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日本以上の「社畜文化」を描くまで──『未生』は韓国社会の縮図 原作者ユン・テホ氏ロング・インタビュー[後編]

Book Bang 9/2(金) 11:00配信

『未生 ミセン』の魅力にはまり、ソウルにまで一人ロケ地ツアーに出かけてしまうほど、作品の大ファンだという古家氏。韓流イベントのMCやラジオDJ・テレビVJとして活躍する氏の「独自の目線でどうしてもインタビューしたい」という思いが通じ、この度、ソウルで著者 ユン・テホ氏へのインタビューが実現。韓国のウェブコミック・WEBTOON(ウェブトゥーン)で大ヒットし、コミックスは累計200万部を突破。ドラマ版も社会現象を巻き起こした本作の誕生秘話を紹介した前編に続き、後編ではドラマ化への思いや漫画家への道、日本の漫画への思いなどを紹介します。

ユン・テホ
1969年、韓国・光州生まれ。1993年『緊急着陸』でデビュー後、さまざまな作品を発表。日本でも公開された映画『インサイダーズ/内部者たち』『黒く濁る村』はユン・テホのWEBTOON(ウェブコミック)が原作である。『未生 ミセン』は韓国にて圧倒的な反響を呼び数々の賞を受賞、その世界観を巧みに映像化したドラマ版は社会現象となった。

聞き手/古家正亨(ふるや・まさゆき)
ラジオDJ/テレビVJ/韓国大衆文化ジャーナリスト。帝塚山学院大学リベラルアーツ学部客員教授。北海道科学大学未来デザイン学部客員准教授。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。韓国および東アジアの文化を中心に、幅広いジャンルでの比較対象を研究。韓国観光名誉広報大使、韓国政府文化体育観光部長官褒章受章。

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──ドラマ化への思い

古家:ところで、この作品が韓国でドラマ化され、社会現象になり、多くの賞も受賞するなど、非常に高い評価を得ました。日本でも放送され、日本にも囲碁文化がありますし、商社文化もある、同じような“サラリーマン”生活もあるので、多くの視聴者が共感できたと思うんです。一般的な「韓流ドラマ」とは違う感覚で観ることができたという人も少なくなく、男性の視聴者も多かったのが特徴です。ユン・テホさんは、ご自身の原作をドラマ化する提案を受けた時に、どんな思いだったのでしょうか。

ユン・テホ:原作の漫画をご覧になるとわかると思いますが、特定の主人公だけをずっと追いかけるストーリーではないので、果たしてこれがドラマに適しているのかという疑問はありました。なぜかというと、ドラマというのは分かりやすいストーリーでないといけないからです。

でも、自分の作品が他の媒体を通じて発表されるのは、個人的にはとても嬉しいことでもあるので、迷わずにサインをしました。ドラマ化に当たって、事前にスタッフの皆さんと何度もミーティングを行いましたし、実際にヨルダンにも行ってみました。その映像化の過程は、とても楽しいものでした。

それから、日本で『未生』がリメイクされるという話を聞いた時は、商社文化が日本から韓国にもたらされたものでもあるので、文化的にも近いものがありますから、共感してもらえるのではないかと期待した一方、究極的に、契約社員に対する2つの国の見方の違いがあるので、その点では日本の方に共感していただけるのか不安がありました。

正社員としての就職がなかなか難しい状況の中で、仕方がなく契約社員として働いている人が多い韓国と比べて、今の日本では契約社員やフリーターとしても生計が立てられることもある分、正社員になることを自ら選ばない人も少なくないと聞きました。

そして、漫画やドラマに出てくる会社員たちは本当に一生懸命働いているのですが、その一生懸命働くということ自体が、日本では少し古い感性ではないだろうかという疑問があったんです。

韓国では会社員たちが自ら「自分は会社の奴隷だ」と言うくらい、犠牲が強要されている中で、作品の中で一生懸命働くサラリーマンの姿を描くことがむしろ「もっと努力しなさい」というメッセージとして伝わるのではないかという心配もありましたが、それが果たして、韓国よりも個人主義が進んだ日本の方に、どういう風に理解されるのかと。例えば、誰のために、何のためにあれだけ一生懸命働かなきゃいけないのかという疑問を持つのではないだろうかと。

日本のリメイク作品を、日本の方々がどういう風に思ってくださるのか、とても気になっています。

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最終更新:9/2(金) 11:00

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