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原因不明の病を「推理」 総合診療医という存在

Book Bang 8/28(日) 8:01配信

 病名推理エンターテインメント番組「総合診療医ドクターG」(NHK)をご存じだろうか。謎の症状に苦しむ患者の再現VTRを見ながら、実際にその患者を診た総合診療医が問診のようすや検査結果などの手がかりを提供する。謎解きに挑戦するのは三人の若い研修医だ。示された手がかりをもとに病名を絞り込み、意外な最終診断に至る。この「推理」の過程を楽しむ番組である。

 その書籍版が、山中克郎『医療探偵「総合診療医」』。著者は出題役で番組に出演しているドクターだ。この本では、症例から診断までの具体例だけでなく、問診の技術や心構え、また患者側がどう問診に臨むべきかといった点にも触れられている。

 周囲に怒り散らし暴言を吐きつづけていた男性が、ニコニコして「ありがとうございます。調子いいです」と言えるようになるまで、わずか数日間だったケースもある。夕食を作りおえた女性が突然「これは何? 誰が作ったの?」と言い出したケースは、珍しい「一発診断」の例として紹介されている。「診断がつく」ということで患者が劇的に救われる例は感動的である。

 鋭い推理のおもしろさはもちろんだが、推論にもとづいた集中的な問診技術に圧倒される。スピードと正確さを両立させるには、卓越した判断力や記憶力、そしてコミュニケーション能力が必要だ。総合診療医という存在を覚えておいて損はない。

[評者]――渡邊十絲子(詩人)

※「週刊新潮」2016年8月25日秋風月増大号掲載

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最終更新:8/28(日) 8:01

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