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欅坂46はなぜ面白く、新しい? 2ndシングルが表す「変化し続ける自由なスタンス」

リアルサウンド 8/23(火) 17:00配信

 欅坂46が8月10日、待望の2ndシングル『世界には愛しかない』をリリースした。彼女たちのデビューシングル『サイレントマジョリティー』は、女性アーティストのデビューシングル初週売上で歴代最高記録を更新し、YouTubeでのMVの再生回数も2000万回を超えている。グループ結成から1年を待たずして、多くの紙媒体の表紙を飾り、テレビの冠番組が2本、ラジオのレギュラー1本、メンバー総出演のドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)が放送中と、その勢いはとどまるところを知らないし、ここまで2作目へのハードルが上がったアーティストは近年いないのではないだろうか。だが、『世界には愛しかない』も、その勢いそのままに、高くなったハードルを軽々と越える力強い一枚となった。

・彼女たちは「世界には愛しかない」と言い切ってしまう

 1stシングル『サイレントマジョリティー』に続く2ndシングルのタイトルは『世界には愛しかない』。1作目が聞き慣れないカタカナ語だったのに対し、今回は何やらラブリーでハッピーなポジティブソングに振り切ったのかと思わせるタイトルだが、そんな想像は表題曲のイントロで早々に覆ってしまう。フィードバックの向こうからやってくる疾走感のあるアコースティックギターのカッティングと、風を切るように踊るピアノの音色は、何かが始まる期待と少しばかりの不安を感じさせてくれる。「サイレントマジョリティー」のイントロのようにいきなり堂々としているわけではなく、まだこれから何が始まるのかはその先に進んでみないと見えてこない。

 そう思うと歌い出しはいきなりのポエトリーリーディング。間奏や大サビ前、アウトロで使われることはあっても、歌い出しからというのはあまり聴いたことがない。このポエトリーリーディングは、この曲の世界にリスナーをグッと引き込むことができるだけでなく、後々ここが「遊び」の部分となって活きてくるだろう。メロディーに縛られずに詞を歌えるため、彼女たちの振り幅が広がれば広がるほどその表現やアレンジが後々効いてくる。そして、意表をついたポエトリーリーディングの印象に劣らない、伸びやかで力強いサビが爽快だ。「サイレントマジョリティー」よりもシンプルな表現だが、そのメッセージを届けるに十分な歌と歌い手たちがそこにある。

 「世界には愛しかない」と大胆に言い切るタイトルは、理想を語る若者の戯言ではない。楽観主義的な空気は詞にも曲にもない。彼女たちは<夕立も予測できない未来>も受け止め、それでも<世界には愛しかない>んだと言い切ってしまう。それが彼女たち若者のリアリティーであり、まさに「サイレントマジョリティー」から続く欅坂46のスタイルだ。

・彼女たちは「発信する」ことを止めない

 カップリングとして収録されている「語るなら未来を…」は、「サイレントマジョリティー」のようなクールでキレキレのダンスを披露してくれる1曲。ただ、力強いビート主体のこの曲はライブでファンがメンバーと共に盛り上がれる曲かというと決してそうではないし、「過去を振り返らず未来を見ろ」とこれまで数多く歌われてきたテーマを、ここまで突き放した詞で歌うのもあまり聴いたことがない。ポストアイドル戦国時代の今も数多くのアイドルが日本中にひしめいているが、彼女たちのほとんどは「ファンと一緒に盛り上がれる曲」と「ファンに寄り添う詞」を楽曲の基本としている。そういう意味で、「語るなら未来を…」はとても非アイドル的なスタンスを取っていると言える。

 誤解のないように述べると、欅坂46は「また会ってください」や「青空が違う」といった今回のカップリング曲に見られるように、ザ・アイドル的な要素を完全に排除したグループということでは決してない。メディアで見せる彼女たちの姿は、大人しく謙虚な乃木坂46に比べると、よりフレッシュで賑やかな印象だ。センターの平手友梨奈はパフォーマンスの際に見せる表情と迫力で注目を集めているが、普段はお笑いが好きな中学生で、ときより見せる歳相応の仕草で年上のメンバーたちから「かわいい」との声を浴びている。

