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杉下茂氏「本物のフォーク投げたのは村田、野茂、佐々木」

NEWS ポストセブン 8/24(水) 7:00配信

 名投手には数々の「決め球」があり、それを投げられてはバットが空を切るしかないといった「魔球」もある。数ある球種の中でも「決め球」のイメージが強いのがフォークボールだ。その「元祖」と呼ばれるのは杉下茂氏(中日ほか、1949~1961年、通算215勝)だが、「フォークを投げるのはあまり好きじゃなかった」という。

「絶体絶命で1点でも取られると負け、という場面で初めて投げるボールだった。僕は巨人の川上(哲治)さんと対戦するのが何より楽しみだったんですが、究極の目標は川上さん相手にストレートで3球三振を取ることだった。ところが、ストレートだけだと何度やっても弾き返される(苦笑)。

 それで天知俊一監督に“フォークを投げろ”と命令されたんです。優勝した1954年だけは、川上さんにフォークを投げて1割台に抑え込みました。僕のフォークは、川上さん専用のボール」

 その杉下氏にフォークの歴代ナンバーワンを聞くと、「日本の球界で“本物のフォーク”を投げていたのは村田兆治(ロッテ、1968~1990年、通算215勝)、野茂英雄(近鉄→ドジャースほか、1990~2008年、日米通算201勝)と佐々木主浩(横浜→マリナーズほか、1990~2005年、日米通算381セーブ)の3人だけ」だという。

「本物のフォークはボールが全く回転しない。すると左右に揺れながら最後はストンと落ちる球になるから、打者にとってより捉えづらいボールになる。今の投手が投げているのはほとんどが握りの浅いスプリットフィンガー・ファストボールといわれるもので、完全な無回転ではないんです」

“不惑の大砲”と呼ばれ歴代3位の567本塁打を誇る門田博光氏も、23年にわたる現役生活で見たフォークのなかでは、村田・野茂が印象に残ったと証言する。

「兆治のフォークは、マサカリ投法もあってタイミングの取り方が分からない。しかも、わざわざ握りを見せて、“次はフォーク”と宣言してくる。なのに打てないからこっちは堪えるわけです。落ち際を叩こうと、キャッチャーにバレないように、少しだけマウンド寄りに立ったりもしました」

 その門田氏のキャリア終盤で、鳴り物入りで近鉄に入団したのが野茂だった。

「野茂からホームランを打つと公言し、老体に鞭打って朝5時半から走り込んだが、いざトルネードの投球フォームを見て思い出したのが兆治です。これはタイミングを取るのに悩まされると思ったね」

 ただ、門田氏は予告通り、野茂にプロ初の被本塁打となる一発を浴びせている(1990年4月18日)。「とにかくタイミングを取るために試合中はずっと野茂のフォームを観察した」(門田氏)という。切れ味鋭い決め球が生んだ名勝負だった。

※週刊ポスト2016年9月2日号

最終更新:8/24(水) 7:00

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