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友川カズキが語る、歌詞の制作風景:「言葉の表現なんて虚構合戦みたいなもん」

ローリングストーン日本版 8/30(火) 17:00配信

ローリング・ストーン2016年6月号掲載
言霊を宿した詞:友川カズキ

肉体の内側からえぐり出し、身体性を伴った言葉には魂が宿る。そんな"生"の言葉を紡ぐアーティスト。彼らが作り出す歌詞の制作風景を辿る。

【写真あり】友川カズキが語る、歌詞の制作風景:「言葉の表現なんて虚構合戦みたいなもん」

秋田で生まれ育ち、東京に出て来てからは飯場を転々として生きてきたという友川カズキ。音楽デビューしてからも、川崎のアパートに住み、競輪を友として生活している。友川の紡ぐ歌詞は、そうした彼の生き様のようにヒリヒリとしている。

―川崎に住まれてもう長いんですよね?

もう40年だね。その前は飯場を転々と・・・言葉とは程遠い世界だよね(笑)

―でも、若い頃から詞、文章は書いていらしてたんですよね?

書いてたけど、それはただのメモ。単なるメモは表現にならないから。表現にするには良い意味で作為的にならないと。つまり虚構ですよ。言葉の表現なんて虚構合戦みたいなもんですよ。

―単なるメモを、表現にするには何が必要だったのでしょう?

第3者の視点。それを持てたのは20歳を過ぎてから。自分と距離を置いて俯瞰で、自分で自分を見れるかどうか。そんなの飯場を転々としてる時は無理だよ。日々追われて、俯瞰でモノを見るスタンスなんてないから。人にぶつかっていかないと出来ない。

友川カズキ「自分の言葉も、他人の言葉も疑ってしかるべきだと思ってる。」

―『生きてるって言ってみろ』は21歳の時に書いた歌ですよね。

そうだね。秋田のコンサートへ行く車の中で出来た。昼間から呑んで酔っ払って、ギターを持って座席で即興で演ってたらこの曲が出てきちゃって。今夜のステージでやってみっかと思って、車中で2番まで作ったの。

―"生きてるって言ってみろ"は強烈な言葉ですが。

みなさん"俺に向かって歌ってる"って勘違いするけど、自分自身に向けてるんです。つまり檄文。自分でケツ叩いてんのよ。今のままじゃくだらないぞって。1ミリでも前に行く方がいいって話よ。ジタバタ、ただ地団太踏んでるんですよ。俺の好きな言葉は"出たとこ勝負"だから(笑)

―『武装に足る言葉など無いのだ』という唄も大好きなんですが、友川さんは言葉の力をどんな風に捉えているのですか?

言葉は何かをなぞるひとつの輪郭でしかないのよ。言葉を信じるなんて今はないね。自分の言葉も、他人の言葉も疑ってしかるべきだと思ってる。人が発するわけだから完全無欠なはずがない。もちろん言葉は大事だけど、その程度のものですよ。

―それでも、言葉にかぶれる時や、言葉に触発されることもあるわけで・・・。

それはある。石原吉郎の詩の"死であるためには 既に生涯が欠けていた"という一節にいたく感銘を受けて、最近ライヴで"生きてるって言ってみろ"を歌う前にこの言葉を語るんです。彼だけじゃなくて、北村透谷、大杉 栄、辻 潤といった詩人が好きなんだけど、それは言葉じゃなくて彼ら自身が響くんだよね。

Kazuki Tomokawa
友川カズキ ◯ 1950年、秋田県生まれ。歌手のほか、詩人、競輪愛好家、酒豪としても知られる。85年の初個展以降は画家としても活躍。74年のデビュー以来、30作を超えるアルバムを発表。2010年に映画『花々の過失』が公開、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭にてSound and Vision Award受賞。2015年には自伝的エッセイ『友川カズキ独白録』が刊行された。今冬、ニューアルバムをリリース予定。http://kazukitomokawa.com/j/

Joe Yokomizo

最終更新:8/30(火) 17:00

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