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通信キャリアのサブブランドと格安スマホ、勝つのはどっちだ?

@DIME 8/29(月) 7:30配信

 スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は三大キャリアのサブブランドと格安スマホでは、どちらがリードしているのかをテーマに話し合います。

■ワイモバイル vs UQ mobile vs MVNO

房野氏:ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルや、KDDIグループのUQ mobileがiPhoneを扱って人気です。一方で、IIJが郵便局でスマホをカタログ販売するなど、MVNO(格安スマホ)にもさまざまな工夫が見られます。大手キャリアのサブブランドと格安スマホはどういう状況だと思いますか。最終的に勝つのはどちらでしょう。

石川氏:勝つのはどっちかという話だと、サブブランドが勝つような気がする。

房野氏:結論が早いですね。

石川氏:キャリアを語る上で4つの要素があるといわれています。1つはネットワーク。サブブランドとMVNOでエリアの広さは同じだけど、MVNOはランチタイム時が弱いし、サブブランドの方がちょっと優遇されている感じもある。ということでネットワークに差がある。

 次に料金。多少の差はあるけれど、サブブランドは端末を安くして大手キャリア的な売り方をしている。UQ mobileだと中古端末にも割引があります。

 3つ目は端末ラインアップ。サブブランドはiPhone 5sという強い端末を持っている。

 最後、サービスに関しては、そんなに違いはない。つまりサービス勝負しかないけれど、サービスで差を出しにくい状況。星取表を見るとサブブランドがやっぱり強い。

 LCC(格安航空会社)がたくさん出てきたけれど、結局ANA(全日本航空)傘下に入ってしまった航空業界と同じことが起こるんじゃないかと思う。心配ですが、それが自然なのかなという気もしています。

石野氏:ワイモバイルは現時点では数字が伸びていて、端末ラインアップも充実している。UQ mobileがiPhoneを出してきたら『Android One 507SH』を出して一歩先を行った。

 追いかけているUQ mobileは、サブブランドとしての立ち位置が心配なところかな。CDMA2000を使う端末はなくなってきたんですが、au VoLTEに対応させるのが結構難しいという話もあって、実際、Android端末のラインアップが揃っていない。auはサブブランドに踏み切れていないというか、アクセルが足りない感があります。

房野氏:契約者数的にはどうなんでしょう?

石野氏:ワイモバイルは1000万を切っているかな。

石川氏:UQ mobileはそれよりずっと少ない。

法林氏:UQ WiMAXとイー・モバイルが争っているときに、UQは伸びてはいたけどイー・モバイルに勝てなかった。

石野氏:ソフトバンクはいつの間にかワイモバイルの契約者数を公表しなくなっていますね。UQは、UQ WiMAXの数は公表しているけれど、UQ mobile分は公表していないですね。

石川氏:UQ WiMAXはKDDIのiPhoneがネットワークを使っていて、それが契約数にカウントされているので、このへんの契約者数比較はあまり意味がない気がします。

法林氏:ワイモバイルがソフトバンクグループの傘下になって、ソフトバンクの契約者数がKDDIを超えたんだよね。

 ワイモバイルは完全にソフトバンクの1事業部になった。この件は遡ると、ソフトバンクが、会社更生法の適用を申請したウィルコムを救済し、イー・モバイルを買収した。ウィルコムの救済はいいとしても、イー・モバイルに関しては、新しい事業者に周波数を割り当てて業界の競争を促すというルールで作ったのに、既存のキャリアが周波数ごと買収するのはどうなのよ、という議論はあった。でも、総務省が黙認しちゃった。ソフトバンクにしてみれば、してやったり。

石川氏:ウィルコムは次世代PHSと呼ばれたXGPをやろうとしたけど、それがうまくいかなかった。ソフトバンクとしては基地局を安く買い叩いたという感じですね。

石野氏:それとTD-LTE(回線の上り、下りを極めて短い単位時間ごとに区切り通信する方式のLTE。複数の異なる周波数帯を上下に割り当てるFDD方式に比べて、上り回線&下り回線への割り当てを柔軟に変更して高速化を図る)を買った。

