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「安倍流人事」読売・産経が肩入れ

月刊FACTA 8/31(水) 0:55配信

「安倍流人事」読売・産経が肩入れ

恐るべき内閣改造・自民党役員人事の舞台裏。安倍政権に都合のいい話は、あの2紙にしか出てこない!

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「日本の未来を切り開く。これが新たな内閣の最大の使命だ」。安倍晋三首相は8月3日夜、内閣改造・自民党役員人事を受けた記者会見で強調した。「長年、政府や党で政策を磨いてきた十年一剣の人材ばかり。その能力を安倍内閣の次なるチャレンジのため、思う存分、生かしてほしい」とエールを送った。

「骨格維持」と「党内融和」。今回の人事は二つの言葉に収れんするといっていい。

内閣では、要となる菅義偉官房長官、麻生太郎副総理兼財務相、岸田文雄外相を留任させた。それを支えるのは官房副長官として首相に仕えた2人の側近。一億総活躍相を続投する加藤勝信氏は政権が目玉とする「働き方改革」を担う。経済産業相に就いた世耕弘成氏は、ロシアとの経済関係強化に向けたパイプをつくってきた。北方領土問題の解決に向けて、経済協力も含めた多角的なアプローチをめざす思惑もあるのだろう。

閣僚経験がない約70人の「入閣待機組」からは8人が初入閣した。各派閥からまんべんなく起用。中には細田派の松野博一文部科学相(当選6回、衆院千葉3区)や二階派の今村雅弘復興相(当選7回、衆院比例九州)のように、当選回数こそ多いものの、ほとんど無名に近い人もいる。

世論受けしないことを覚悟で入閣を決めたのは、ポストが回ってこないことへの党内の不満解消が急務だったからだ。7月の参院選で勝利し、参院でも27年ぶりに単独過半数を回復した今、民意におもねる必要はない。まずは党内のガス抜きを優先したというわけだ。

■ポストを選ぶ傲慢な石破

党役員では、幹事長にケガで入院中の谷垣禎一氏に代わり二階俊博氏を起用した。首相は谷垣氏の党運営を評価し、続投を望んでいたが、谷垣氏が固辞したため方針転換を余儀なくされた。

二階氏には「カネと権力への執着がすさまじい」(党関係者)として、中枢に置くことに否定的な意見も多い。しかし、首相は記者会見で二階氏を「自民党で最も政治的技術をもった人だろう」と持ち上げた。与野党問わず幅広い人脈を持つ二階氏の手腕に期待しての発言だ。

首相が悲願とする憲法改正は、野党側の協力をどう取り付けるかが成否のカギを握る。また2018年9月の自民党総裁任期の延長は、党内の理解が不可欠だ。二階氏の起用はこうした事情をくんでのこと。二階氏はさっそく総裁任期延長に向けて前向きな発言を繰り返す。

「安倍は2020年の東京五輪まで首相を続ける腹だ」。永田町では、こんな見方が定着しつつある。第2次安倍政権発足後、組閣は今回で5回目。首相の人事の巧みさは回を追うごとにすごみを増しつつある。

一方で、お粗末ぶりが露呈した政治家もいる。ポスト安倍を狙う水月会(石破派)会長、石破茂前地方創生相だ。

首相から留任の要請を受けたものの固辞。「農水相のポストではどうか」と代替案を出されたがこれも断った。石破氏は15年の前回の内閣改造時も一度、留任要請を断っている(のちに撤回)。「ポストを選ぶ傲慢な石破氏」(党中堅)のイメージはいよいよ定着した。

側近の「離反」にも遭った。石破氏の閣内残留を断られた首相は、石破派の番頭格である山本有二氏を一本釣り。改造前日の2日夜に、石破氏が断ったポストだとわざわざ紹介したうえで、農水相への入閣を打診した。折しもこの前日の1日は、山本氏が企画した会合で、石破氏が自らの政権構想を披露したばかりだった。

山本氏は06年の第1次安倍内閣の誕生時に、安倍氏を支持する「再チャレンジ支援議員連盟」の会長を務め、若手議員の票集めに奔走。第1次安倍内閣で金融相に就任した。自らは崇教真光の信徒で、憲法改正運動を展開する「日本会議」の国会議員懇談会の中心メンバーの一人だ。安倍氏とは近い。

山本氏の入閣は、石破派内の不協和音も生んだ。派内では当選4回の平将明元内閣府副大臣の登用を望む声があったからだ。「なぜ一度大臣を務めた当選9回の山本さんなんだ……」。派内ではこんな不満が漏れる。首相の分断工作は成功した。

■日本版人民日報だから?

意趣返しも続いた。石破氏がかつて就いた防衛相には、政調会長から当選4回の稲田朋美氏を回した。中国や韓国のメディアは「戦犯裁判を否定する右翼の政治家が防衛相を任された」(聯合ニュース)として反発したが、首相が意に介す様子はない。将来の首相候補として、安保分野の知識をつけさせたい思いが透けて見える。

石破氏は閣僚退任時の記者会見で「国民が違うんじゃないかと思うことが出て、自民党内から何も異論が出ないのはおかしい」と語り、政権に外からもの申す姿勢を鮮明にした。ただ、しばらくは表舞台には上がってこれないとの見方がもっぱらだ。

好対照な首相と石破氏。こうした演出に大きく貢献をしているのが、「安倍シンパ」とされる読売新聞と産経新聞だ。

読売新聞には、谷垣氏のケガの病状を心配する首相のこんなエピソードが登場する。

「首相は今週に入り、谷垣氏が入院中の病院に自筆の手紙を届けさせた。そこには『谷垣幹事長にお支え頂き本当に感謝申し上げます。一日も早く回復し、戻ってきてください』と、感謝の気持ちがつづられていた」(8月4日付朝刊)

一方の産経新聞。傲慢といえる石破氏の振る舞いを生々しく描いている。

「それでも安倍は石破を再任するつもりだった。だが、安倍の直談判を受けた石破は『下野』をほのめかしつつ、閣内に残る条件を突きつけた。『財務相か外相なら残ってもいい』。法外とも言える要求に、安倍は『農林水産相はどうか』と提案したが、石破は首を縦に振らなかった」(8月4日付朝刊)

いずれのエピソードも首相以外の側から出ているとは考えづらい。「政権に都合のいい話はあの2紙にしか出てこない」と大手マスコミの幹部は自嘲気味にこう話す。

産経は一連の人事を巡る検証記事を「後継者を考える時期にさしかかった安倍だが、巧妙な差配をまねできる後継者は当面出てきそうもない」と締めくくった。官邸と進める二人三脚の世論形成。在日中国人の政界ウォッチャーはこう皮肉っている。「読売、産経は日本版人民日報だから」。

ファクタ出版

最終更新:8/31(水) 0:55

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