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住宅ローン金利が当面上がらない理由

Wedge 8/31(水) 12:30配信

 住宅ローン債務者は全国で1200万人いますが、マイナス金利の影響で約半数の600万人が借り換えで100万円以上お得になると言われています。住宅ローン債務者は一度見直しをされてみてはいいのかも知れません。

 でも、借り換えるのであればどの金利がいいのでしょう?ネットで見かける情報は「固定金利が下がっているので、金利上昇リスクがない固定金利がお得」というものです。でも、それって本当なのでしょうか?そもそも、金利は今後上がるのでしょうか?

「金利上昇=即、住宅ローンの金利上昇」のウソ

 銀行は住宅ローンを貸し出す際、ユーザーに貸し出す金利(適用金利)を下記の計算ではじき出します。

 適用金利=基準金利-引き下げ幅

 基準金利はここ20年ほど多くの銀行が2.475%を維持しています。でも、住宅ローンの適用金利が下がっているのは……そう、引き下げ幅を拡大しているからです。引き下げ幅はディスカウントだと思ってください。この引き下げ幅は融資時に確定し、完済まで維持されます。

 通常の感覚であれば、基準金利を引き下げて対応するように思えますが、なぜ銀行はそうしないのでしょうか? 基準金利の変更は銀行全体の収益に大きな影響を与えるからです。基準金利を下げると過去に借りた人の適用金利も下がりますし、基準金利を使用する法人向け融資も適用金利が下がります。そうならないように引き下げ幅をちょこちょこいじって、この20年間、金利低下局面に銀行は対応してきたのです。

 じゃぁ、金利上昇時はどうなるかって? まさにこの逆が起こります。引き下げ幅を徐々に縮小し、ゼロになるタイミングで基準金利が上がり始めます。変動金利を借りている人の月返済額が上がり始めるのは、実はそうなってからなのです。金利上昇するとすぐに返済額が上がるというイメージが強いですが、必ずしもそうではないということをご認識下さい。

量的緩和の幕引きにはまだまだ時間がかかる

 金融市場で金利上昇し始めたとしても、住宅ローンの適用金利引き上げまでに相応のタイムラグがあるということがわかりましたが、最初の引き金となる金融市場での金利上昇はいつ頃なのでしょうか?

 まず、参考となるのが米国の事例です。米国では2008年から400兆円規模の量的緩和を実施し、緩和縮小の2年後に利上げを実施しました。一方、日本も400兆円規模で量的緩和を実施しています。もし仮に明日から緩和を縮小して利上げに向かうとしても、アメリカの事例から類推すれば利上げまで2年はかかるはず。

 なお、執筆の現時点では量的緩和は続行とのことですので、止めるどころかまだまだ緩和し続けるスタンスです。また、自民党の安倍総裁・日銀の黒田総裁の任期はあと2年ほどあります。次の政権下で緩和を止めて利上げに向かうストーリーを想定すれば、利上げまで最短でも5年程度かかる可能性があると言えます。

リスクヘッジばかりに囚われていると無駄なコストを払い続ける羽目に

 適用金利上昇までタイムラグがあること、量的緩和の幕引きに時間がかかること、これらを踏まえると相当な期間、低金利が維持されると想定されます。だとしたら、変動金利よりも高い金利を払わされる固定金利を選ぶ意味合いは正直無くなってしまいます。

 金利上昇リスクを回避することは非常に重要です。私自身もこれを全否定するつもりはありません。ただ一方で、そのリスクヘッジには必ずコストが発生します。コストを払ってでもヘッジすべきリスクが本当にあるのか、その点をよくよく考えて頂いた上で最適な金利タイプを選んで頂きたいと思います。

塩澤 崇

最終更新:8/31(水) 12:30

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