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テレビが死んだといわれるいま、なぜ「オリンピック中継」は人を惹きつけるのか

WIRED.jp 8/23(火) 7:10配信

分散化したオンデマンドメディアの時代には、何百万という人々がゴールデンタイムの時間帯にテレビの前に座るという考えは古臭く思える。それにもかかわらず、NBC(National Broadcasting Company:全国放送会社。米国三大ネットワークのひとつで、2032年までの五輪放映権を獲得していると報じられている)のオリンピック放送は依然として、テレビにおける最も大きなイヴェントである。

【動画を見る】1992年バルセロナ五輪400m決勝。デレク・レドモンドは片脚で完走を目指した。

リオオリンピックには確かに観るべき理由がたくさんあるが、そこには何かもっと深いものがある。オリンピックの魅力を増大させるのは、「テレビ放送」それそのものなのだ。

▼ソウルで生まれた「テンプレート」

毎晩放送される試合のハイライトやダイジェストも、確かにその要因のひとつだ。しかしそれ以上に重要なのは、オリンピックを「たくさんの試合が行われているもの」ではなく「深いヒューマンストーリー」とする考えが、NBCの番組製作の根底にあるということだ。オリンピックの活気に満ちたタペストリーに人間模様を織り込むことが、20年以上にわたるNBCのテレビ放送の原動力となっている。

現代のNBCのテレビ放送のテンプレートは、伝説的なプロデューサー、ディック・エバーソルが率いて生み出したものだ。

それは、1988年のソウルオリンピックのパッとしない放送後のことだった。NBCはこれを、従来のスポーツ報道──実況と解説、性差別、あるいは成績中心の考え方──を捨て去る機会として、そしてオリンピックは人々にとってどんな意味があるのかを再評価する機会と考えた。

結果、オリンピック放送における5つの「磁石」が特定されたのだ。

▼データを知る男、スキアヴォーネ

ニコラス・スキアヴォーネは、優れたオリンピックのストーリーとなった、ソウルでのグレッグ・ローガニスの競技を見たのを覚えている。その有名なアメリカ人ダイヴァーは、飛び込み競技の予選のときに頭を打った。脳しんとうを起こしたが、ローガニスは見事に回復し、予選の最高スコアを記録した。彼は金メダルを目指して決勝の舞台に立った。

これこそ「素晴らしいテレビ」、以上のもので、時代を超えた人間ドラマであり、まさにオリンピックそのものだった。だが、NBCを見ていた数百万人もの視聴者は、ローガニスの勝利の瞬間を、画面の分割表示によって卓球の試合と一緒に見ることになった(実際にはそれは卓球ではなくバスケットボールだったのだが、スキアヴォーネは卓球だったと記憶している)。

スキアヴォーネはNBCのリサーチ課で働いていたが、このオリンピックの最高のストーリーが普通の試合に格下げされたという問題を調べるのに、わざわざデータを扱う必要はなかった。

お粗末な視聴率だった1988年のオリンピック後、エバーソルはスキアヴォーネを訪ねた。スキアヴォーネはデータを熟知しており、エバーソルはオリンピックがなんたるかを理解していた。

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最終更新:8/23(火) 7:10

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