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iPS細胞から10年 芽吹き始めた再生医療ビジネス

マネーポストWEB 9/1(木) 16:01配信

 医療分野での発展に大きく寄与することが確実視されている再生医療。その将来的な可能性はビジネスの分野でも大きな注目を集めている。

 再生医療とは、身体の組織が欠損状態や機能障害に陥った場合、幹細胞(細胞を供給するもととなる母細胞)などを用いることにより失われた機能を再生させる医療だ。そして、これに深くかかわっているのが幹細胞だ。幹細胞は私たちの血や臓器や皮膚の成長する元となり、失われた細胞を再び生み出す能力を持っている。

 元々私たちの命は受精卵から始まり、受精卵が細胞分裂を繰り返すことで体ができている。そして、受精卵から分裂して出来た幹細胞が、毎日細胞分裂を繰り返し、失われた細胞を補充しているのだ。そして、決まった組織で細胞分裂を繰り返した幹細胞は受精卵時代の「何にでもなれる」能力を失ってく。

 つまり受精卵は幹細胞の母といえる。その受精卵が数回分裂して得られるのがES細胞(胚性幹細胞)であり、受精卵を擬似的に目指したものがiPS細胞(人工多能性幹細胞)というわけだ。

 ES細胞は受精卵そのものを使うため倫理的問題を抱えているが、何にでもなれる細胞として各方面で研究が進められている。特に外国では、そのコストからiPS細胞よりも主流だという。

 一方、2006年に京都大学の山中伸弥教授が作製に成功した「夢の万能細胞」と呼ばれるiPS細胞は、皮膚などから採取される幹細胞に細胞を「初期化」する遺伝子(山中因子)を導入することで、「何にでもなれる力」をとりもどすのだ。

 iPS細胞市場には大手製薬各社が進出し、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)や理化学研究所とタッグを組みながら研究が進められており、しかも政府がバックアップするといった活況ぶりだ。

 例えば、がん免疫療法に関する研究では、製薬国内最大手の武田薬品工業、アステラス製薬、再生医療で先行する大日本住友製薬、協和醗酵キリンといった大手製薬企業がCiRAと共同研究を進めている。

 再生医療の研究試薬の国内トップ、タカラバイオはヒトiPS細胞を販売する海外企業を買収し心筋細胞や膵臓細胞を販売する。また富士フイルムホールディングスは再生医療製品を販売するジャパンティッシュエンジニアリングを子会社化した。

 再生医療に可能性を見出しているのは医療業界だけではない。美容医療業界でもアンチエイジングや薄毛改善、豊胸など幹細胞を使った様々な商品が開発され、あるいはすでに売り出されている。

 iPS細胞を使った毛髪再生では資生堂がカナダのバイオベンチャーと技術提携して研究を進めていることで有名だが、実用化は2020年となる見通しだ。

 一方、既に商用化されているものもある。例えばヒザ軟骨の再生や、美容クリニックでは脂肪幹細胞が、豊胸や顔のアンチエイジング向けの脂肪組織の増大に実用化されている。

 再生医療を使った豊胸の費用は、自由診療であるがために100万円を超えるケースがほとんどだが、乳がん摘出後の乳房再建に貢献できる他、美容目線でも従来の脂肪豊胸と違って「しぼまない」効果が得られるという。

 また、脂肪幹細胞が分泌する「ヒト由来幹細胞培養液」は肌の自己再生能力を引き出すアンチエイジング美容液として注目されている。

 夢の万能細胞iPS細胞の誕生から早10年が経ち、様々な再生医療ビジネスが芽吹いてきたが、この先数十年で驚くような医薬品や美容法が生み出されることになるだろう。

文■小池麻千子(グローバルリンクアドバイザーズ):アナリストとして企業リサーチを担当。訪問企業は海外企業を中心に多数。企業訪問・分析で培ったファンダメンタル分析を用いたボトムアップリサーチによる銘柄選定を得意とする。

最終更新:9/1(木) 16:01

マネーポストWEB

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