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「食卓のマグロに逆風?」なのはどっちだ

オルタナ 9/1(木) 14:24配信

「ソーシャル・イノベーション・マガジン」を標榜する弊誌「オルタナ」は、これまで農業や林業などの第一次産業の現場を伝える記事を多く発信してきた。日本の第一次産業こそソーシャル・イノベーションの舞台であるべきという思いからだ。(オルタナ編集長・森 摂)

そして、遅ればせながら、次号・46号(9月末、全国の書店で発売予定)では初めて「漁業」の第一特集を組む。現在、編集部や外部執筆者の皆さんが鋭意取材中だ。

そんな中、8月29日、福岡市で太平洋クロマグロ漁を巡る国際会議(正式名称は「中西部太平洋まぐろ類委員会の小委員会」)が開幕した。

世界のクロマグロ消費量のうち、日本は実に8割、ウナギは7割(うち7割が大手スーパーや飲食チェーン)を占めるなか、日本の水産庁は、実効性のある漁業規制を打ち出せてこなかった。

これも遅ればせながら、今回の会議で日本は自らの漁業規制案を提案した。だが、「生後1年未満の漁獲量が3年続けて低水準だった場合」という、なんとものんびりした内容で、参加国の賛同は得られそうにない。

ところで、それを報じる8月30日付け新聞記事の見出しを見て、驚いた。

「食卓のマグロに逆風?」

「ウナギ・サバを含め規制強化の動き」に対しての見出しだが、マグロにとっては規制強化は「順風」のはず。日本では結局、漁業者や流通業者の目先の利益視点になりがちであることを、図らずも浮き彫りにした見出しだった。

さて、次号の第一特集では、勝川俊雄・東京海洋大学准教授にも寄稿頂いた。日本の漁業研究者の中では、この人が間違いなく第一人者だ。そのコラムの一部を紹介しよう。

勝川さんの見出しは「なぜ日本の漁師は、魚が大きくなるまで待てないのか?」。

(ここから引用)
日本では漁業の生産性が低く、新規参入が何十年も途絶えて、漁村の過疎化と高齢化が進んでいる。日本国内だけを見ていると、漁業に未来は無いように見えるのだが、海外では先進国・途上国ともに漁業は利益を生む成長産業になっている。
(中略)
漁業が成長している国と衰退している国の違いは、漁業政策の差で説明できる。高い成長が見込まれているノルウェー、ニュージーランド、南アフリカなどは、漁業の生産性を維持するための厳しい漁獲規制が導入されている。

水揚げして良い最小サイズを設定することで、未成魚の保護している。控えめな漁獲上限を設定して、十分な親魚を残した上で、経済的が高い大型の個体を旬に漁獲している。漁獲規制があるために、安定して利益が出せる仕組みになっているのである。

日本では漁業者が好きなだけ魚を獲れる仕組みになっている。十分規制が無いことから、大きな魚を獲り尽くして稚魚が漁獲の中心になっている漁業も少なくない。クロマグロや、ニホンウナギや、ホッケなど、明らかに乱獲状態にあるにも関わらず適切な漁獲規制がされずに、資源が枯渇している。(引用終わり)

ーーこの続きはオルタナ本誌46号を参照頂きたいが、要は日本の漁業は「獲りすぎ」で自らの首を絞めている構図なのだ。

それなのに目先の利益にとらわれて、自己規制できない状況が何十年と続いてきた。国内事業者の声に右往左往して、断固とした姿勢を示せない水産庁も問題だ。

いま東京は築地市場の移転問題が再び注目されているが、この市場を将来的に生かすか殺すかは、実は水産政策に掛かっている。

そして、メディアも消費者も「日本漁業に海外の政府やNGOが圧力を掛けている」などという近視眼的な視点に惑わされず、真に持続的な漁業を育てるべく、日本漁業を応援していくべきではないだろうか。そのためには、しばらくは食べたくても我慢する姿勢も大事であり、しっかり待てば、必ず食べられる日が来ることを知っておいた方が良い。

最終更新:9/1(木) 14:24

オルタナ

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