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ジャニーズ事務所、SMAP解散騒動で注目!求められる芸能ビジネスの転換

HARBOR BUSINESS Online 2016/8/26(金) 9:10配信

決算書や財務諸表などの公開情報をもとに、さまざまな企業を分析し、その知られざる実態を明らかにする本連載。第11回目はSMAP解散騒動で話題になったジャニーズ事務所、そしてアミューズ、エイベックスなどの大手芸能事務所に切り込みます! 人気タレントの高齢化、音楽産業のビジネスモデルの変化など、転機期を迎えた芸能ビジネスの未来とは――

⇒【資料】アミューズの有価証券報告書

 多くのメディアで報じられているとおり、今年末にSMAPが解散することが明らかになった。1月に独立に失敗して以降、その動向が注目されていたが、グループの存続は無理だったらしい。会見や解散イベントなども行わなわれない模様だ。

 嵐に次いで、いまだジャニーズ事務所の顔であるSMAPの解散は、年間600億、1000億円とも言われる同事務所の売上に多大な影響を及ぼすだろう。その額はいったい、いかほどになるのだろうか? 他の上場している企業の事例を見ながら、芸能事務所のビジネスモデルの現在を探っていく。

◆アミューズとエイベックス

 現時点で上場している事務所は2つ。サザンオールスターズや福山雅治、Perfumeを擁するアミューズと、音楽事務所として最大手のエイベックスだ。決算書を読み解くと2社ともほぼ無借金経営で、大量のキャッシュを手元に持っているという特徴が伺える。特にアミューズは年間売上高358億円の約半分にあたる177億円もの現預金を有している。

 企業が上場する理由は、主に資金調達や世間に対する信頼性の醸成だが、芸能事務所は多額の資金調達を必要としないので大半が上場していない。

 そんな芸能事務所のビジネスモデルは、タレントを発掘して自社で抱え込み、あらゆるメデイアに露出させて印税やCMの出演料を得たり、自社で手がけるライブイベントや音楽・映像配信などさまざまなコンテンツに落とし込んでマネタイズするのが基本だ。

 この特徴は、近年のメディア業界における事務所の地位向上を後押ししている。というのも、ネットの台頭によって競争が激化し、メディア業界では紙媒体やテレビの凋落がささやかれている。しかし、これはタレントを抱える事務所にとっては、新しいチャネルが増えたことに他ならない。タレントという根幹を抑えているから、メディアがどのように多様化しても対応できるし、新しいタレントを起用させたり、選択肢が増えるというチャンスの拡大と交渉力の増大を意味しているのだ。

◆アミューズ、3グループが収入の半分を独占

 そんな芸能事務所のリスクは、少数のタレントに売上を依存していることだ。上場2社はどちらも、有価証券報告書の「事業等のリスク」という欄でそれを明記している。

 アミューズの場合は、上位3アーティストに「収入の40~50%を依存している」とまで書いてある。実に150億円以上を3グループだけで毎年、稼いでいる計算になる。何百人ものタレント・アーティストを所属させておいて競わせ、そのうちのほんの1%でも当たる兆しがあれば重点的に後押しをし、見事大成すれば会社としてはやっていけるというわけだ。

 ゲーム業界とほぼ同じ構造だが、ゲームの場合はたとえヒットさせられなくてもクリエイターやプロデューサーはその経験を活かし、次のプロジェクトに移れる。事務所のマネージャーも同じ立場だが、大半を占めるはずの「ヒットさせられなかったタレント」の行く末はどうなるのか。なかなか大変な業界である。

 ともかく、この仕組みなら会社の抱える正社員も少なくて済む。実際、芸能事務所の社員1人あたりの売上高は高く、アミューズは約1.5億円、エイベックスは1.1億円で、2社とも製造業大手並みだ。

 だからこそ、「事務所の顔」の脱退やイメージダウン、活動停止は経営を揺るがしかねない。「ゲス不倫」で一時活動休止に追い込まれたベッキーが所属するサンミュージック(非上場)は、その件が原因で一気に倒産危機とまで噂された。

 アミューズも予定されていたサザンオールスターズのライブができなかったことを理由に、最新決算では減益した。同社の株価を見ると昨年末から低下傾向で、福山雅治の結婚もじわじわ効いてきているように見える。

 タレントの高齢化も深刻な問題だ。桑田佳祐は38年間、福山雅治は28年間もアミューズに所属している。看板タレントが健在なうちに、次に長期的に売り出せる人材を発掘できるかに同社の命運はかかっている。

◆エイベックス、3年で株価3分の1に……

 一方のエイベックスは株価推移は深刻で、3年で約3分の1にまで低下した。その要因は利益率の低下だ。エイベックスは売上高は微増を続けているものの、純利益は減少傾向にある。4年で純利益が約2倍になったアミューズとは対照的だ。

 この背景には、同社が依存する音楽コンテンツ業界の変化がある。

 コンテンツ業界もデジタル化のあおりを受けて、本やCDが売れなくなってきている。特にCDは悲惨だ。エイベックスはサイバーエージェントと組んで音楽定額配信サービス「AWA」を手がけるなど積極的な姿勢を見せているが、利益には結びついていない。

 メディア業界同様、コンテンツ業界の変化も本来、事務所の追い風にしうる要因のはずだ。人々はデジタルでの消費を増やせば増やすほど同時にリアルな体験を求めるようになっており、ライブイベントの市場規模は拡大し続けている。

 実際、EXILEグループを率いるLDHは、CDも売りつつ、ライブや教室事業を拡大させており、同社は昨年の決算公告においてエイベックスの倍にあたる年間80億円以上の純利益をあげていることが発覚し、話題になった。

 エイベックスも”リアル”の重要性は重々認識しているようで、今年6月には観光旅行事業に参入した。今後の動向が気になるところだ。

 芸能事務所業界は、メディア・コンテンツ業界のめまぐるしい変化の中でも通用し続ける強いタレントを持っているところが栄える。そういう意味でジャニーズは、”歌って踊れる”イケメンのアイドルを俳優業や司会業にも展開。

 そんなタレントのマルチユースに圧倒的な強みを持つ事務所で、かつ安定的に新人を育成しており、これからさらなる発展が見込めそうだ。

 しかし、かつての事務所の顔が解散するダメージはいかにも大きい。同社がもし上場していれば、一気に数百億円単位で時価総額は変動したのではないだろうか。

【決算書で読み解く、ビジネスニュースの深層】

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○瀧本哲史ゼミ出身。現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok

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最終更新:2016/8/26(金) 9:48

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