ここから本文です

VR技術はリハビリにも有効だった!! Oculus Riftと人工外骨格を装着したリハビリでまひ患者が歩行可能に!

おたぽる 8/24(水) 11:00配信

 今年に入って加速度的に普及が進んでいるVR技術だが、医療の分野での活用もさまざまな方向から模索されているようだ。そして先頃、VR機器と人工外骨格を使ったリハビリで、下半身まひ患者が歩けるようになったという。

■下半身まひ患者が“VRリハビリ”を1年間試みる

 先日、オンライン科学誌「Scientific Reports」で発表された論文は、ブラジル・サンパウロの病院で行なわれたVR機器を使ったリハビリで起った、驚くべき出来事を紹介している。脊椎損傷により完全に下半身がまひの状態にあった患者が、科学的な“VRリハビリ”で歩けるようになったというのだ。

 研究では過去にリハビリ経験のない8人の下半身まひ患者に12カ月にわたってリハビリを試みてもらい、その経過を詳細に記録している。もちろん、このリハビリの特徴は、最新のVR技術を使ってリハビリを行なう点だ。

 リハビリテーションプログラムは3つの段階に分けられた。

 第1段階では、VR機器であるOculus Rift、EEGと呼ばれる帽子タイプの脳波測定機器、さらには前腕部にバイブレータ機器を装着して、バーチャル空間の中でサッカー選手として動きまわる“運動”を課された。バーチャル空間の中で、分身であるサッカー選手を走らせている際には、脚の運動に関係する脳の部位が刺激されていることがEEGによって確認された。リハビリ参加者は下半身まひになって3年から13年の患者だったが、その間働くことのなかった脚の運動に関わる脳の部位が、VRの世界で“運動”することで、徐々に活性化されることになったのだ。

 次の第2段階では、装備する機器はさらに大がかりなものになる。まずはまひしている脚に人工外骨格を装着して立ち上がった状態になり、その状態でトレッドミルの上で機器の力を借りて実際に歩いたのである。機械の助けを借りたにせよ、立ち上がって“歩く”という体験をしたのは、もちろん症状後初めてのことである。

 そして、最後の第3段階では、第1段階と第2段階の装備を“フル装備”し、トレッドミルの上で実際に脚を動かしながらVR世界の中でサッカー選手として走り回った。もちろん、脚と共に脳も活発に働いていたことはいうまでもない。

■“運動神経”はVRトレーニングでも形成できる

 この3つのフェイズを計12カ月かけてじっくりと行なったわけであるが、リハビリ参加者はいずれも完全な下半身まひ状態から改善し、うち4人について「部分まひ」の状態に回復したということだ。

 下半身が完全にまひしてから10年以上を経ていた32歳の女性はこのリハビリの結果、支持具と理学療法士の助けを借りて歩くことができるようになり、ハーネスで体をつりさげられた状態では、助けを借りることなく自力で歩くことができるようになったということだ。

 脊髄損傷でいったんは下半身がまひ状態になっても、バーチャル空間の“運動”と人工外骨格のサポートによる歩行体験で、脳と神経の新たな回路が形成されてくるのではないかと考えられている。しかし、一朝一夕に形成されるものではなく、今回のリハビリのように12カ月、あるいはそれ以上の根気強いリハビリが必要とされくるようだ。

 脚の動きだけでなく、膀胱や腸の感覚も少しずつよみがえり、自分で排泄のタイミングがわかってきているリハビリ参加者も多いという。研究チームは今回の発見は下半身まひのリハビリに大きな影響を与えるものになると確信している。

 今回の研究で明らかになったのは、VRの“運動”でもそれなりに身体に影響を及ぼすということだ。これは健常者にとっても、例えば各種スポーツのトレーニングなどにも有効に活用できる可能性をはらんでくるだろう。つまり、“運動神経”の回路はVRのトレーニングでも形成できるということになるからだ。VR技術はエンタテインメント以外にも大きな可能性を秘めていることがこうした研究でも指摘されてきている。今回の発見が今後どのような分野に応用されるのか興味深い。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・The Verge
http://www.theverge.com/2016/8/11/12443026/virtual-reality-exoskeleton-paraplegic-oculus-rift
・Smash
http://www.smash.com/prototype-exoskeleton-fits-lower-leg-takes-slog-walking/

最終更新:8/24(水) 11:00

おたぽる