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北川景子は本当に“クール・ビューティ”なのか? コメディエンヌとしての魅力を考察

リアルサウンド 8/24(水) 10:11配信

 オリンピックの影響もあってか、各局ともに厳しい戦いを強いられているこの夏のドラマ戦線。そのなかにあって、8月10日の第5回こそ10%を切ったものの、それ以外は視聴率2桁をキープ。現在までの平均視聴率が11.48%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今クールの民放テレビドラマのトップとなるなど、唯一気を吐いているドラマが、北川景子主演、大石静脚本の『家売るオンナ』(日本テレビ系/毎週水曜22時~)である。

 「クール・ビューティ」という言葉がピッタリのイメージがある北川景子。化粧品のCMなどで見せるその凛とした美貌は、まさしく「クール・ビューティ」の名に相応しい。彼女が、「女性が選ぶ“なりたい顔”ランキング」(ORICON STYLE調べ)で3年連続一位に輝いていることも、ある意味納得の話ではある。しかし、そこでふと思うのだ。昨今のドラマや映画で見る彼女は、果たして本当に「クール・ビューティ」なのかと。

 『家を売るオンナ』で彼女が演じる主人公・三軒家万智は、常に冷静沈着で、会社の人間にも、家を買おうとする顧客にも歯に衣着せず物を言う、クールでビューティな、実にやり手の不動産営業社員である。その口癖は、「私には売れない家はない」。しかしながら、その言動は少々常軌を逸していると言わざるを得ない。まさしく口八丁手八丁、ときには嘘も方便という彼女の営業スタイルは、コンプライアンス的にはかなり危ういラインにある。けれども、そこはあまり問題ではない。というか、そこがむしろ、視聴者にとってのツッコミどころ、すなわち楽しみどころとなっている。

 当初、『女王の教室』の天海祐希や『家政婦のミタ』の松嶋菜々子などと比較されることも多かった、今回の北川景子の役どころ。しかし、それらと本作が決定的に違う点もまた、そこにあるのだった。そう、このドラマの基本的なトーンは、サスペンスではなく、コメディなのである。常に目を大きく見開きながら、カツカツと直線的に歩く「三軒家万智」の姿は、クールと言うよりも、むしろ異様。彼女の直截的な物言いは、ほとんど感情が無いというか、もはや棒読みに近いシュールさだ。そして何といっても、彼女が部下に指示を出すとき、目をむきながら(そして、毎回なぜか向かい風を受けながら)発する、「GO!」という決め台詞(効果音つき)。それは、あまりにも漫画チックで、ほとんどやり過ぎなくらいである。しかし、それが見ているうちに、だんだんと面白くなってくる。というか、そんな「三軒家万智」という存在に、だんだんと違和感を持たなくなってゆくどころか、むしろ楽しみになってくるところが、このドラマの何よりの面白さなのだ。

 つまり、彼女が本作で新たに切り開いて見せたのは、いわゆる「クール・ビューティ」としての魅力ではなく、そんな「クール・ビューティ」である自身の容姿を逆手にとった、「コメディエンヌ」としての新たな魅力なのではないだろうか。その楚々とした外見とは裏腹に、堅実な頑張り屋さんであったり、感情的で負けず嫌いだったり、あるいは知られざる暗い過去があったりと、その「意外性」や「ギャップ」によって視聴者の興味を惹きつける役どころは、これまでも数多く演じてきた。そして、単なる美人ではない、そういった内面性を持った役どころこそが、ひいては彼女の好感度にも繋がってきのだろう。そして今回、そこにシュールなコメディエンヌとしての魅力が、新たに加わろうとしているのだ。

 どこまでもクールで美しくはあるけれど、それをある種の滑稽さや、なぜか親しみやすさに転じてしまうこと。当初は違和感しかなかった「GO!」という彼女の決め台詞を、毎週今か今かと待ち構えるようになるとは、自分でも正直思わなかった。それはやはり、彼女自身の魅力あってこその話なのだろう。他の女優が演じていたならば、きっと反感を持ってしまったり、あざとさばかりが目につきそうな役どころも、彼女の場合、クスリと笑いながらサラリと観ることができるのだ。このまま行けば、彼女にとっても新たな代表作のひとつとなるであろう『家売るオンナ』。すでに折り返し地点を超え、そろそろ終盤に差し掛かっているドラマの展開はもちろんのこと、女優として新たな振り幅を獲得しつつある女優・北川景子の今後にも、引き続き注目していきたい。

麦倉正樹

最終更新:8/24(水) 10:11

リアルサウンド

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