法林氏:基地局の場所とTD-LTE、つまりウィルコムの技術者は評価していたようですね。ソフトバンクはうまく安く買ったし、ウィルコムを救済したことで総務省に少し貸しを作った感じがする。だからこそ、イー・モバイルを買収する話になったときに、総務省は文句を言わなかった。さらにいうと、今はWCPが持っている周波数帯やXGPの事業と、PHS事業とが分離しているけれど、それは本当は一括してウィルコム全体を支援するという話だった。でもその後、分割された。ソフトバンクが好き放題した割に、総務省は何もいわなかった。

石川氏:そういう一件を経て、キャリア5社が4社、4社が3社になってしまった。総務省としては、競争を促すためにMVNOを盛り上げようということで今の状況があるんですが、販売店を4000店舗も持っているワイモバイルがあり、auに販売支援してもらうUQ mobileがアリとなると、MVNOはまだまだ大変。よっぽどがんばらないと、MVNOはサブブランドにやられちゃう気がします。

石野氏:日本郵政と組んだというほど組んではいないけれど、郵便局でカタログ販売を始めたIIJとか、携帯電話ショップが厳しい中で、逆にそこを呼び込んできた楽天モバイルとか、がんばっているMVNOもある。そういうところが台頭してきて、サブブランドとユーザーを取り合っている。多くのMVNOは、実質、ドコモのサブブランドみたいな感じになっています。

法林氏:ドコモ自身でやっているわけではないけれど、ドコモ系MVNOはドコモのサブブランドみたいな感じ。OCNは兄弟だし、楽天はちょっと違うけれどドコモのネットワークを使っている意味ではそう。楽天は会社の規模がかなり大きいし、事業もちゃんとやっている。楽天市場をイメージしがちだけど、楽天モバイルの中身は旧フュージョン・コミュニケーションズ。ネットワークも電話もよく分かっている人たちがいるので、そこは強みがある。

 MVNO対サブブランドの話に関しては、ワイモバイルはがんばっているけれど、逆にいうとがんばらなくちゃいけないくらい落ち込んでいる。ルーター、つまり旧イー・モバイルの回線が厳しい状況。さらに、PHSからのMNPをやっている。PHSを使わなければいけない理由があまりない。電磁波が弱いから病院で使われてきたけれど、最近は病院も携帯電話を使うようになってきているし。

石川氏:かけ放題(だれとでも定額)のメリットもなくなりましたね。

法林氏:そういうわけで、今回の「Android One」やSIM単体契約にFREETELやZenfoneの端末をセットにして売る方法とかで、かなり仕掛けていかないといけない状態。がんばっているけれど、その理由は苦しいからというのが実情。

石川氏:ウィルコムでがんばってきた人たちなので、踏ん張りが効くんじゃないかな。

法林氏:UQ mobileに関して、UQ WiMAXは旧イー・モバイルの市場をそこそこ取れたけれど、UQ mobileでは何もできていない。au系MVNOだけどmineoに全然勝てない。

石野氏:mineoは結構、伸びているんです。

石川氏:UQ mobileはこれからですね。

石野氏:新プランの「ぴったりプラン」からは少しいいみたいです。店頭ポスターや販売員の配置もすごい。今までルーターを売っていたところでUQ mobileの販売をしている。ヤマダやビックカメラの売り場はいいところにありますね。

法林氏:ルーターだけだったところからスマホも売るようになって、態勢を整えてやっている。旧イー・モバイルとの争いが代替わりしてワイモバイルと対抗するようになったから、がんばってはいるけれど、それが結びつく施策が打てているかな。新プランはがんばったと思うけれど、他のネタはダメで、先日の「UQフェムトセル」については呆れました。自宅の固定回線を経由するなら、その固定回線でWi-Fiを利用すればいいんですから。

