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黒田総裁のジャクソンホールでの講演-Re-Anchoring

NRI研究員の時事解説 8/29(月) 10:18配信

はじめに

「Resilientな金融政策の枠組みの設計」というカンザス連銀主催のコンファレンスのテーマは、先進国の中でも日本が最も大きな貢献をなしうる内容であるだけでなく、MPMにおける「総括的検証」と密接に関連する論点を含んでいる。

そこで、9月MPMの展望も含めて、今回の黒田総裁の講演テキストの内容を検討したい。

非伝統的政策の常態化

講演の冒頭で黒田総裁は、日本の過去20年の経験-継続的デフレ、潜在成長率の低下、数回の金融危機、急速な高齢化と労働力の減少による構造問題-に照らすと、長期的にみて、低インフレと低成長が並存する可能性が高いとの見方を強調した。講演テキストからは、これが先進国全体に該当するかどうか判然としないが、少なくとも日本に言及したものと理解できる。結果として、黒田総裁は、伝統的な金融政策のresiliencyは既に著しく毀損していることを確認した。

その上で黒田総裁は、緩やかだが継続的なデフレを克服するために開始したQQEが、(1)できるだけ早期に2%のインフレ目標を達成するという明確で強力なコミットメントを伴う、(2)大量の国債買入れによってイールドカーブ全体に下方圧力を加える、という点に特徴があることを確認した。また、(1)については、大規模な資金供給で裏付けられているとし、人々のデフレ期待を転換し、インフレ期待を引き上げる狙いがあったことを説明した。

これらを踏まえれば、「総括的検証」では、長期にわたる低インフレと低成長に対してまさにresilientな仕組みを考えることが主題になるものと推察される。

インフレ期待のre-anchoring

講演の本論の前半で、黒田総裁はインフレ期待の問題を取り上げた。まず、2014年夏以降の原油価格の下落が日米の長期(6~10年)のインフレ期待-サーベイベース(日本はConsensus Forecast、米国はフィラデルフィア連銀のSPF)の指標-に与えた影響を比較し、米国は安定していたが日本は下落したことを指摘した。加えてインフレ率(CPI総合)も、米国では早期に回復したのに対し、日本ではその後も低位になっていることを説明した。

一時的と考えられる原油価格下落が、インフレ期待に異なる影響を与えた点について、黒田総裁はインフレ期待が2%付近にアンカーされているか否かの相違があると指摘した。実際、日本では、上記の指標で見た場合、1990年中盤以降、インフレ期待は2%を下回り続けていることを付言した。

その上で、黒田総裁は、完全情報下での合理的なインフレ期待形成モデルは有用なベンチマークを与えるとした上で、実際は、企業や家計が情報をそう頻繁には更新しない可能性があると指摘した。そして、情報更新にコストを要するのであれば、こうした行動も非合理的ではないと主張し、期待形成にadaptiveな面があることを示唆した。

併せて、黒田総裁は1990年代以降に日本のCPIインフレ率が時折マイナスに転ずるなどゼロ近傍で推移し、長期インフレ率も変動を伴いつつ下落したことを確認した。そして、こうしたインフレ期待の不安定性が様々なショックの影響を拡大したり、政策効果を減殺したと主張した。これらの分析から得られる結論として、黒田総裁は、resilientな金融政策の枠組みにとって、インフレ期待を目標近辺にアンカーすることが重要な前提であることを強調した。

こうした分析には様々な議論も可能であろう。例えば、2014年の日本では消費税率引上げによって総需要が打撃を受けていたことも事実であり、これが実際のインフレ率ともにインフレ期待を押し下げていたことは考えられる。より長期的にも、名目為替レートが増価し続けたことの影響をどう考えるかという論点もあろう。もちろん、名目での円高は内外のインフレ率格差を反映したに過ぎない面はあり、その意味では循環論法になる。ただし、名目為替レートに関する期待がインフレ率格差以外の要因によって形成された可能性をどう考えるかという点は残る。

ただし、そうした議論を考慮しても、我々の長期インフレ期待に根強く下向きの力が働いており、それが長期にわたる低成長や低インフレのためであるという基本的な主張は、少なくとも国内で広く共有されている。その意味では、「総括的検証」もインフレ期待のre-anchoringという講演タイトルそのものを目指すものと理解できる。もっとも、インフレ期待がadaptiveであるだけに、期待を引き上げるための手段が上記(1)のような大量の資金供給であり続けるのかどうかは議論となりうるはずである。

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最終更新:8/29(月) 10:18

NRI研究員の時事解説

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。