ここから本文です

アマゾン、「本読み放題」でヤフーら競合を「出し抜く」圧倒的優位なサービス開始

Business Journal 8/29(月) 6:02配信

 今月初め、米アマゾンが電子書籍読み放題サービスである「Kindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)」を日本で開始した。

 すでに国内では、ヤフー(yahoo! ブックストア読み放題)やNTTドコモ(dマガジン)、ソフトバンク(ブック放題)などが同様の読み放題サービスを月額400~500円で提供していることから、アマゾンは月額980円というハイエンドで市場参入を果たしたことになる。

 それではなぜアマゾンは、お得意のローエンドモデルでこの市場に参入しなかったのか。

 主に2つの理由が考えられる。ひとつ目の理由は、たとえ現状で先行の競合企業が存在しても、今後市場シェアを獲得できる見込みが十分にあると判断したからだ。

 実際国内市場では複数の競合企業が存在するが、まだ読み放題の便益を高める豊富な電子書籍が揃っていないことから、それら企業のシェアは伸び悩んでいる。アマゾンは競合企業の約2倍の月額利用料を設定しつつも、講談社、小学館、文藝春秋、新潮社、光文社などの大手出版社を含めた国内数百社の合意を取り付けることで、リリース当初のコンテンツを和書で12万冊まで揃え、費用対効果のバランスを取った。米国での同サービスの開始(2014年7月)から約2年を経過してからの開始は、各出版社の合意取り付けに多くの時間が費やされた証でもあろう。

 2つ目の理由は、アマゾンの有料会員サービスである「アマゾン・プライム」からあえて独立したサービスにすることで、広範囲の需要取り込みを図るとの狙いにある。これまでのアマゾンが展開してきたリテンション(既存顧客維持)強化策を考慮すれば、当然キンドルアンリミテッドもアマゾン・プライムに取り込んで、さらなる強化を図ることが常套なセオリーとなろう。

 なぜなら、「楽曲の聞き放題」や「映画の見放題」に「電子書籍の読み放題」を加えれば、リテンションとしての大きな武器となり、アマゾン・プライムにさらに多くの一般会員を引き込むことができるからだ。だが、アマゾンはキンドルアンリミテッドを独立したサービスとしてリリースした。

 キンドルアンリミテッドをリリースして久しい米国では、同サービス利用者の電子書籍購入額が約3割増えたともいわれている。さらに、読書時間も同サービスの利用前と利用後では3割ほど増加している。

 こうした傾向は、ハード(キンドル端末)とソフト(電子書籍)のトータルで利益を生み出す収益構造を採るアマゾンにとって、間違いなく大きな追い風となる。広範囲に需要を取り込むことこそ、キンドルアンリミテッドを含めた電子書籍事業のマネタイズ(収益化)を確立する道筋であることを、アマゾンは見抜いていたといえよう。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)

雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員

最終更新:8/29(月) 6:02

Business Journal