働き、水が陸地をどのように流れるかが決定される。続いて、陰影を付ける「シェーディング」や地形の起伏を表す「ケバ」によって地形が表現され、最後に市町村や国境が表示される。オリアリーは命名プログラムもつくり、地図にまったく架空の言語で地名が示されるようにした。

その結果として生まれたのが、架空の地図のほとんどに欠けている「本物らしさ」を備えた、驚くほど説得力のある地図だ。

「地図の生成には多くの異なる方法があります」と、人工知能の元研究者であり、現在はファンタジー作家のジャンゴ・ウェクスラーは言う。「地図の見た目をコピーして、海岸線が数学的にはどのように見えるかを説明しようとする人もいます。それも悪くはありませんが、素晴らしいと言えるものではありません。場合によっては奇妙な海岸線ができる場合もあります」

ウェクスラーはそのような地図を、アニメーションスタジオがつくるCGIにたとえる。つまり、作品が偽物であることは簡単に見分けられるが、なぜ偽物だと感じるのかを正確に認識するのは難しい。

それに対して、オリアリーの地図は完全にリアルに感じられる。「これはわたしにとっては驚きです」とウェクスラーは推薦文に書いている。

オリアリーのウェブサイトでは、処理の詳しい説明を見たり、プログラムを実際に使ったりすることができる(ギャラリーにある地図はすべて『WIRED』US版でつくったもの)。

@unchartedatlasは、「Marches of Uymiuynown」や「Central Empire of Inner Sapu ca Ciki」のような名前の付いた4000を超えるユニークな地図をツイートする。これらは本のページに出てくるもののように感じられ、想像力をかきたてる奇妙な力をもっている。どの地図も、じっくり見ると新しいものが見えてくるのだ。

MARGARET RHODES

最終更新:8/22(月) 7:32

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