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レールガンは役立たず?米国ですでに失敗作の烙印

JBpress 8/24(水) 6:10配信

 米軍による対中軍事戦略、いわゆる「第3の相殺(オフセット)戦略」(新技術に基づく新たな作戦構想と戦力によって、相手の優位性を無効化する戦略)において、今後レーザー兵器や3Dプリンタなどとともに主要な役割を果たす兵器の1つとされるのが「レールガン」である。これは火薬ではなく電磁誘導で金属弾頭を加速し、撃ち出す兵器だ。従来の火薬式の砲塔に比べて威力・コストともに抜群の効果を発揮するとされている。

 日本でも防衛省技術研究本部が研究を進めており、与党・防衛省内でも3Dプリンタ等に比して大きな期待感を寄せられ盛り上がっているという。実際、8月22日の報道では、平成29年度防衛省の概算要求にレールガンの研究費が盛り込まれると大きく報道された(参考「超速射・レールガン(電磁加速砲)を日本独自で開発へ」産経ニュース)。

 だがここにきて米国では、開発の監督責任者である国防副長官がレールガンに事実上の死刑宣告を下すなど様々な課題が出てきている。

■ 「従来の超高速発射弾と変わらない」と国防副長官

 2016年5月2日、ロバート・ワーク国防副長官は「第3の相殺戦略」に関する講演の中でレールガンについて言及した。ワーク氏は次のような指摘をしたという。

 「当初、レールガンこそが、我々が本当に欲している兵器だと思っていた。しかし試験を進めていく中で、在来の砲塔で発射可能な超高速発射弾(HVP)でも、開発や試験を行わずに同様の効果が得られることが判明した。次期政権にはどちらも選択肢とするように提案したい」

 ワーク氏はカーター国防長官の信任厚く、第3の相殺戦略の監督責任者に指名されている人物である。そのワーク氏が、レールガンとHVPは性能的に変わらない、どちらでもよい、と言っているのだ。

 現政権はレールガンの開発に既に10年以上の年月と5億ドルものコストをかけてきた。よって開発を推進してきた立場としては、はっきり中止とは言えないだろう。しかしワーク氏の発言からは、レールガンへの期待は今や完全にしぼんでしまった様子がはっきりと伝わってくる。

■ レールガンは「失敗作」として放置? 

 また、国防総省の「NextTec」(次世代テクノロジー)プロジェクトのまとめ役を務める軍事アナリストのPW・シンガー氏とオーガスト・コール氏も否定的に捉えている。彼らは昨年 "Ghost Fleet" (邦題『中国軍を駆逐せよ!  ゴースト・フリート出撃す』)という書籍を出版した。

 本書は米軍の陸海空軍、宇宙軍司令部の推薦図書となり、米軍内でベストセラーとなった。内容は、2026年の米中戦争を描いた架空戦記である。シンガー氏とコール氏は小説の体を借りて「中国軍の軍拡と技術開発は、米軍の弱点の攻撃に特化している。ハイテク依存の米軍は、このままでは有事に戦闘不能に追い込まれる」と警鐘をならしている。

 本作は2026年の未来を描いているので、当然ながら虚実が混じっている。ただし管見の限りではほとんどは技術的に妥当性があり、米軍将校が教科書にし、国家安全保障会議のスタッフや米議会が著者たちから「現実への教訓」を聴取するのも当然といえよう。

 さて、本作ではレールガンも活躍する。ただし、その攻撃力への評価は高いが、実用性は非常に低く見積もられている。要するに、成功すれば比類ない破壊力を誇るが、電圧供給やシステムとしての安定性に欠けており、最後まで機能するか怪しい兵器、という扱いなのだ。

 しかも本作の中で、レールガンは2026年の時点で“失敗作”として放置されている。中国との戦闘が始まって急きょ投入されるも、ちょっと艦が被弾すれば機能停止してしまい、活躍もご都合主義だ。つまり、実戦における武人の蛮用には耐えられないというような表現がされている。一方で宇宙技術、レーザー技術、サイバー技術、3Dプリンタなどが高い実用性を発揮して大活躍するのとは明らかに対照的である。

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最終更新:8/24(水) 13:30

JBpress

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