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Brexitの次はItalexit!? 囁かれるイタリアのEU離脱

HARBOR BUSINESS Online 8/27(土) 9:10配信

 EUの存続に疑問を投げかけるテーマは尽きることがない。経済構造、生活レベル、国民気質などが異なる28か国がひとつの共同市場を形成すること自体に無理がある。このことからEU存続への不信感は止むことがない。Brexitの国民投票の結果が判明して、英国がEUから離脱することが明白となった。次は「Italexit」に関係したテーマが市場を埋めそうだ。「Italexit」、そう、イタリアのユーロ離脱の可能性がヨーロッパでは問われ始めているのだ。

 イタリアがEUからの離脱を決め、ユーロ通貨を使用しなくなると、それは英国の離脱を遥かに凌ぐ深刻な問題に発展する。特に、イタリアはEUの中で最大の負債国でもある。

 Italexitが話題になりつつあるその発端は、長引くイタリア経済の低迷と銀行危機に加え、今年11月に上院の改正を問う国民投票が予定されているからだ。「この国民投票に私の政治生命を賭ける」と言明して意気込んでいるレンツィ首相に対し、この投票を内閣不信任を伝える手段に利用しようとしているのがポピュリズム政党「五つの星運動(M5S)」である。2009年に創設されたM5Sは、この国民投票に反対票を入れて勝利して、その次にユーロからの離脱を問う国民投票の実施を計画している。

◆無視できなくなったポピュリスト政党

 M5Sの動きが無視できなくなっているのは、今年7月の世論調査で政府与党の民主党の支持率を上回ったことが背景にある。イタリアの「Corriere della Sera紙」によると、同党の支持率は<4月の28.9%から30.6%>に上昇し、一方の民主党は同月<31.1%から29.8%>に下がったのである。しかも、6月に実施された地方選挙で、五つの星はローマ市やトリノ市を含め、19の都市で勝利して、市長のポスト獲得している。

 M5Sが支持率を上げているのはイタリアの経済成長が2008年頃から後退が続いていることが要因のひとつである。2000年からプラス成長したのは僅かに3.6%であり、より深刻なのは、2025年まで順調な経済成長は望めないとIMFが予測していることである。

 イタリアは特に輸出立国として顕著な国であった。かつてイタリアは輸出価格を低く抑えて輸出競争力をつけていた。そして、その褒美として政府は輸出奨励金を輸出業者に付与して低価格で輸出した分を補填していた。それが、ユーロという共同通貨を利用することによって出来なくなり競争力を失ったのだ。M5Sはユーロ圏から離脱して通貨リラに戻すことを政策のひとつとしている。

◆増大する国民の不満の背景

 更に、イタリア経済の今後を難しくさせているのが負債である。その額は2兆2000億ユーロ(242兆円)で、GDPの135%にまでなっている。(参照「Cinco Dias」)

 それに、銀行危機がさらなる拍車をかける。EUで一番多くの不良債権を抱えているのはイタリアで、その額は3600億ユーロ(40兆円)。しかも、その中の2100億ユーロ(23兆円)はほぼ回収不能と判断されているという。

 特に、その中でも話題になっているのが、世界最古の銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ銀行)の経営不振である。その救済に、レンツィー首相は公的資金(ベイル・アウト)を充てたいとしているが、それがEUでは禁止されている。その為に同銀行株主、債券保有者、大口預金者などの資金を充てる形(ベイル・イン)での救援を迫られているが、まだ未決定である。レンツィー首相はEU委員会らに寛大な協力を要請している。

 失業問題もまた重要な課題としてある。失業率は11%であるが、24歳までの若者の失業率は30%である。

◆不満要因を抱えた上でのレンツィの「博打」

 以上の経済問題を抱えた上で、レンツィ首相は上院の改革を実行したいと望んでいる。それによって、政権は安定し、法案の承認などもより迅速にできるようになる。イタリアの議会制度というのは下院と上院とが対等の権利を持っているのである。例えば、上院でも内閣不信任を審議にかけ、決議する権利が付与されているのである。その為、下院で決議が出されても、上院がそれを不服としてまた審議にかけることが出来る。下院と上院の両方で審議を可決させるには両院で与党は充分な議席の確保が必要となって来る。

 この重複した上下院制を廃して、下院だけが最後の立法の決定権をもつ制度に変える。その為に、上院をこれまでの315議席から100議席に縮小し、その議員も地方から代表が選ばれるとした改革案をレンツィー首相はイデオロギーが相反する大物議員ベルルスコーニ議員に協力を仰ぎ、議会で可決させた。そして、11月にそれを国民に問うとしたのである。

 この国民投票でNOが勝利した場合は一気に政治危機に陥る可能性がある。そして、仮にM5Sが政権に就くようになると、Italexitにまでもって行かれる可能性が現実味を帯びてくるのである。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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最終更新:8/27(土) 20:06

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