■依然としてMVNOの環境は厳しい

石川氏:一部のMVNOはCMを大量に流しているじゃないですか。広告費のせいで黒字化するのに数年かかるところもあるそうで、そういった広告は母体があるからできること。色々心配になりますよ。

法林氏:出演する芸能人によって、だいぶギャラが違うよ。

石川氏:CM枠の費用の方が心配です。

石野氏:FREETELのCMはそれほど高い枠で流れていない気がする。ただ、FREETELはなんだかんだいってヨドバシカメラとビックカメラという家電量販店の後ろ盾があるのと、資本も結構入っていますからね。

法林氏:元ソースネクストとか、いろんな人たちが入っている。お金は厳しいと思うけれど。

石川氏:格安スマホってことは、1人当たりの通信回線使用料が大手キャリアの3分の1しかないわけですよ。サブブランドと戦おうとしている格安スマホ会社は正念場。すごい先行投資しているけれど、お金は出ていくので大変だと思う。

石野氏:収益構造でワイモバイルと比べて不利なのは、MVNOはドコモに上納金…じゃなくてネットワークの帯域料金を払わないといけない。明らかにそこの部分でワイモバイルは有利。

法林氏:だからこそ、ユーザーが払う月々の料金以外の収入が欲しい。FREETELはdTVやmusic.jpを売って、コンテンツ商売をやろうとしているし、「通話料いきなり半額」は「楽天でんわ」なんかと同じ中継電話サービスで、これはうまく回っているみたい。この他に別の収入源を探すのが鍵になってくるのかなと。

石川氏:以前、孫さんも言っていたけれど、キャリアは低ARPU(ARPU<アープ>=月間電気通信事業収入)ユーザーを集めちゃ意味がないわけですよ。大手3社にとって、低ARPUユーザーはむしろコストで、出ていく分には、それほど痛みはない。それよりも高い料金でも不満を言わない、コンテンツを付けても文句を言わず毎月利用料を支払ってくれるお客さんを囲った方がいい。低ARPUユーザーの押し付け合いになっている気がする。

法林氏:ソフトバンクはサービス開始当初、契約者数を増やさないといけないから、数を取りやすい低ARPUユーザーを取り込みました。今はMVNOが増えて、低ARPUユーザーはそっちに流れる。そして、同じくらいの支払いで、もうちょっといいネットワークが使えるという理由でワイモバイルに行く、みたいな流れになっている。auは、ヘビーじゃないユーザーが他に流れた。ドコモは流れたにしても、他社よりはダメージが少なかったんじゃないかな。

石野氏:ドコモの場合は、他社に流れてもドコモ系MVNOだったら結局、自分のところのユーザーとみなせる。低ARPUユーザーが低ARPU会社に行っただけ。

法林氏:ドコモはいうほどダメージはない。去年もMVNOは大変だといったけれど、今年はもっと大変です。

石川氏:MVNOがこんなにCMを流すとは思わなかったもんなあ。以前、「格安スマホはなぜ安いんですか?」と聞かれたら、「ショップを出していないから」とか「広告を出していなから」とか答えていたのに、最近はショップをたくさん出しているし、広告も流しているし(笑)

石野氏:とはいっても、3大キャリアのメインブランドより圧倒的に広告出稿量は少ないですよ。桁が違う。

石川氏:でも、圧倒的にユーザー数も少ない。マックスで120万契約くらいでしょ。

法林氏:ウィルコムが「300万を切ったから潰れるかも」と言われていたことを考えると、100万で商売するのは大変。でも、100万くらいユーザーを抱える会社がゴロゴロしてこないと、MVNOの市場はまともに認知されないと思いますね。100万以上はまだ1、2社ですよね。

石野氏:IIJとOCNの2社ですね。

石川氏:ウィルコムもがんばってマックス420万程度。イー・モバイルも確かその程度だった。そう考えると、安ければいいとか利便性を追求する“分かっている人”の市場規模って、日本は400万くらいと考えられる。それを格安スマホ全体で超えることが大切だし、1社でも超えるとドカンと大きな市場として定着するような気がする。400万が1つのボーダーラインになる気がします。

