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被爆から71年、オバマ訪問後の広島で――被爆者から首相に厳しい要望

週刊金曜日 8/30(火) 12:23配信

 8月6日、オバマ米大統領の訪問後初めてとなった71回目の広島・平和記念式典には5万人が参列、91カ国とEUの代表も出席した。

 松井一実市長は平和宣言で、オバマ演説の「核兵器のない世界を追求する勇気を持たなくてはならない」との一文を引き、核廃絶を目指し、「情熱を持って連帯し、行動を起こすべきではないか」と訴えた。しかし、市長には、被爆者が求めている核兵器禁止条約、核兵器・先制不使用宣言に関する言及など、具体的行動を呼び掛ける「勇気」はなかった。湯崎英彦広島県知事は「安全保障の分野では、核兵器を必要とする論者を現実主義者、廃絶を目指す論者を理想主義者と言う。しかし、本当は逆ではないだろうか。廃絶を求めるのは核兵器使用の凄惨な現実を直視しているからだ」と強調した。

 安倍晋三首相は「広島、長崎の悲惨な経験を二度と繰り返させてはならない」などと述べ、式典後、「被爆者代表から要望を聞く会」に岸田文雄外相らと出席し、被爆7団体の代表と懇談。広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長は「日本国憲法は、戦争と原爆による死没者の遺言だ」と指摘し、戦争法の撤回と改憲を止めるよう訴えた。6歳の時に被爆した広島県朝鮮人被爆者協議会の姜周泰副理事長は、自身と家族の被爆体験を語り「朝鮮民主主義人民共和国には約200名の被爆者がいる。政府は平壌に実態調査団を派遣し支援対策の実行を」と要望した。

 岸田外相は「北朝鮮の被爆者は重要な人道上の問題だが、外交関係がないため支援は難しい」と答えた。人道問題であれば、国交がなくても対応すべきではないか。「聞く会」の終了後、安倍首相らは7人と握手した。首相は無言だったが、岸田外相は姜さんに「北朝鮮のこと頑張ってみますから」と声を掛けた。「聞く会」では、「米国の傘に頼るな」など、首相にとって、聞きたくない話が続いたのだろう。首相は天井を見上げ、目をキョロキョロさせるなど落ち着かない表情に終始した。

(浅野健一・ジャーナリスト)

【平和研問題考える集会も】

 被爆71年の原爆忌を「切れ目の年」にするな――。広島では、言論の自由と人権を考え、歴史修正主義に抗う集会も開催された。

 5日に開催された「8・6ヒロシマ平和へのつどい2016」(主催・同実行委)では佐高信本誌編集委員が講演。安倍政権の戦争法案、歴史修正主義、日米軍事同盟や核・原子力推進、沖縄問題など、暴力的な軍事化が加速する現状を解説。「自衛隊は、国民の生命、財産を守ると誤解している人が多いが、元統合幕僚会議議長の栗栖弘臣氏は自著で『自衛隊は国民を守らない』と否定した。軍隊が私たち国民を守らないのは過去の歴史でも明らか」と安倍政権や政府の詭弁を批判。「権力と闘う側はお行儀良くてはだめ。もっと毒のある闘いを続けていかなければ」と参加した市民らを激励した。

 木原省治氏(原発はごめんだヒロシマ市民の会代表)は「被爆71年の今年は『切れ目の年』と言われるが、核廃絶なきオバマの来訪をブームに終わらせず、厳しく評価し、今後も切れ目なき市民運動を展開する」と、連帯を求めた。

 7日には、広島平和研究所の講師雇い止め問題(本誌5月27日号既報)の全国集会があった。平和をうたう研究所で、なぜ進んで学問の自由・自律を放棄し、研究者に圧力をかける今回の問題が起きたかを田中利幸氏(元広島平和研究所教授)が解説。学者は「佞儒=権力にへつらう」「腐儒=狭い研究専門に目を向けるだけで役に立たない」「転儒=国家主義思想に転向」「抗儒=学問の自由への圧力に抵抗」に分けられ、佞儒・腐儒らが資金獲得に躍起になり、批判的な学者への圧力や疎外に加担すると批判。「大学独法化による学術研究レベルの急激な劣化が背景にある。平和研究所から佞儒・腐儒的要素を除去し、市民が結集して、『原爆無差別大量殺傷』への抵抗を基にした平和学の国際コンソーシアムの設立を」と提言した。

(藍原寛子・ジャーナリスト、8月19日号)

最終更新:8/30(火) 12:23

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