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“断捨離”にこだわる人の頭の中こそ整理されていない件

HARBOR BUSINESS Online 8/26(金) 16:20配信

◆汚い部屋のメリットを再度考えてみる

“断捨離”やミニマリストといった言葉も、いまではすっかり定着した感があります。テレビや雑誌でも部屋の整理収納ネタは定番で、やはりスッキリと片付いた部屋の需要は大きいのでしょう。

 断捨離のメリットとしてよく聞くのは、「心にゆとりが出た」や「仕事の効率があがった」など。確かに、物が多くて散らかった部屋で作業をすればストレスがたまりそうですし、ビジネス書でも「デスクが汚いのは頭の中が混乱しているからだ」といったフレーズを見かけます。

 が、本当にそうなのでしょうか? そこまでキレイに片付いた環境がいいなら、なぜ多くの偉人たちは、汚部屋で作業をしてきたのでしょうか?

 たとえば、文豪のマーク・トウェインはゴミ溜めのような机で名文を記し、アインシュタイン博士は紙束に埋もれた部屋で相対性理論を生み出しました。あれだけミニマルなデザインにこだわったスティーブ・ジョブズですら、ファイルの山に囲まれながら仕事をしていたのは有名な話です。

 これだけの天才たちが汚部屋を好んだ理由は、ほかでもありません。汚い部屋にはそれだけのメリットがあるからです。

◆良いアイデアは混沌の中から生み出される?

 実際、ここ数年の研究により、「汚い部屋の良い面」は大きく見直されてきました。

 なかでも代表的なのは、2013年にミネソタ大学が行った実験です(1)。研究者は48人の男女を集め、全員を2つのグループにわけました。

1.汚い部屋に入れる

2.片付いた部屋に入れる

 そのうえで、みんなに「ピンポン球の新しい使い方を考えてください」と指示したところ、結果は汚部屋グループの圧勝でした。散らかった机で作業をした参加者のほうが、オリジナリティが高いアイデアを思いつく確率が5倍も高かったのです。

 この結果について、コロンビアビジネススクールのエリック・アブラハムソン教授は、こうコメントしています。

「よいアイデアは、まったく違う要素が組み合わさって生まれる。システムのなかに散らかった要素を残しておくと、新しい組み合わせが生まれやすくなるのだ。もし、すべての工具をちゃんと工具入れにしまいこみ、すべての調理器具をキッチンに片付けていたら、調理器具を工具として使うアイデアなど思いつくはずがない」

 新鮮なアイデアを思いつくには、ある程度の乱雑さは欠かせません。何もなくてキレイに整った環境にいると、わたしたちの脳は、古い思考から抜け出せなくなってしまうようなのです。

 さらに、2012年にフローニンゲン大学が発表した論文でも、似たような結果が出ています(2)。

 このなかで研究チームは、参加者に「散らかった部屋」や「汚いコンビニ」といったさまざまな環境を用意。そのうえで、全員の問題解決の能力や思考のパターンに違いが出るかどうかをチェックしました。

 その結果は、やはり汚部屋の勝利。汚い環境に身を置いた参加者のほうが、シンプルで効率のよい解決策を思いつく確率が高かったのです。

◆アインシュタインも“散らかった机派”だった

 研究者は言います。

「多くの会社では『キレイな机』がよしとされ、オフィスを片付けるように指示される。そのほうが、作業の効率や創造性が高まると考えているからだ。散らかった環境は人間の心をかき乱し、簡単に決断を下せなくなってしまうというわけだ。しかし、この考え方が正しいという科学的な証拠はない」

 ほかにも、過去に十数件を超す実験が行われましたが、いまのところ結果はみな同じ。汚部屋はクリエティブな能力を高め、仕事の効率をあげてくれるようです。

 もちろん、断捨離やミニマリズムが悪いわけではありません。あくまでライフスタイルのひとつですから、好きな人は続ければいいでしょう。

 が、いっぽうで、散らかった部屋には、伝統的な思考を打ち破り、新鮮なアイデアを呼び込むパワーがあります。最後に、アインシュタイン博士の名言を紹介しておきましょう。

「汚い机は頭の中が散らかっている証拠だというなら、空っぽな机は何の証拠になると思う?」

1.Kathleen D. Vohs, et al. “Physical Order Produces Healthy Choices, Generosity, and Conventionality, Whereas Disorder Produces Creativity”

2.Jia (Elke) Liu , et al. “Effects of Messiness on Preferences for Simplicity ”

<文/Yu Suzuki 写真/ぱくたそ >

月間100万PVのアンチエイジングブログ「パレオな男」(http://yuchrszk.blogspot.co.id/)管理人。「120歳まで生きること」を目標に、日々健康維持に励んでいる。アンチエイジング、トレーニング、メンタルなど多岐にわたり高度な知見を発信している。NASM®公認パーソナルトレーナー。あまりに不摂生な暮らしのせいで体を壊し、一念発起で13キロのダイエットに成功。その勢いでアンチエイジングにのめり込む。

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最終更新:8/26(金) 16:20

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