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落合GM「野球人生を変える」。個人タイトル獲得の鉄則は、逃げるが勝ち

ベースボールチャンネル 9/1(木) 11:00配信

タイトル争いの定義

 今季のプロ野球も残り30試合を切り、ペナントの行方とともに個人タイトル争いも何人かの候補者に絞られてきた。8月31日の時点で、本塁打はセリーグが37本の筒香嘉智(横浜DeNA)と33本の山田哲人(東京ヤクルト)、パリーグはエルネスト・メヒア(埼玉西武)とブランドン・レアード(北海道日本ハム)が30本で並ぶ。打点はセが新井貴浩(広島)の91を筆頭に、山田と筒香、ウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト)が88、続いて82の丸 佳浩、鈴木誠也と広島勢にも可能性がある。パは91の中田 翔(北海道日本ハム)を、88のメヒアや87のアルフレド・デスパイネ(千葉ロッテ)が追う。

 登板数や試合の勝敗も関係してくる投手のタイトル、打率や防御率のように数字が上下するタイトルは運にも左右されると言われているが、数字を積み上げていく本塁打、打点、盗塁などは、ある程度まで限られた選手によるタイトルレースである。

 現役時代、常にそうしたタイトル争いを繰り広げ、3度の三冠王をはじめ、首位打者、本塁打王、打点王を各5回手にした中日ドラゴンズの落合博満GMは、タイトル争いをこう定義する。

「最も高い実力を備えた選手が獲るのではなく、その年に一番多く数字を積み上げた者の頭上に輝く。それがタイトルだ」

 つまり、本塁打を量産する力なら、シーズン60本塁打をマークした経験のあるバレンティン、あるいは現役最多の373本塁打を放っている阿部慎之助(巨人)ということになるのだろうが、今年の本塁打王は筒香か山田だ。

 仮に、筒香の本塁打数が40に届かなかったとしても、シーズン最多ならタイトルを手にできる。反対に、バレンティンが60本をマークした2013年なら、59本塁打でもタイトルは獲れなかったのだ。

鉄則は『逃げるが勝ち』

 一定の基準を超えるのではなく、陸上競技のように一番にならなければいけないタイトル争いには、やはり獲るコツがあるのだと落合は言う。

「ひと言で表現すれば『逃げるが勝ち』。トップに立っているほうが、二番手、三番手から追いかけているより圧倒的に有利。これはタイトル争いの鉄則と言ってもいい」

 ペナントレースでも、僅差の争いが展開されると“追う立場の優位性”を唱える人がいる。トップに立てば大きなプレッシャーの中でプレーを続けるから、追う立場よりも体力、メンタルともに消耗が激しいというのが大きな理由だが、落合はやんわりと否定する。

「まず、その日の試合で死球を受けてリタイアしたら、二番手の選手は絶対にトップになれない。トップにいれば、二番手の結果次第ではその座を守れるかもしれないでしょう。たとえ1本の差だとしても、二番手がトップに並ぶには1本、単独でトップになるには2本打たなければいけない。日に日に緊張感が増し、体力的にも疲れていく中で、打たなければ抜けないというのが一番キツいんだよ。だからこそ、シーズン途中でトップに立ち、二番手との差がついている時でも気を抜かず、打てる時に打っておくことが大切なんだ」

 ロッテ時代の1986年には秋山幸二(当時・西武)とハイレベルな本塁打王争いを演じ、41本の秋山に対して50本塁打でタイトルレースを制した。また、夏場に原因不明のスランプに見舞われた中日時代の1990年は、池山隆寛(当時・ヤクルト)をはじめ数人による大混戦となった。だが、メディアに注目され、毎日のように候補者として名前を挙げられたことでペースを乱した何人かが脱落し、池山とのマッチレースになると、常にリードを保った落合が34本で逃げ切り。池山も健闘したものの31本だった。

「その前年は40本打ったのに、42本のラリー・パリッシュ(当時・ヤクルト)にタイトルは持っていかれた。でも、この年は34本でも獲れる。それがタイトル争い。中でも本塁打と打点は、獲り方を知っている人間が圧倒的に有利なんだ」

 そして、タイトルを手にすることの価値を説く。

「タイトルは野球人生を変える。だからこそ、必死になって獲りにいかなきゃいけない」

 落合が繰り広げたようなワクワクするタイトル争いを今季も見たいものだ。


横尾弘一

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:9/1(木) 14:06

ベースボールチャンネル

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