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歯磨きから女性性器切除まで、世界の貧困解決のカギは「女性の自立」にある

ニューズウィーク日本版 8/25(木) 17:40配信

<女性をエンパワーすることが貧困の削減につながると、『WOMEN EMPOWERMENT 100』の著者で活動家のベッツィ・トイチュは言う。驚きに満ちた100種類にも上るその具体的な方法とは?>

 日本のニュースであれ海外のニュースであれ、最近は「貧困」という言葉を目にしない日はないと言ってもいいかもしれない。そのくらい貧困は大きな社会問題であり、特に国際的な諸問題の根っこには、貧困が横たわっていることが多い。では、どうすれば貧困を減らせるのか。そのカギは「女性」にあると、ベッツィ・トイチュは言う。

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 トイチュはずっと芸術家だった。ボランティアや国際協力とは一切関係なく、40年間、本人曰く「安全な地」で暮らしてきた。だがある日、インターネットを通じて、世界をより良くするために活動する人々とつながるようになる。そうして彼女は、自らも環境と貧困の問題に取り組む組織に参加し、活動するようになった。

 その傍ら、トイチュは世界中で実践されている取り組みをひとつずつ拾い集め、SNS上にまとめていった。その集大成が、8月末刊行の新刊『WOMEN EMPOWERMENT 100――世界の女性をエンパワーする100の方法』(筆者訳、英治出版)に掲載された100のアイデアだ。この100のアイデアはいずれも――ひとつ残らず、すべてだ――貧困に苦しむ女性たちのエンパワーメント(自立や発展に必要な力をつけること)を目的としている。

 女性をエンパワーすることが、どうして貧困削減につながるのだろうか。この疑問に、今では女性のエンパワーメントの啓発活動家であるトイチュはこのように答えている。「女の子が教育を受ければ、結婚や出産の時期が遅くなり、若い女性はより高い技能を要する仕事に就けるようになります。女性は家族のために収入を投資する傾向が男性よりも強いので、女性の収入が上がれば、開発が促進されるというわけです」

歯を磨く習慣が定着すれば自立につながる

 女性の自立を支援するアイデアの中には、歯磨きのように、私たちが日常生活でごく当たり前におこなっている行為も含まれている。そんなことで貧困が軽減できるのか、と思われるかもしれないが、昔よりも手軽に買える安価なジャンクフードが出回るようになった開発途上国で、虫歯は深刻な問題だ。

 歯が悪ければ、ものが食べにくい、勉強にも集中できない。僻地の村では歯科医がいなくて治療もできない、あるいは、いても治療に払える金がない。歯を磨く習慣が定着して虫歯が減れば、こうした問題が解消できるというわけだ。

 一方で、女性性器切除の慣習を撲滅するというアイデアもある。こちらは逆に、日本で暮らす私たちにはまったくなじみがない。だが世界にはいまだに、幼い娘の女性性器の一部を切り取るというこの慣習が根強く残っている地域がある。そして、切除の際の処置が悪かったために感染症にかかって命を落とす少女も少なくない。命を落とすことがなくても、麻酔もかけずに体のもっともデリケートな部分を傷つけられたというトラウマは、一生涯残るものだ。

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 このほかにも本書には、ゴミとして捨てられたペットボトルで家や照明を作るといった、資源不足とゴミ問題を一挙に解決できるような、目から鱗のアイデアも数多く掲載されている。「女性をエンパワーすることで貧困を減らす」――そのための方法がこれほど多種多様に存在するのかと驚かされる。



行動を起こすためのヒントを提示する一冊

 日本人は「ボランティア慣れ」していない、とはよく聞く話だ。たしかに、寄付やボランティアが生活に根付いている欧米に比べると、日本でボランティア文化が浸透しているとは、まだまだ言えない。

 そのため日本では、何をすればどこにいるどんな人たちの役に立てるのか、自分にも何かできることがあるのか、行動を起こすためにはまずどうすればいいのか、といった基本的なことがわからず、結局何もせずに終わってしまう人が多いのではないだろうか。

「熱効率の良い改良型コンロを普及させる」「溜めた雨水をろ過や日光消毒で安全な水に変える」――本書『WOMEN EMPOWERMENT 100』に掲載されているアイデアのすべてが、日本にいる私たちに実行できたり、あるいは、先進国である日本国内の貧困問題にも役立ったりするとは限らない。

 それでも、色鮮やかな数多くの写真とともに紹介されている100のアイデアの中にはきっと、行動を起こすためのヒントがあるはずだ。「こんなことで世界の貧しい女性たちの力になれるんだ!」という驚きが、ボランティアとして一歩を踏み出す力になる。

印象的なセンテンスを対訳で読む

 最後に、本書から印象的なセンテンスを。以下は、『WOMEN EMPOWERMENT 100』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。

●The premise of [this book] is that anyone can do something to help people help themselves. However modest the effort, it makes a difference to someone.
(この本の大前提は、人は誰でも、誰かが困難を切り抜けようと行動する手助けをできる、という点にあります。どれほどささやかな努力でも、誰かに影響を与えることはできるのです)

●People living on a few dollars a day don't have a reliable cash flow. Some days there may be a bit more, but on other days much less..... That people survive under such difficult circumstances is a testament to human resilience and skill.
(1日数ドルで生活している人たちには、安定した収入などありません。昨日よりちょっと多く稼げた日もあれば、ずっと少ない日もあります。......ただ、このように厳しい状況でも人が生きていけるということは、人間の回復力と能力の証明でもあるのです)

●Another genre I avoided was disaster photography documenting suffering, starving mothers and children in lines awaiting food and humanitarian relief. These are heartbreaking, and important for conveying information the world needs to know, but they miss the narrative of women's capabilities, strength, and resilience. That is what I have strived to communicate in [this book].
(同様に使用を避けたのが、飢えに苦しむ母や娘が救援活動の食料配布の列に並んでいるような、典型的な災害の写真でした。こうした写真を見ると心が痛みますし、世界が知るべき情報を伝えるうえで重要な役割を果たしますが、女性の能力や強さ、回復力を伝えることはできません。この本で、私はそうした女性の力強さを伝えたかったのです)

――世界の困窮した地域に住む貧しい人々は、典型的な貧困のイメージを伝える写真で見るように、皆がいつも打ちひしがれているわけではない。しっかりと前を向き、自分の力で未来を切り開こうとしている女性は大勢いるのだ。

◇ ◇ ◇

 本書の冒頭には、「ティクン・オラム(世界の修復)」というヘブライ語のことばが記されている。そこに込められているのは、砕け散ってしまった世界を修復していく義務は私たち一人ひとりにある、という思いだ。


『WOMEN EMPOWERMENT 100
 ――世界の女性をエンパワーする100の方法』
 ベッツィ・トイチュ 著
 松本 裕 訳
 英治出版


©トランネット



トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
http://www.trannet.co.jp/

松本 裕 ※編集・企画:トランネット

最終更新:8/25(木) 17:40

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北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。