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福島県富岡町、全町避難の住民が立ち上げた「復興メガソーラー」

HARBOR BUSINESS Online 8/29(月) 9:10配信

 福島第一原発事故から5年半。原発から数km先にある福島県富岡町は、いまも全町避難を強いられ、町民は全国各地での避難生活が続く。そんな中、住民の主導で太陽光発電プロジェクトが立ち上がっている。

◆農作物が作れなくなった土地を有効活用したい

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)建設が予定されているのは、原発から7kmという距離にある農地だ。プロジェクトの発起人である遠藤陽子・道仁夫妻は、代々受け継いできた農地で、放射能の影響により農作物が作れなくなったことに心を痛めていた。

「地域の将来のためにこの土地を有効活用したい」

 そう思って行きついたのがこの発電プロジェクトだった。

 現在、同じ福島のいわき市に避難している夫妻は、専門家などに相談するうちに、自分たちの土地だけではなく周囲の農地を持つ人たちにも声をかけて大きな事業にしようと構想する。

 そして遠藤夫妻は、東北から関東、四国まで日本全国に散らばって暮らす40世帯近い地権者をおよそ1年かけて訪問。プロジェクトの賛同者を募ることになる。

 やっと居所を探し当てても、最初は怪しまれて門前払いにあうこともあったという。そんな中で富岡町の議員から協力を取り付けて信用されるようになり、徐々に賛同者が増えていった。

 賛同するようになった地権者たちには、地域の将来に対する不安があった。そして、避難が解除されると他の農地と同様に税金がかかってしまうという問題もあった。農業ができないのに、税金や維持管理費をどう支払っていけばいいのか? そんな状況で声をかけられた発電事業に関心が集まるようになった。

◆売電収益を生活再建と地域の未来のために

 プロジェクトは「富岡復興ソーラー」と名付けられ、最終的には地域住民が主体になった自然エネルギー事業としては桁外れに大きい、33メガワット(一般家庭約1万世帯分の電力)という大プロジェクトになった。

 この事業の特徴は、遠藤陽子さんが代表を務める「一般社団法人富岡復興ソーラー」が、売電収益を地域貢献につなげるというはっきりとしたビジョンを掲げていることだ。発電事業の収益は、20年間合わせて30億円以上(見込み)。

 具体的には、避難指示解除後に町に戻る人をサポートする送迎サービスや、若手の農家が自立的な経営をするための支援などが検討されている。

「地権者の生活再建に加え、地域の未来のために投資をできればいい」と遠藤陽子さんは言う。

 富岡復興ソーラーの設備工事は2016年秋に着工開始、2018年の3月頃には発電を開始する予定だ。プロジェクト事業費の一部には、全国の市民から出資を受ける「市民出資」の仕組みを取り入れている。市民出資は「自然エネルギー市民ファンド」という会社を窓口に今年10月まで募集している。福島原発事故からの復興をめざす、地域住民のチャレンジに注目したい。

取材・文・撮影/高橋真樹(ノンフィクションライター。『ノンフィクションライター高橋真樹の全国ご当地エネルギーリポート』をWeb連載中。著書に『そこが知りたい電力自由化―自然エネルギーを選べるの?』<大月書店>など)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/29(月) 9:10

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