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【ド軍番米国人記者の眼】前田の一時的マイナー降格の背景。出来高に絡んだ球団側のビジネス的意図も?

ベースボールチャンネル 8/31(水) 11:00配信

ルールを巧みに利用し、休養日を1日増やすことに成功

 驚きの指令が下された。メジャーリーグ、ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、前田健太のことを「クレイトン・カーショウに並び、チーム屈指の安定した投手」と評価したその2日後に、その前田をマイナー降格させた。

 前田が不振に陥ったからではない。だが、球団幹部にも責められない事情があったのだ。彼らは、ロースター枠を温存するという、MLB規約の抜け穴を巧みに利用しただけなのだ。

 現段階のナショナルリーグにおいて、前田よりも白星が多い投手は、わずか6名。さらに前田の防御率(3.38)は14位、ルーキー投手に限定すればナリーグ首位だ。なのに、なぜ彼を、降格させたのか。

 その答えは、ルールブックをめくれば明らかだ。

 18歳から21歳の選手が大半を占めるアリゾナリーグ。そのシーズンは先週日曜(現地時間28日)で幕を閉じた。通常メジャーリーグの選手がマイナー降格すると、最低10日間はメジャー昇格ができないが、マイナーリーグの選手は、ロースター内にいれば、シーズンが終わった直後からいつでもメジャーに復帰可能なのだ。

 その間、ドジャースにはロースターに1枠、空きができることとなり、さらに、前田には1日余分な休養日が与えられる、一石二鳥の裏技となった。マイナーリーグに所属となった前田は、この間ドジャー・スタジアムでの練習は認められないが、実際にアリゾナまで足を運ぶ必要もなかった。

 今回の決断にあたり、前田の反応について、ロバーツ監督は「彼は状況を理解してくれた。問題ない」と語っている。

 予定どおり月曜(現地時間29日)にはドジャースに合流、コロラド・ロッキーズ戦に早速先発して、5回2失点で8敗目を喫した。メジャーリーガーという肩書きを3日間失う以外には、特別変化はない。

ビジネス的配慮はなかったか?

 しかし、果たして前田は肩書き以外に、本当に失うものはないのだろうか。

 ここで、ドジャースと前田の8年契約の詳細を整理したい。基本年俸は、300万ドル(約3億500万円)だが、今シーズンすでに出来高ボーナスを515万ドル(約5億2500万円)を稼ぎ出している。仮に残りのシーズンを中4日で登板していけば、今季合計登板数は32試合となるが、実はこの数字がカギとなる。前田はシーズン30試合登板を達成すると150万(約1億5000万円)ドルのボーナスが支払われることも契約に盛り込まれているが、そもそも32試合以上に先発し、200イニング以上を投げた場合、開幕ロースター入りのボーナス15万ドル(約1640万円)を加え、満額の出来高を獲得できるからだ。

 2年前の例を挙げよう。リリーフ投手だったクリス・ペレスは、2014年9月21日時点で、49回目の登板を果たしていた。この時の契約では、ペレスには50試合に登板すると50万ドルのボーナスが支払われることとなっていた。本人はケガもせず、十分に試合に出られる体調ではあったものの、その年、彼が残りの6試合に起用されることはなかった。

 前田に関しても、ドジャースはこの時と同じようにそろばんを弾くはずだ。シーズン31試合の登板を150万ドルを支払うのと、32試合を達成し300万ドルに加えて満額の出来高を支払うのと、どちらが得か、と。

 前田のチームへの貢献度だけを見れば、その答えは明確なはずだが、ドジャースは資金の潤沢な球団であるとはいえ、財布の紐は固い。避けられる支払いは、徹底的に避けるはずだ。今回、球団がすでにビジネス的に前田の起用法を検討していることが明らかになった。シーズン終盤にむけて、前田に通常では不可解に受けまた似たような“ビジネス的配慮”が背景に隠れている可能性は高い。

 もし残りのシーズンで、前田の活躍を応援するためにドジャー・スタジアムへ出かけようと計画するのであれば、安易に予定を組まないほうが良い。今回、前田がマイナー降格したのは週末だった。これを1つのヒントに、残りの前田の登板数を指を折って数えて見るべきだろう。


J.P ホーンストラ、翻訳:阿部寛子

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:8/31(水) 11:00

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