 では彼女たちの最大の魅力と面白さは何かと言えば、乃木坂46に並ぶアイドルとしてのビジュアル、だけではなくそのビジュアルをフックとして活かしつつ、常に発信と革新を止めないことだ。『サイレントマジョリティー』発売に際したいくつかのインタビューにて、彼女たちのイメージは20世紀中期イギリスの労働階級のライフスタイルである”モッズ”であり、”革命”が曲のテーマであると言及されている。彼女たちは近未来アニメのキャラクターが着るようなミリタリー風の制服を身にまとい、グループのイメージカットでも何かを睨みつけるように立ち尽くす。そんな「サイレントマジョリティー」「世界には愛しかない」のような楽曲群を、普段は年相応の振る舞いをしている平手友梨奈や今泉佑唯が、いつもクールに見せている志田愛佳や渡邉理佐が、何を考えているか全く読めない渡辺梨加が歌ってしまう面白さがこのグループにはある。

  また、楽曲においても欅坂46スタイルの一端を聴くことができる。表題曲の「世界には愛しかない」、前作「サイレントマジョリティー」はもちろんのこと、使い方は様々だがこのシングルの(布袋寅泰風青春歌謡ロック「渋谷からPARCOが消えた日」を除いた) ほとんどの曲でフィーチャーされているフォークギターは、プロテストソングを歌う者達の手に常に握られていた(今泉佑唯と小林由依の“ゆいちゃんず”にとって2曲目となる新曲タイトルは「ボブディランは返さない」!)。世界的に活躍するTAKAHIROを振付に迎え、ダンスにも力を入れている彼女たちだが、フォークギターと現代的ダンスミュージックの相性については、すでにアメリカで成功を収めたイギリスのロックバンドMumford & Sonsが証明済みだ。

 普段の若者の姿からは一見想像もできない秘められた想いや叫びも、歌に乗せれば伝えたり踊りで表現できてしまう。昨年大ヒットした映画『心が叫びたがってるんだ。』(乃木坂46が主題歌を担当)のテーマであり、欅坂46はそれをリアルの場で体現している存在なのかもしれない。

・彼女たちは「革新する」ことを止めない

 「世界には愛しかない」や、「語るなら未来を…」の革新的なスタイルについてはすでに記述した通りだが、彼女たちが本当に現状にとどまらずに変化を止めないという態度であることは、このシングルの端々から感じることができる。まず、センター・平手は不動のままだが、その両隣およびフロントのメンバーが1stシングルと異なっている。志田と渡邉理佐の人気の高さを見逃さずフロントに抜擢し、アイドルとして未完成な面が多い渡辺梨加を逆に面白がってか、センターの横に配置する。

 また、ほかのメンバーから遅れて加入し、1stシングルでは表題曲の選抜メンバーではなかったけやき坂46(ひらがなけやき)の長濱ねるが持つ個性と人気を見逃さず、今回のシングルでは選抜2列目に抜擢した。ほかの楽曲においても、同作は全7曲で構成されているが、選抜メンバー全員で歌う楽曲はわずかに2曲。残りの5曲は平手のソロ2曲目となる「渋谷からPARCOが消えた日」、長濱のソロ「また会ってください」、ゆいちゃんずにとって2曲目となる「ボブディランは返さない」、年長の人気メンバー渡辺梨加、渡邉理佐、志田愛佳、守屋茜、管井友香によるユニット曲「青空が違う」、そして早くもけやき坂46(ひらがなけやき)による楽曲「ひらがなけやき」が収録されるなど、多くの個性と可能性を試し活かそうとする姿勢が見られる。気づけば今回のシングルで一番参加曲が多いのは長濱ねる(4曲)であり、微妙な立場にいたはずの彼女が一番自由に活動できている。結成直後から現在まで多くの露出の機会と挑戦の場が与えられたこと、そして現状の欅坂46の中では選抜落ちや乃木坂46のような“福神制度”がないことで、結果的に多くのメンバーの魅力が次々に開花しているように思う。

 「サイレントマジョリティー」が話題になって以降、「1作目を超えられるか?」という不安もあったが、発信し続けること、革新することを止めないことで、今作は初週売上で前作を超え、数字上でも結果を残した。あまりの成長スピードに驚きと多少の不安を感じずにはいられないが、そんな不安もまた、次作では杞憂に終わるのだろうと今はより期待をもっていられる。きっとまたあの端正なルックスから核心を突く主張が繰り出されるだろうし、今のままでも十分なのに変化することを止めないだろう。だからこそ欅坂46は面白く、そして新しい。

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最終更新:8/23(火) 17:00

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