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購買力平価の実感 --- 岡本 裕明

アゴラ 8/25(木) 18:43配信

夏休みシーズンも終盤になってきました。バンクーバーはまだ観光客でごった返しており、ホテルはない、レストランは一杯とビジネスをする人には書き入れ時となっています。その溢れんばかりの観光客の中に日本人の姿は少ない気がいたします。その一つにバンクーバーの物価高が日本人観光客の足が遠のく理由が隠されているかもしれません。

バンクーバーダウンタウンの高級クラスのホテルの今夏のピーク時の宿泊レートは大体一泊1000ドルから500ドル程度。実際に泊まればインターネット接続代、朝食代、駐車場代…と更に支出は増えます。唯一、日本との違いはこちらは一室いくらですので一人でも二人でも宿泊代は同じという点でしょうか?いや、それにしても高いです。先日レンタカーを借りに来たチリからのお客さん。そのボヤキとはすでにホテル代を1万ドルぐらい使った、と。80万円程度でしょうか?尋常なレベルではありません。

購買力平価をネットで調べると「ある国である価格で買える商品が他国ならいくらで買えるかを示す交換レート」と出ます。かつてビックマック指数などというものももてはやされました。世界各地にあるビックマックの価格をベースに購買力平価を測るというものであります。今ならスターバックスのコーヒーでもよいかもしれません。

この購買力平価が大きくずれ始めているかもしれない一つの原因は金融緩和によるマネーのいびつな動きが考えられます。マネーはどこに吸い寄せられるか、といえば為替や国情が安全、安心で一定のリターンが得られる地域であります。

ニュースにニュージーランドの不動産が高騰しているとあります。移民が増えているうえに投機的売買が増えたことでこの1年で14%も上がっているというのです。その買い手は移民や中国人だと日経は解説していますが、外国人の買い手は全体の3%に留まっています。カナダでも全く同じ状況に陥っており、「外国人投資家悪人説」がはびこっていますが、そんなわけがなく、実際には売買の大半を占めるローカルの買い手が不動産価格をあおっています。

先日、あるコンドミニアムの一般公開前内覧会に行ってきました。40平米、海の眺め無し、内装の品質は中程度、間取りはお世辞にも使いやすいと思えない物件が60万ドルであります。この価格帯は東京都心の新築マンションと同じぐらいになってきたのですが、バンクーバーと東京の経済価値は10倍ぐらい差がある中でこの価格はあり得ません。知り合いの建築家がその場にいたので「どう思う?」と聞いたところ、こき下ろしていました。それでも物件が売れるであろう理由は不動産を金庫代わりにするという強い信頼感であろうと思います。

これは本来あるべき購買力を超えて人々がもっと価値があると信じているために起こる歪みかと思います。その歪みは国全体で測るとわからなくなりますが、例えばバンクーバーの海が見えるダウンタウンのコンドミニアムに絞り込めば相場を無視した異様な価格で取引されるともいえましょう。つまり、購買力平価はある国で見る場合とある地域で見る場合では全く違う色合いになるともいえ、新たなる現象が起きているといえましょう。

では日本。不動産価格が高騰しているとされる東京を一歩離れると不動産相場は一変します。以前から日本に別荘を持つならば伊豆が良いと思っていたのですが、伊東から伊豆半島一帯のマンション相場はわずか数百万円。それでも買い手はいないでしょう。地震が来るといわれる一帯ですし、東京からは熱海を超えると新幹線から乗り換えなくてはいけません。

日本の地方に行けば経済は悲惨なところが多いのも事実です。7月にある日本有数の漁港に行った際、地元の方から漁港で給与の未払いが発生しているから誰もまじめに働かなくなったと。夜、漁港の地元のすし屋に入ろうとしたら「御飯があと2合しかない」と言われ、断られました。バスに乗ったらわずか1-2キロの距離なのに周回バスだから一日券のみで500円払え、と言われ、そんなのはどこにも書いていないとクレームしたら「内緒で」と200円にしてくれました。もう、むちゃくちゃな話ばかりでした。

日本の地方の購買力平価は非常に下がっている気がします。東京一極集中とはそこにマネーを置いておけば多少は安全だろうという思惑があるのでしょう。つまり、日本国内の購買力平価は一般的な統計でみる以上に差が出ているともいえます。

多くの日本国内観光客はネットでしっかり調べ、グッドディールできるところを探し当てます。ネットで引っかからない民宿や何の特徴もない旅館は除外されます。食べ放題や飲み放題、立派な風呂に駅まで無料送迎など資本のチカラがあるところだけが勝ち抜ける仕組みが出来上がっています。

国内も海外も購買力平価がいびつになっているとすればそれは緩和されたマネーが政府の意図する形に広がらなかったことと急速な時代変化についていけない地方の悩みという組み合わせかもしれません。

個人的には金融緩和が招いた弊害は思った以上に格差を作り上げていると感じています。この収拾を間違えるとバブル崩壊の時と同じ失敗となる可能性も秘めていて、極めて困難な状況になるような気がいたします。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人(http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/) 8月24日付より

岡本 裕明

最終更新:8/25(木) 18:43

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