ここから本文です

藻谷浩介と考える「里山資本主義」の今――風評被害を克服する福島日本酒の戦略

HARBOR BUSINESS Online 8/30(火) 9:10配信

アベノミクスの恩恵は、都市部や大企業が中心で、地方や中小企業にはほとんどまわってきていない。特に、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の経済的復興はまだこれからだ。HBOは、エコノミスト・藻谷浩介氏の講演ツアーに同行して東北復興の“現場”を歩き、地域の特性を活かした「持続可能な経済」について考えた!

◆【福島】風評被害を乗り越え、新潟を抜いて「日本酒日本一」に

「『勤勉・実直』という美徳を持つ東北人の中でも、特にその資質が高い」と、藻谷浩介氏が絶賛するのが福島県人だ。

「以前、福島県産米の全量全袋検査の様子を見たんです。丁寧に心を込めて作業をしていました。『ああいう真面目な人たちがやっているから大丈夫』という信頼感が湧いてきました」(藻谷氏)

 そんな福島県で訪ねた企業は、創業250年を迎える「笹の川酒造」(郡山市)。日本酒だけではなく「チェリーウィスキー」をはじめ焼酎やリキュール、オリジナル焼酎の製造委託など、さまざまな種類の酒を造っている。

 昨年4月に襲名したばかりの10代目当主・山口哲蔵氏は、「福島県は、今や日本酒の金賞を一番多く取っている都道府県なんです」と語る。

「福島県酒造組合の中に『清酒アカデミー』専門学校を設立して、高度な酒造りが勉強できるようになり、技術レベルが向上したからでしょう」

 校長は酒造組合の理事長が務め、地元の酒造業の社員でもオーナーでも、学生になることができる。そしてあちこちの蔵を見学しながら3年間みっちり勉強するのだという。

「実は、酒造学校が新潟にあることがわかったので、そこを参考に作りました。後追いしたわけですが、受賞数では新潟を追い越しました」(山口氏)

◆福島県産の素材を使った新商品を続々と開発

 しかし、原発事故直後は“風評被害”のため売り上げが激減したという。

「例えば、福島県産米の全袋検査では、現在の基準値超えはゼロになっているのに、悪いイメージばかりが先行している」(藻谷氏)

 また、福島県産の酒が福島県産の原料を使っているとも限らないのだが、「福島産の酒」というだけで忌避する消費者もまだ多い。そんな状況の中、笹の川酒造は地元農産物を使った新商品の開発を続けている。今年3月には福島県三春町の農家が作ったブルーベリーでリキュールを製造、地元JAの直販所で販売した。5月には約30年ぶりに「地ウイスキー」の原酒蒸留も再開。3年後を目標に、自社原酒による商品化を目指す。「『笹の川酒造』の販売額は、何とか震災前と比べて約2割減までには回復しました」(山口氏)

 風評被害で落ち込んだ販売額を埋め合わせ、さらに震災前以上の復興を目指しているのだ。

「福島は食の都。震災前はコメの収穫量が全国4位でした。勤勉実直な福島県民は全袋検査やカリウム散布など、さまざまな努力を行っている。彼らの努力が実を結び、風評被害払拭とともに、震災復興の大きな原動力となっていくことは間違いない」(藻谷氏)

【藻谷浩介氏】

’64年、山口県生まれ。日本総合研究所調査部主席研究員。著書に『デフレの正体』、共著書に『里山資本主義』など。NPO法人「コンパス 地域経営支援ネットワーク」の理事長も務める

― エコノミスト・藻谷浩介と考える「持続可能な地方経済」 ―

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/30(火) 9:10

HARBOR BUSINESS Online

Yahoo!ニュースからのお知らせ