法林氏:MVNO全体では400万は超えているんじゃない? 直近の集計でスマホのMVNO利用率が10%といっていたので、スマホの契約数が6000万くらいだから、MVNOは600万くらいには来ている。ただ、MVNOのスマホという、ざっくりしたいい方なのでね……。

石川氏:使っている人はSIMカードを2、3枚くらい持っていますよね。

房野氏:仮に100万契約で1契約月額2000円だとすると、一か月の回線利用料収入が20億円くらい。売上20億円で帯域使用料、人件費、広告費を出してっていったら確かに大変ですね。

法林氏:MVNOの事業だけだったら絶対やっていけない。

石川氏:だから、OCNのように既存のビジネスがあるとか、楽天みたいに楽天市場というベースがあるところが強い。IIJはいろんなサービスを組み合わせて売れる。

石野氏:IIJはMVNE(MVNO支援のサービスを提供する会社)で、元締めとしても稼いでいますね。

石川氏:単体でやるには厳しいビジネスだということは、みんな分かっています。でも片足を突っ込んじゃったから、どうしようかと考えている。

房野氏:急に「MVNOを辞める」なんて言わないですよね。

石川氏:日本通信は、そっちに流れ気味かな。

法林氏:総務省がそこを手当していないのがマズイ。MVNOが潰れたときに誰が責任をとるかというルールがないんです。

石川氏:先日、新聞記事になっていましたが、MVNOのSIMカードが犯罪に使われるようになっている。警察が黙っていないだろうから、本人確認の事務手続きが強化されるでしょう。そうするとコストが上がるし、契約数も伸びなくなるかもしれない。結構、厳しくなるかもしれない。

■生き残るMVNOはどこだ!?

房野氏:生き残るMVNOはどこでしょうね。

石野氏:少なくとも大手3つは潰れないでしょう。

法林氏:楽天、OCN、IIJくらいまでは多分、大丈夫。ISP系はISP事業との整合性というか、どれくらい体力的な余裕が持てるかだと思う。ビッグローブ、ソネット、ニフティ、DTIなんかは、ISP事業で収益が厳しい状況になったりすると、MVNO事業に影響が出てくるかもしれない。

石野氏:楽天モバイルはお金をつぎ込み過ぎているような気もするけど、MVNO単体で見ていないんでしょうね。

法林氏:僕は、楽天は結構行けると思っています。

石川氏:楽天はクレジットカードを持っているのが強い。そこと紐付けて、カード、スマホ、楽天市場をポイントでぐるぐる回せる。単体で見る必要はないと思う。聞いたところによると、楽天カード会員は1000万以上いるんです。その楽天カードの契約よりも、今はモバイルの方が伸びているらしい。

法林氏:三木谷さんが「末恐ろしい」と言ったそうですね。

房野氏:楽天カード会員の3割が楽天モバイルを契約してくれたら300万。結構大きな数字ですね。

法林氏:6月末の発表会で説明していたけれど、上の年代層のユーザーが増えていることを認識していて、シニア層を含めたサポートも考えている。それは堅実な姿勢。このユーザー層は一度契約したら変えない人たちなので、獲得したらそのまま維持できる。

石野氏:楽天は楽天市場でモノを売っていることも強み。買い物に楽天モバイル端末を使ってくれればいい。端末自体はほとんど利益がないかヘタすると赤字らしくて、半額セールなんてできないはずのギリギリの原価率なんだけど、複合的に利益が出ればいいと考えているんでしょうね。

石川氏:だから、実質的に端末を分割で買わせて2年間縛る「コミコミプラン」を始めた。料金で縛ると「MVNOが何やっているんだ」と言われるので、端末の分割で縛る形で売るのは正しいと思います。

石野氏:そこで楽天カードだと、分割手数料はかからない。シナジーですよね(笑)

法林氏:完全に経済圏商法ですよね、そこはうまいね。

......続く!

次回は中国メーカーについての会議です。ご期待ください。

@DIME編集部

最終更新:8/29(月) 7:30

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