ここから本文です

ファブリックでファッション業界に革命を起こす、ある女性の挑戦

ハーパーズ バザー・オンライン 8/24(水) 18:32配信

「ピース&コー」(Piece&Co.)の創設者カスリーン・ライトがJ.CrewのCEOミッキー・ドレクスラーにアドバイスを求めて売り込みをした時、正直なところ実際に返事がもらえるとは予想していなかった。しかし、驚いたことに彼から返事をもらえた。さらに、ダイアン フォン ファンテンバーグのCEOパオロ・リーバや、レベッカ・ミンコフからも返答が得られたのだ。 
 
「ファッション業界で売り込みするのは楽しいことではなかったわ」と、大学でビジネスを専攻したカスリーン(33歳)は微笑む。「最初の頃は、3ヶ月に1度、J.クルーのミッキーのところに行って、こちらの進捗状況を報告。それに対する彼の反応を聞いたわ」。彼女の目的は、世界中の女性の職人たちを雇用し貧困を食い止めることだったが、ほどなく彼女は、実はファッションデザイナーや業界の幹部たちの多くが、“何かを変えたい”と思っていることに気づいた。彼らは、そのための簡単な方法を探していたのだった。そうだ、ファブリックがある。彼女はそう答えを出した。

2008年、彼女はアフリカの女性職人たちに少額のローンを提供するNPOの設立に参加した。しかし、職人の世界や開発途上国のことはとても好きになったものの、ローンを貸し付けることでは彼女が望んでいたほどのインパクトは与えられないことに失望した。
 
「資金問題が、彼女たちがより良い生活を作り上げられない原因ではなかった。消費者や、実際に製品を身につけて西側の市場に持って行ってくれるモデルがいないことが問題だった。同時に、私は私でファッションブランドが、他社と差別化を図るための方法を模索しているというトレンドを見ていた。持続可能なファブリックを大手ファッションブランドや小売業者に持ち込む可能性のあるビジネスと手を組むスターたちも増えていた」
 
そこで彼女は、グアテマラとインドでアルチザンなファブリックの生産に乗り出した。しかし、デザイナーが求めたのは、グローバルにアクセスすることだった。「そこで、私たちは早い段階で、視野を広ようと決心したのです」とカスリーン。「16カ国でオペレーションを展開したので、始めは少々時間がかかった。でも、グローバルな視点を持つことは、デザイナーたちにとっては、より面白みのあることだった」

2011年の設立以来、「ピース&コー」は、ナイキやダイアン フォン ファステンバーグ、シュプリーム、オープニング・セレモニー、ヴェロニカ・ベアード、マーラ・ホフマン、ショップボップなどにファブリックを供給してきた。同社は、ボリビアからザンビアまで、地元のコープを通して5000人以上の職人を雇用し、カスタマイズしたトレーニングプログラムを通して、女性たちは自分たちで財務管理を行うことや独立することを学んでいる。 
 
「私がNPO時代に学んだのは、女性たちにとって、3~4カ月間働けるという保証があるほどインパクトの大きいことはないということ。これから半年間はその日暮らしでなくなることで、メンタリティーも変わるのです。NPOは、そういうところまで辿り着くのに苦労した。ローンを提供することには期待も興奮も大きかっただろうけれど、彼女たちの製品を実際に市場に出す具体的な方法はなく、途中で立ち消えになってしまう」とカスリーンは言う。 
 
現時点で、ピース&コーの供給プロセスには関わる人の75%は女性だ。「男性を排除しているわけではありません。でも、コープ内で女性がリーダーシップを取る立場にあるというのは重要。それでこそ、職人も製品も繁栄するのです」

ファッション業界がどう動いているのかを理解することのほうが、開発途上国でビジネスを始めるより難しかったとカスリーンは冗談めかして言う。「ファッション業界の年間スケジュールや、ファブリックの準備期間にどのくらい必要で、いつ消費者に売ればいいのか、などを理解するのに2年かかった。初めてブランド側に話を持ちかけた頃、誰も私と喜んで話をする人はなく、それはなぜなのかわからなかった。彼らがファブリックを必要とするのは、年間スケジュールの中の特定の時期だけなのだということを、私はわかっていなかったのです」
 
しかし、粘った甲斐はあった。倫理にかなった製品の需要は急増。ピース&コーは、ファッション業界がポジティブに変革するためのカタリストとしての役割を果たすようになった。
 
「私たちは、女性が得意とすることにフォーカスすれば、より早く、より多くの女性にインパクトを与えることができることに気づいたのです。その女性たちが得意なこととは、最終的な製品を作るという負担を負うのではなく、美しいファブリックを作ることなのです」とカスリーン。「もし、ヴェロニカ・ベアードより才能あるデザイナーを雇えないなら、ファブリックを作ってヴェロニカのところに持っていけばいい。ヴェロニカにとっても、使うほうがずっと簡単だし、インパクトも与えられるし、供給プロセスの中にサステナビリティ(持続可能性)を組み入れることができるのです」 
 
カスリーンの長期的な目標は、ファッション業界のデザイナー全員が、ピース&コーのハンドメイドで持続可能なファブリックを使うこと。「女性に自信を持たせることと、ファッション業界をもっと持続可能にすることが2つの大きな柱です。世界を良いことでいっぱいにしたいわ」

最終更新:8/24(水) 18:32

ハーパーズ バザー・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ハーパーズ バザー

ハースト婦人画報社

2017年1・2月合併号
2016年10月20日発売

特別定価:700円

1867年にNYで誕生した世界初の女性
ファッション誌『ハーパーズ バザー』。
厳選された情報を美しいビジュアルと
ともに発信しています。

ハーパーズ バザー・オンラインの前後の記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。