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聖地巡礼の最難関、ピレネーで出会う各国人の人生模様

Wedge 8/29(月) 12:40配信

[フランス中西部Le Puyからスペインの聖地Santiagoを経てMuxiaまで]
(2015.4.22-7.16 86days 総費用37万円〈航空券含む〉)

韓国人マティウスとの出会い

 6月1日 5時起床。今回の巡礼ルートで最難関のピレネー山脈を越えると思うと緊張が漲る。自分のペースで歩き続けないとスペイン側の巡礼宿があるロンセボー(Roncevaux)に明るいうちに到達できない。巡礼者支援センターでベテランの案内人に詳細地図で歩き方を教えてもらった。ナポレオンがスペイン遠征の時に辿った“ナポレオンの道”が比較的なだらかで歩きやすいという。

 まだ暗い曇り空のなか坂道を登り始める。歩き始めてすぐに韓国人の三人連れと一緒になった。25歳くらいの女子、マティウスと名乗った見たところ30歳くらいの青年、50代の元船員のおじさんの三人組だ。彼らは偶々昨夜同じ宿で知り合ったという。韓国ではサンチアゴ巡礼の映画がヒットしてサンチアゴ巡礼がブームになっているとのこと。このあと聖地サンチアゴに着くまで毎日十数人の韓国人と出会うことになる。

 おかしなことにフランス国内ルートでは一人の韓国人も見なかったのになぜかピレネー山脈越えの地点から韓国人が突如急増したのである。後日マティウスに聞いたら韓国人は映画や小説で紹介されて有名になるとミーハー的な興味と実際に見てきたことを自慢したくて物語と全く同じ場所に行きたがるという。インドシナ半島旅行の途上ラオスで異常にたくさんの韓国人のグループツアーや若者の個人旅行者に遭遇したことを思い出した。ラオスも同様にTVドラマで紹介されてブームとなったと聞いた。

格差社会と教育問題を語っているうちに峠を越える

 午前中は空模様が不安定で霧や断続的な小雨が続き100円ショップで買ったビニール合羽を着たり脱いだりと忙しい。“ナポレオンの道”は高原の草地に小道が続いており見晴らしが良い。11時頃に道端の岩に腰かけてパンとチーズでランチ。欧米人の顔見知りが通りがかりに「タカ、元気か?」「ボナ・ペティ」などと声を掛けてくる。

 ナポレオンの道の頂上付近を越えるとなだらかな尾根道が続く。欧米人の7~8人のグループと一緒になる。彼らもそれぞれ単独で巡礼を始めたが昨夜同じ宿で知り合って一緒に歩いているとのこと。リーダー格のデビッドはメキシコ人で英語も上手だ。彼が簡単にメンバーを紹介する。

 ティナはフィンランド人で学校の教師。フィンランドは子供の学力水準が世界有数で教師の社会的地位も高いと読んだことがあった。さっそく教育問題についてティナに話を聞いた。ティナによるとここ数年学力テストの順位は最近少し下がってきた。やはりシンガポール、中国などアジア勢の追い上げがすごいという。

 日本では家庭の所得格差が子供の学力に反映して学力格差に繋がっている。それが学歴格差となりさらに所得格差が広がっていると格差の連鎖を説明したところ、ティナのコメントは興味深かった。

 フィンランド政府の基本方針は“教育の機会均等”であるという。子供一人一人の意欲や能力は異なるのが当然で全員が同じ学力水準を目指すのは不可能であり不合理。すなわち“学力水準の均等”はあり得ない。それゆえ意欲・能力のある子供には高等教育の機会を与えるというのが“教育の機会均等原則”。貧乏な家庭でも子供が優秀ならば無償で高等教育を受けられる。裏を返せば“学力不振の子供はそれなりの道を行け”ということらしい。

 さすが個人主義の考え方が貫徹している北欧国家である。日本で同じことを公言すれば“差別だ”“切り捨てだ”と大騒ぎになるであろうと思った。おしゃべりしていたら峠を越えて緩い下り坂になってきた。彼らがランチ休憩するというので別れた。

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最終更新:8/29(月) 12:40

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