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戦地で戦う超常能力者の少年少女。彼らに待ち受ける未来とは──!?ダークアクション『君死ニタマフ事ナカレ』レビュー

おたぽる 8/28(日) 14:00配信

 原作は『ドラッグ オン ドラグーン』や『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』(ともにスクウェア・エニックス)で有名なゲームクリエイターのヨコオタロウ氏、作画は『クロノクルセイド』や『ワールドエンブリオ』(ともに少年画報社)の森山大輔氏という、もはや最強タッグと言っても良いほどの2人による新作、『君死ニタマフ事ナカレ』が、最新刊第3巻ですでに累計25万部を突破した。もともと人気の高い両氏であるが、ヨコオタロウ氏の緻密な設定の原作の上に、森山大輔氏の美しくも激しい作画が乗り、相乗効果で素晴らしい作品に仕上がっている。

 石油資源の枯渇から始まった紛争が世界規模で巻き起こる中、法律によって戦争行為を禁止されている日本政府が導き出した1つの答えは、“銃砲を持たない兵士”だった。薬物によって超常能力が発現した若者たちを集めて育て、紛争地帯にNGOとして派遣する。しかし実用化には程遠いその“軍隊”は、あまりにも未完成だった。民間人扱いのまま戦地に投入されることになった彼らは、ただひたすら死なないように超常能力で戦うのみ。しかしそれにも限界があり、大人たちによる身勝手な政治ゲームが進行している中、多くの能力者たちが紛争地帯で死んでいくのだった。

 舞台は日本国立特殊能力高等学校という、超常能力保持者を訓練する学校。主人公は得体の知れない男・クロイ。近接戦斗科1年の、催眠系の能力者だ。しかし他にも秘めている能力があるような……? ヒロインはパワー系美少女の、同じく近接戦斗科1年・マシロ。やけにクロイが気に掛けている少女だが、彼女は暴走し、一度壊れる。彼女もまた、心の中に闇を抱えているようで──? そして索敵補助科2年のアサギは、若年性認知症で長時間ものを覚えていられないが、知識だけは膨大にある少年。彼は暴走したマシロには電撃のショックが有効だと知り、電圧を上げたスタンガンをクロイに預ける。「次も有効だといいけどね」と不安な言葉を残して。

 マシロたちの初陣の後、学校では突然校長が交代し、新しい何かが動き出している様子だ。クロイと一悶着あったモモカとアカネ姉妹はマシロに助けられ、何故か校長から罰として「仲直りも兼ねて諸先輩方とボウリングをしてこい」という謎の使命を与えられる。その背後では新たな能力者が選出され、フランスへの出征が決められていた。名目上は平和的だったが、現場に足を踏み入れるとそこはまるで悪の巣窟。誰を信じれば良いのかもわからないまま戦闘が繰り広げられていき、やがては味方同士の戦いにまで発展していく。

 一瞬でも気を抜くと振り落とされかねないほどのスピード感で、この『君死ニタマフ事ナカレ』の物語は進んでいく。不安定な超常能力、素手での戦争、仲間の死や裏切り──さまざまな出来事を踏み台にして、クロイはマシロを守り抜く。一体彼らの間には何があったのだろうか? そしてマシロの持つ心の闇とは? クロイがマシロに執拗につきまとうことに、愛はあるのだろうか? たくさんの「?」を散りばめつつ、彼らの戦いは息もつかせず突き抜けていく。誰が本気で誰が誰を騙しているのか。アサギがアカネに言った「敵が誰かを決めておくことをオススメするよ」という言葉に何かヒントが隠されていそうだ。それこそ「都合よく利用される前に」……。

 バトルシーンがほとんどで、人間の脳が吹き飛んだり内臓が飛び出したりと、視覚的に苦しい部分は森山氏の高い画力によって淡々と描写されている。流血シーンも多く、人がたくさん死ぬのだが、これは戦争なのだ。そして少年少女たちが大人によって駒にされながらも抗おうとする、成長の物語でもある。まだまだ謎だらけの『君死ニタマフ事ナカレ』だが、タイトル通りに死を回避できるのか、今後が気になる作品である。
(文/桜木尚矢)

最終更新:8/28(日) 14:00

おたぽる

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
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