ここから本文です

銀杏BOYZ、8年ぶりの全国ツアーファイナル公演レポ 峯田和伸の活動史20年が凝縮された夜

リアルサウンド 8/30(火) 18:02配信

 この夏、『世界平和祈願ツアー 2016』を行った銀杏BOYZ。彼らにとって全国ツアーは実に8年ぶりのこと。全チケットは早々に完売し、各地大盛況であったと聞く。そんな中おこなわれた8月17日の単独公演「東京の銀杏好きの集まり」は、このツアーの最終日。同ツアーの追加公演にあたる。会場は中野サンプラザ。同町に長く住み続けているメンバーの峯田和伸(ボーカル&ギター)にとっても、一際、思い入れのある場所だ。ライブでは、峯田が音楽活動を始めてからこの20年間で作ったGOING STEADY~銀杏BOYZの楽曲が、今の彼の想いも込められて、今の銀杏BOYZとして歌い放たれた。

 この日のライブは、北海道での公演を終え、スタッフと街を徘徊し、市井の人たちと何ら変わらない一市民・峯田和伸を映し出す映像からスタートした。終わるや否や、無伴奏による峯田による「人間」の生々しい歌声が場内に響き渡る。スポットライトの当たった先には、客席扉内でハンドマイクにて歌う峯田の姿が…。そのまま客席を歌いながら徘徊。会場の大合唱に迎えられる中、ステージに上がり、アコギを持ち、弾き語りにて、歌い放つように同曲を伝える。続いては、「生きたい」。<それでも生きなくてはならない!!>そんな人々の一場面一場面がアコギの硬いカッティングに乗せられ、痛々しくストーリーテリングされていく。中盤からサポートメンバー、山本幹宗(ギター:ex.The Cigavettes)、藤原寛(ベース:AL)、後藤大樹(ドラム:AL)が加わり、ガツンとしたバンドサウンドに豹変。ステージ一面が赤いライティングに包まれると、曲の力強さと共に心境移入も急変。希望が悲痛を塗り去ってしまうように、<生>へのバイタリティがむくむくと湧き上がってくる。峯田もまるで希望に向けているようにハンドマイクに持ち替えた片手を、ここではないどこかへと伸ばしている。

 峯田がギターをエレキに持ち替え、「若者たち」に転じると、ライブがいきなり走り出す。ステージから土煙を上げて場内の隅々にまで飛びかかってくる唄と、それと並走するかのように一緒に歌う会場。演奏スタイルやサウンドは変われど、ステージとオーディエンスとの関係性は全く初出の頃のままだ。GOING STEADY時代の「DON'T TRUST OVER THIRTY」の再アレンジ曲「大人全滅」では、感極まった峯田が早くも場内に飛び込み、各席関係なく、そこにみんなが群がり、自分の歌と言わんばかりに一緒に歌う。

 曲を終えたあと飛び込んでくる愛情と愛しさのこもった罵声が、まるで、“待ってたよ!!””お帰り!!”“また逢えて嬉しい!!”そんな声援のように温かく響く。その中、峯田は「8年ぶりの遠距離恋愛のような今回の全国ツアーを回ってきて、各地で飛んできた野次や罵詈雑言が何よりも嬉しかった。ライヴ活動をしていない時期も、その声を夢見ていた。こうしてツアーに回れて良かった」と、全国ツアーを振り返り語る。それ以上に待っていたであろう会場からは、それを歓迎する無数の声援や感謝の言葉がステージに向け贈られた。

 あの頃に戻ったり振り返ったり、今の心境を込めながら、その時々の少年峯田和伸とすでにアラフォーに差し掛かっている峯田がその時々で顔をのぞかせた、この日。

 大学進学時の上京の際に、近所に住んでいたタカシ君からもらったアコギで、上京直後に作った中の1曲だったと告げ歌われた、GOING STEADY時代の「YOU & I」は、あの頃の同曲の中心にあった刹那的な永遠性が、時を経て、挫折や現実を知り、夢や幻想と悟りつつも、どこかそれを今でも信じていたい、そんな「VS.THE WORLD」の副題が付けられ、今の気持ちを交え歌われた。続く「佳代」は、上京し、高円寺に住んでいた時に、初めて付き合ったという彼女に向けて作られた曲。アコギ一本で歌われた同曲も、一人ひとりが、<自分の愛しい人=自分の中の佳代>を思い浮かべ、その人へと想いを馳せさせた。

「骨」では、藤原のコーラスも入り、歌にふくよかさが寄与されていく。その新曲「骨」は、ドラマ『奇跡の人』(NHK BS)のエンディングに流れていた際とは趣きを変え、バンドサウンドを伴って鳴らされた。ドラマ時の弾き語りによる鬼気迫るものから、よりポップさを擁し、これまた違った感じに響いたのも印象的であった。

 峯田和伸の唄は、歌の持つ生命力やバイタリティもだが、ロマンティシズムも大きな魅力の一つ。それを思い起こさせたくれたのが、「夢で逢えたら」であった。ストレートな8ビートに乗せて、ロマンティックで一途でピュアな気持ちが飛び込んでくる。

