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世界1,409人のCEOに調査、日本の社長が取るべき道とは

Forbes JAPAN 8/22(月) 15:00配信

地政学的なリスクや市場の不安定化により、かつてないほど経営が難しくなっている。そうした時代に、社長が取るべき道とは。



2008年のいわゆる「リーマンショック」以降、世界経済は非伝統的な金融政策が取られる予測不可能な次元に入った。こうした「ニューノーマル(新しい常態)」な世界を生き抜くために、最高経営責任者(CEO)に必要な思考や資質とは? そして、どのようなリーダーシップが求められているのだろうか?

ここでは、世界的コンサルティングファーム「PwC(プライスウォーターハウスクーパース)」の協力のもと、世界の経営者たちの思考を紐解いていく。今年で19回目となる「世界CEO意識調査」では、日本のCEO126人を含む世界83カ国から1,409人のCEOにインタビューを実施(15年9月28日~12月28日)。

彼らの回答から、今後の世界経済の見通しや、今後成長する上で重要だと考えるマーケット、特に重視しているステークホルダーなどが見えてくるはずだ。

■混迷する世界経済にCEOたちが感じる「一寸先は闇」

世界経済や自社の成長について見通しが立たないー。多くのCEOがそう回答した背景には、一昨年から続く原油価格の下落やユーロ圏の債務危機、中国経済の減速、中東や東欧における地政学上のリスクの増大のほか、AI(人工知能)をはじめとする新しいテクノロジーの台頭、シェアエコノミーなどのライフスタイルの変化がある。また、調査期間後に生じた「ブレグジット(英国のEU離脱)」も世界経済に大きな影響を与える可能性が高い。

そうした状況を受けて、「世界経済が改善する」と答えた世界のCEOは27%と、前年の調査よりも10ポイント減っている。日本のCEOも同様に前回の22%から14%までに下がっている。

「私たちは、それが経済的リーダーシップであれ、新興国・先進国の抱える課題であれ、あるいは政情不安や世界中に広がる過激主義的な物の見方が引き起こす問題、または新たな技術やビジネスモデルであれ、凄まじい速度で環境が変化する世界に生きていると言えないだろうか。それが「ニューノーマル」と呼ばれる概念である。このニューノーマルをリードする企業や国家は、常に変化する環境に対処するとともに、それらの変化に加速度的なペースで順応していくことができなければならない」(ジョン・チェンバース/シスコシステム会長)


■米中逆転と、中国の影響を受けるアジア各国

世界経済が混迷しているとはいえ、日本のCEOは自社の成長に対して必ずしも悲観的ではない。実際、日本のCEOの72%が3年前よりも成長機会が増えていると考えているようだ。

そして、成長する上で重要な国・地域として上位に挙がったのが、1アメリカ(55%)、2中国(44%)。これは、景気が減速気味の中国をアメリカが逆転した形で、ベトナムやインドネシアなど、中国の影響を受けやすい市場も重要性がやや低下している。一方で、CEOたちは3年前と比べて「脅威も増えている」とも考えている。とりわけ、ビジネス面での脅威として、1カギとなる人材の調達、2危機に対する備え、3エネルギーコストの変動、技術進歩のスピード、という答えが順に多かった。

「会社を運営するならば、利益を上げ、収益を拡大しなければならない。しかし同時に、その会社が10年後も正しいことを行っているようにしなければならない。それが今日ほとんどのCEOが直面している最大の課題の一つだ」(アジェイ・バンガ/マスターカード社長兼CEO)

■ 企業の存在意義/「政府・規制当局」に対するアプローチの違い

ビジネスの複雑化に伴い、ステークホルダー(利害関係者)の種類が増えている。CEOたちに「戦略的に重視しているステークホルダー」について尋ねたところ、世界と日本、いずれのCEOも「顧客・クライアント」(世界、日本ともに90%)と答えている(下のグラフ参照)。

世界と日本のCEOとの顕著な違いは、「政府・規制当局」だ。世界全体では69%で2位になったのに対して、日本では44%で5位に留まっている。近年、特に米シリコンバレーを中心に、既存産業を「ディスラプト(破壊)」する企業が次々と誕生している。そうした会社は、政府・規制当局が制度や税制、優遇策などの面で大きな影響力を持つことを理解しており、積極的に働きかけている。日本の企業にも政府・規制当局との新たな関係構築が求められるだろう。

■会社にとっての羅針盤となる「Purpose(企業の存在意義)」

幅広いステークホルダーの期待に応えるために、世界のCEOたちが重視していることは何か? 世界と日本、双方で高かったのが「短期的な利益よりも長期的な利益を優先する」というものだ(右グラフ参照)。

こうした考えは、市場関係者にも徐々に広がりつつある。例えば、米資産運用大手「ブラックロック」のローレンス・フィンクCEOは今年の2月、S&P500全社と欧州の有名企業のCEOに「短期間で収益を上げるのではなく、長期的な価値を創出する戦略的フレームワークを投資家に示してほしい」という趣旨の手紙を出している。

その長期的な価値をつくる上でカギとなるのが「Purpose(企業の存在意義)」だ。株主や従業員、顧客、社会全体を含むステークホルダーにとって道標となる、会社の使命や理念である。

「"purpose"は、人の心の中にあるものであり、広告代理店が作り上げるものではない。だから私たちは社員の心の中から"purpose"を取りだし、次の七つの単語でそれを表現した。『Real food that matters for life’s moments.(人生の一瞬一瞬にとって大切な本物の食事)』。そして、消費者や従業員との文言が本当に正しいかを確かめた。消費者は、当社のブランドがいかに大切かを語ってくれた。それが当社の全ブランドを包括するものになった。すなわち、全社員が揚げることができる"purpose"であり、なぜ私たちが毎日行っていることが重要なのかに関して、社員の意欲を高めることができる"purpose"である」(デニス・モリソン/キャンベルスープCEO)

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:8/22(月) 15:00

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