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肥満の増加は腸内細菌のせいだった?

JBpress 8/23(火) 6:05配信

 (文:澤畑 塁)

 ここ数十年で劇的に増加している慢性的な疾患(あるいは不健康な状態)が存在する。たとえば肥満。アメリカでは1950年代から体重の増加が顕著となり、1960年代の初めての全国調査では、成人の13%が肥満(BMI値が30以上)、30%が過体重(BMI値が25~30)とされた。そして1999年の調査では、その傾向に拍車がかかり、肥満率は倍増の30%、過体重の人も34%に達している。さらに、アメリカのみならず世界全体でも肥満は増加し、この40年で男性の肥満率は3倍以上、女性の肥満率は2倍以上に上昇している。

 増えているのは肥満だけではない。胃腸疾患にアレルギー、自己免疫疾患、そして自閉症などの心の病気もそうである。そのような、とくに20世紀半ば以降に急増している疾患は、「現代病」ないし「21世紀病」と呼ばれている。しかし、そもそも現代病はどうして急増しているのだろうか。

 その点を説明するものとして、近年、わたしたちの体内にいる微生物、とくに腸内細菌が注目を集めている。腸内細菌説によれば、現代病がこれほど増えているのは、腸内細菌の全体(マイクロバイオータ)のバランスが崩れていることと強く関係している。そして、本書『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』もまたそのような見方をしており、マイクロバイオータと健康の関係を明らかにしようとしている。

■ ヒトは腸内細菌と共生している

 ところで、わたしたち各人の腸にはなんと100兆もの微生物がいる。そして、彼らはわたしたちにただ便乗しているのではなく、わたしたちに多大な利益をもたらしてもいる。

 ここで、ウシの消化について考えてみよう。ウシは草食動物であるが、自らの力だけでは繊維質の草から栄養分を取り出すことができない。そこで、ウシの祖先が進化の途上で見出したのは、その仕事を腸内細菌にアウトソーシングするという戦略である。ウシは細菌たちに棲み家と食べ物を提供する。その代わり、細菌たちには上記の仕事を担ってもらう。ウシと腸内細菌の間では、そのような形で利害が一致しており、見事な共生関係が築かれているのである。

 そして、ヒトもまた腸内細菌と共生しており、彼らから多大な恩恵を受けている。必須ビタミンを合成してもらったり、食物繊維を消化して短鎖脂肪酸を産生してもらったり。そのように、ヒトの生存にとって腸内細菌は不可欠な存在であるが、しかし、とくに20世紀の半ば以降、両者の幸せな関係に亀裂が入り始めている。それは、抗生物質の過剰使用などにより、腸内細菌の生態系たるマイクロバイオータが乱されているからである。

■ 肥満もマイクロバイオータのバランス喪失のせい? 

 抗生物質の過剰使用などによってマイクロバイオータのバランスが崩れること、また、そのことが引き金となって過敏性腸症候群などが生じることは、これまでにもたびたび指摘されている。ただ、本書の著者によれば、マイクロバイオータの混乱によってもたらされるのは、そのように「腸に始まり腸に終わる病気」だけではない。じつは、肥満も含めた現代病の多くがその影響を受けているというのである。

 では、マイクロバイオータの混乱によってどうして肥満がもたらされるというのだろう。その点を十全かつ簡潔に説明することはむずかしいが、ここではとりあえず、「エネルギーの吸収」という点に着目してみよう。

 まず、マウスを使った実験の結果が衝撃的だ。太ったマウスと通常マウスの腸内細菌を調べると、その組成比がずいぶん異なることがわかる。具体的には、太ったマウスの腸内には、通常マウスの半分ほどしかバクテロイデーテス門の細菌がおらず、そのぶんフィルミクテス門の細菌が多くなっているのである。とすると、そうした細菌の組成比の違いが、肥満か否かに違いをもたらしているのではないだろうか。

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最終更新:8/23(火) 6:05

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