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北朝鮮は大丈夫なの? --- 池田 信夫

アゴラ 9/2(金) 17:06配信

韓国政府によると「北朝鮮の金勇進副首相が処刑された可能性」があり、その原因は「会議で態度が悪かった」とのことです。これは未確認情報ですが、今までも金正恩党委員長が幹部を処刑する事件がたびたび起こっています。

このところ要人の亡命が相次ぎ、住民の公開処刑が増えるなど異常な事態が続き、韓国は「北朝鮮の政権は末期症状で自暴自棄になっている」と警戒しています。これから考えられることは、軍人のクーデタか、民衆の革命か、韓国に対する戦争です。北朝鮮の場合、民衆が暴動を起こす革命は考えにくいので、ありうるのはクーデタか戦争でしょう。

クーデタというのは軍が武力で金正恩を倒して権力を握ることで、テロで暗殺する場合もあります。韓国でも、昔はよく起こりました。軍が政権を取った場合、指導者の方針によっては韓国と和解する場合もありますが、戦争を起こすかもしれません。金正恩が生き残って、逆に軍を粛清する可能性もあります。

政権内の対立を「解決」するために戦争を起こすのも独裁国家ではよくあることで、北朝鮮はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)などの軍事力を誇示しています。北朝鮮では25ヶ所にミサイルが配備され、3~7分でソウルに着弾すると考えられています。

今のところまだ核弾頭は装備できないようですが、通常兵器でもソウルを「火の海」にすることはできます。南北の軍事境界線からソウルまでは40kmぐらいしかないので、迎撃して防ぐことは不可能です。もちろん米軍が報復すれば北朝鮮は消滅するので、それが抑止力になっています。

しかし何らかの理由で金正恩が追い詰められて先がないと思うと、「自殺攻撃」をすることはありえます。冷戦時代に核戦争が起こらなかったのは、ソ連が合理的な官僚機構で、「攻撃したら自分も全滅する」という相互確証破壊が抑止力になったからですが、失うもののない北朝鮮にはそういう抑止力はききません。

指導者が狂っていて何をするかわからない北朝鮮は、いわば大きなテロリストみたいな国なので、合理的な戦略は立てられません。韓国が攻撃されると、おそらく朝鮮戦争のとき以上の犠牲者が出るでしょう。多数の弾道ミサイルを発射したら、日本にも届く可能性があります。北朝鮮からは数百万人の難民が周辺諸国に押し寄せるでしょう。

どういう形になるかは予想できませんが、飢餓状態にある北朝鮮の政権が崩壊するのは時間の問題です。こういうときに「憲法9条を守れ」とか「安保法を廃止しろ」とか言っている人は、何を考えているのでしょうか。日本が憲法を守ったら、北朝鮮はおとなしくなるのでしょうか。

安保法制は、もともとこういう事態を未然に防ぐために日米防衛協力のガイドラインを改正し、防衛線を朝鮮半島まで拡大するものでしたが、公明党の反対で「グレーゾーン」の多い複雑怪奇なものになってしまいました。弾道ミサイルが飛んできたとき、それを迎撃できる時間は10分もありません。「憲法違反かどうか」などと議論している暇はないのです。

池田 信夫

最終更新:9/2(金) 17:06

アゴラ

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