 どっしりとしたフロアタムを活かしたダイナミズム溢れる後藤のドラムに、ちょっとしたクロっぽさを交えた藤原のベース。その安定したリズム隊に、フリーキーなギターフォームの山本のギターが絡むように自由に泳ぎ回るのが、このバンドメンバーの特徴。そこに決して予定調和にならない峯田の歌と、どう展開するか分からない構成ながらキチンとキメのポイントが作られていく。その化学変化には、曲毎に感心させられるものがあった。

「この曲をサンプラザで歌ってみたかった」とプレイされた「BABY BABY」では、<この一瞬よ永遠に続いてくれ!!>そんな刹那な気持ちと共に会場中も合わせて大合唱をする。

「ツアーに出たくても、そのタイミングでは既にメンバーも居なく、一人になり、出られなかった。こうしてまたギター、ベース、ドラムとバンドで全国を回ることが出来ました。次の曲は、より気持ちを込めて歌います」の言葉に続き歌われた「新訳 銀河鉄道の夜」の際には、満天の星空を彷彿とさせるライティングとミラーボールが回るファンタジックな雰囲気の中での歌唱が印象的であった。

 ここからは後半。ギターをジャガーに持ち替え、中盤まではそのジャガー1本で切々と、そして痛々しく響く歌を歌いつつ、客電全開後は、一変してダイナミズムと生命力を会場中に広げていった「光」、そのとてつもないパワーを更に自己発光していくかのように、8ビートにノリ、再び会場も並走させた「ボーイズ・オン・ザ・ラン」。

 そして、ラストの「僕たちは世界を変えることができない」に入る前、峯田は我々とこんな約束をしてくれた。

「これから新曲を作って、アルバムを作って、またみんなに逢いに来ます。もう8年も待たせないから。何よりも自分の曲でみんながワーッとなってくれるのが心から嬉しい。みなさん、どんな汚い手を使ってでもいいからこれからも生き延びて下さい。そうしたらまた会えますから」と告げ、メンバー紹介の後、同曲に入る。最後は4人全員のコーラスで現在の銀杏BOYZの音楽的な豊かさを感じさせてくれた。<どんなに頑張っても所詮世界を変えることなんて出来ない>と諦念混じりで歌いながらも、どこか、<いや、でも、やらなきゃいけないことをやるんだよ!!>と信じさせ、決意させてくれる同曲。こんなタイトルながらも、最後には明るく前向きな気持ちにさせてくれる。こんな歌を創り、歌えるのは、やはり峯田和伸だけだと改めて確信させられた瞬間であった。

 アンコールに入る前。この中野サンプラザでの一番の想い出として、フジファブリックのボーカルだった故志村氏のお別れの会「志村會」を挙げた峯田。“あの日の会には、会場では終始、「若者のすべて」(フジファブリック)が流れていたっけ……”と、不思議と志村氏と峯田のどこか似通った部分を思い浮かべる。

「このサンプラザの代わりに、今度は1万人収容のアリーナが出来る予定だとか。そんなホールが出来たら、またそこでやりたいね」と笑いながらアンコールに入る。アンコール1曲目は「夜王子と月の姫」。<世界の終わり来ても僕等ははなればなれじゃない>のリリックが、まるで銀杏BOYZと会場、いや、これからも銀杏BOYZを必要としている全ての人、そしてそんな人たちを必要としている銀杏BOYZとの心のアライアンスのように響く。続く「ぽあだむ」と「愛してるってゆってよね」は、大団円へと導くように、ダンサブルにポップに放たれ、ツアーは幕を下ろした。

 時に性に対してのリビドーを、時に好きな人への直接伝えられなかった純愛を、時に世界に対してのジレンマや抵抗を、時に希望や光を、時に生きのびることへの執念を…その時々を通し、作品毎に彼が放ってきた「唄の柱」の数々が今の形となって次々と飛び出した感のある、この日。銀杏BOYZのライブでありながらも、シンガーソングライター峯田和伸のこの20年の活動の歴史や創作楽曲の影響力と永遠性、そして彼自身の人間観に魅了されっぱなしの一夜であった。

 なぁ、峯田。またあと何年も待てねぇよ。また近いうち、その歌の数々をその時々の自身も交え聴かせておくれ。愛情のこもった<罵詈雑言>という名の称揚で迎える準備は、いつでもしておくから。

■公演情報
銀杏BOYZ
特別公演『東京の銀杏好きの集まり』
2016.8.17 @中野サンプラザ

<セットリスト>
1. 人間
2. 生きたい
3. 若者たち
4. 大人全滅
5. YOU & I VS.THE WORLD
6. 佳代
7. べろちゅー
8. 骨
9. 夢で逢えたら
10. I DON'T WANNA DIE FOREVER
11. BABY BABY
12. 漂流教室
13. 新訳 銀河鉄道の夜
14. 光
15. ボーイズ・オン・ザ・ラン
16. 僕たちは世界を変えることができない
Encore
En-1. 夜王子と月の姫
En-2. ぽあだむ
En-3. 愛してるってゆってよね

文=池田スカオ和宏(LUCK'A Inc.)

最終更新:8/30(火) 18:02

リアルサウンド

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。