ここから本文です

北朝鮮側が拉致だと主張する「北レス」集団脱走事件を巡る韓国側の「支援」

HARBOR BUSINESS Online 8/25(木) 16:20配信

 北朝鮮イギリス大使館のNo.2テ・ヨンホ公使が家族とともに韓国へ亡命したことが8月17日に明らかになるなど北朝鮮大物高官の脱北、亡命についてのニュースが韓国発で報じられている。

 北朝鮮からの脱北、亡命者のニュースは今に始まったことではないが、今年4月8日、中国浙江省寧波の「柳京レストラン」から男女13人が集団脱走し、韓国入りした事件は過去にない規模だったからか大きく報じられた。

 北朝鮮では脱北、亡命は国家に対する裏切りであり重大な背任行為として厳罰対象となる。高官家族の亡命についても朝鮮中央テレビで高官への個人攻撃で激しく非難するも短くしか伝えていない。一方、北朝鮮レストランからの集団脱走については異例の対応をとった。

 本来、北朝鮮での祖国への背任行為は親兄弟を含め3代に渡る厳罰が与えられるが、脱走者の両親や同僚女性と称する人たちが映像に登場し、泣きながら、韓国による拉致だと訴え、朴槿恵大統領を強烈に罵る映像を繰り返し流した。「お前が言うな」と日本からツッコミが聞こえそうな話だが、それはさておき前例がない映像といえる。

 果たして北が主張するように韓国による拉致など有り得るのだろうか。

◆韓国側の見解は?

 韓国統一省は、集団脱走への韓国政府の関与を否定し、彼女たちの意志による自発的行動だと主張する。

 一方、韓国大使館関係は、政府発表通り直接的な関与は否定するも脱走支援については言葉を濁す。脱北事情に詳しい関係筋によると、「支援」とは、レストランの男性マネージャーへ半年に渡り接触し、韓国のDVDや北の現状を伝える映像を見せるなど情報提供したことを指す。その後、男性マネージャーは女性スタッフたちを説得し、自発的な脱走決行となったという。

「北朝鮮は国外でもピラミッド型の監視組織で行動しますので、一番上を説得してピラミッドの下へ落としていくのが最良の手段です。当然、脱走に必要な経費も援助しています」(脱北事情に詳しい関係筋)

 韓国統一省の発表によると、集団脱走した13人は、浙江省寧波空港からタイのバンコクを同日経由し、マレーシアのクアラルンプールで1泊して訪韓、入国を果たしている。

 北朝鮮国籍者は、タイではビザが必要なので入国せずに同日乗り換えし、ビザなし入国できるマレーシアへ入国している。正規旅券で中国を出国したので中国側にも落ち度はなく、合法的な脱出だった。かなり綿密に練られた計画だったと言えるだろう。

 先日、韓国へ亡命した13人は4か月に渡る調査が終わり、施設を出たと韓国メディアが伝えたが、入国後の彼らの動向はあまり報じられなかった。

「当初、全員で記者会見することも検討されたのですが、北に残した家族へ危害が及ぶことを恐れ会見は取り止めになりました。接見した弁護士によると、彼女たちは北朝鮮へ戻る意思はないと言っているそうです。韓国政府としては彼女たちの意思を尊重して他の脱北者同様に自立できるように援助を続けていきます」(韓国大使館関係者)

◆支援はしても、あくまでも「自由意志」

「脱北は自由意志であり、韓国政府は一切関与していない」と主張する韓国。だが、このように集団脱走や亡命者は間接的に支援されているという。そうまでして支援するのはなぜなのだろうか。

「北朝鮮より韓国の方が優れた国であり、自由と正義は韓国にあると示すためと北朝鮮政権へダメージを与えることは、朴槿恵政権の実績になるからです。3月に強化された国連制裁に従い、朴政権はしっかりと北を弱体化させている強い政権だと国内向けやアメリカを始め同盟国へのアピールでもあります」(同)

 韓国は北より優れた国だから韓国政府としては何もしなくても北から自発的に人々が亡命してくる。もし来るなら韓国は温かく迎えるということを対外的にアピールできるのだ。韓国統一省は、この種の脱北、亡命事件を発表する度に「北の体制は崩壊しかかっている」とことさら強調することも、国内向けに政権求心力を高める目的で利用している一面でもある。

 この数年、韓国と中国は蜜月関係と言われてきた。しかし、「THAAD」(終末高高度防衛ミサイル)設置を巡り韓中関係は急速に冷え込み中朝関係復活の一因となりつつある。8月22日から始まった米韓合同軍事演習で北はいつもの過激な言葉を並べて韓国やアメリカを非難している。

 事実上、習近平政権から三行半をつきつけられた朴政権は今後、アメリカや日本への再接近を余儀なくされることになるのかもしれない。

<取材・文・撮影/中野鷹>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/25(木) 16:20

HARBOR BUSINESS Online

なぜ今? 首相主導の働き方改革