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学校不祥事の顛末-水泳指導中の事故により教諭を処分-(1)

教員養成セミナー 8/27(土) 11:00配信

悔やまれる 学習指導要領の見落とし

【今月の事例】
 A市教育委員会は、中学の水泳授業中に男子生徒に飛び込み指導をし、頸椎骨折などの大けがをさせた男性教諭(34)に6カ月間の減給10分の1とする懲戒処分を発表した。生徒は飛び込み台からプールに飛び込み、頸椎骨折や脊髄に損傷を負った。市教委によると、2012年度から改訂学習指導要領により飛び込み指導が禁止されているが、教諭は指導要領を読んでいなかったという。生徒は首から下がまひし、手足を動かせない後遺症が残っているが、既に退院。本人の強い希望で4月から通常学級に復学している。
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1 授業中に発生した重大事故
 水泳の飛び込み指導の際、頸椎損傷などの重大事故が発生する例は従前から多く(独立行政法人日本スポーツ振興センター刊『学校の管理下の災害』)、危険性が指摘されていました。そのため、2012年度から小中学校では改訂学習指導要領により、同指導が禁止されるに至りました。本事案は、それにもかかわらず飛び込み指導がなされ、痛ましい事故が起きたというものですが、避けられない事故ではなかったはずです。


2 本事案における法的責任
(1)行政上の責任
本事案では男性教諭が減給処分を受けています。これが“行政上”の責任です。

(2)民事上の責任
事故が発生すれば、いかなる場合でも民事上の損害賠償責任が問われるというわけではありません。例えば、不可抗力の事故の場合、道義的責任は別として、学校側が法的な意味での結果責任を負うわけではありません。

 しかし、本事案の場合、学習指導要領で明確に禁止されている指導を行い、それによって事故が発生しているため、仮に裁判で指導の適否を争ったとしても、男性教諭に過失があったことは認められるでしょう。
 そうなると、学校側は損害賠償責任を免れません。重篤な後遺障害が残存した場合は1億を優に超える高額賠償となるケースもままあります。

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 【国公立学校の場合】
◯国家賠償法第1条
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた時は、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる。

【私立学校の場合】
◯民法第415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償をすることができる。

◯民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

◯民法第715 条(使用者等の責任)
第1 項 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
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3 男性教諭の問題点
(1)学習指導要領とは
 文部科学省は、全国のどの地域で教育を受けても一定水準の教育を受けられるよう、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程を編成する際の基準として、学習指導要領を定めています。このように、学習指導要領は法律そのものではありませんが、前述のとおり、裁判になればこれに準拠した指導をしたか否かが過失の判断に大きく影響します。

(2)本事案から学ぶべきこと
 男性教諭は学習指導要領の改訂を知らなかったとのことです。仕事にも慣れ、漫然と従前の授業計画を踏襲していたことから、改訂に気付かなかったのかもしれません。飛び込みをさせなければ事故は起きなかったわけで、男性教諭が学習指導要領の改訂を見逃していたことが悔やまれます。

 ただし、ここで注意すべきは、学習指導要領に従ってさえいれば、指導にあたって特段注意を払わなくても免責されるわけではないことです。裁判になれば、具体的な指導にあたり、どのように危険を予見し、どのように回避措置をとったかが争点になります。皆さんには、「学習指導要領に注意を払い、安全かつ適切な指導を行う」ことをベテラン教師になってからも忘れないでいただきたいと思います。

4 「学校事故対応に関する指針」
 2016 年3月、学校事故の未然防止や事後対応に関する「学校事故対応に関する指針」が公表されました。本事例とは少し離れますが、学校内で何らかの事故が発生した場合、大切なのは「事実を隠さない」ことです。このことも心に留めておいてください。

※「教員養成セミナー2016年9月号」より

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

最終更新:8/27(土) 11:00

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