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進化するテクノロジーと高まるサイバーリスクにどう向きあうか

Forbes JAPAN 9/2(金) 17:00配信

テクノロジーが目覚ましい進化を続ける昨今だが、どのようにビジネスに生かせばよいのか。今年6月、「Businnovare(ビジノヴェア)PwC Technology Day」に各分野の有識者たちが集まり、議論を交わした。



加速度的に進化するテクノロジーは、どんなビジネス・インパクトをもたらすのか。PwCコンサルティングが今年6月に開催した「Businnovare/PwCTechnology Day」では、昨今注目を集めているデジタル・サイエンスを中心に(1) IoT/IoE (Everything)の現状と将来像、(2) AI(人工知能)による意思決定の支援、(3) サイバーセキュリティの3つのセッションに分かれ、各分野の専門家や企業担当者をパネラーに、活発な議論が行われた。

新技術の活用について議論が交わされたセッション1では、企業がテクノロジーを活用する際の発想について、日米欧の違いを指摘する声があがった。

日本企業は、新しいテクノロジーを業界内の競争に生かそうとする傾向があり、既存製品・モノの性能向上という発想が強い。一方、欧米企業は「ユースケース」から出発し、業界を超えた新しいビジネスモデルを構築するのに活用するのだという。

パネリストたちは「成長性ではアメリカの発想のほうが高い」と言い、テクノロジー活用における日本と諸外国の視点の違いが、企業成長の結果の差を生んでいる実態が課題としてあがった。

企業の意思決定について議論したセッション2では、テクノロジーを取り込む上での、企業全体のマネジメントのあり方がテーマとなった。テクノロジーを企業の成長に生かすには、全体像を描くことと、技術の際を見極められる水先案内人が必要だという。今、事業会社のIT部門には何が求められているのか?

最新の知識はITのプロに外注できるため、事業会社のIT部門の業務はマネジメントが主と思われがちだ。だが、パネリストからは「外部サービスを取り込む場合でも、社内でガバナンスをきかせて情報システム部門として責任を持つことが重要」との声が上がる。

サイバー攻撃をテーマにしたセッション3でも、人材についての指摘があった。

日米欧で比較すると「欧米は『セキュリティは自分で守る』という自立型。各社がセキュリティ運用部門を構築し、人材を採用して育てている。日本は外部サービスを買うのが一般的であるため、ソフトとハードは欧米並みだが、それを運用する仕組み、知識、人材が足りない」と登壇者らは問題提起する。

IT業界内の人材の分布をグローバルで比較すると、日本ではITベンダーに偏っているのに対し、アメリカではユーザー企業に圧倒的に多いという。グローバル企業のIT部門からは「ITを内製化している米国のチームでは、技術が分かるため、よいものを探して選別することができる。事業側の要求を噛み砕いて理解し、事業と技術の橋渡し役になれるから、プロジェクトのスピードも速い。日本チームは、営業と技術が分断されており、橋渡し役を担えるリソースが課題」というコメントがあった。

ミスターIoTとして知られる東京工業大学の出口弘教授は、工学部の出身でありながら、京都大学では経済学部の教授をつとめた、異色の経歴の持ち主。企業がイノベーションを進めるには越境が必要だと話す。「学際的な問題意識を持った人が積極的に境界を超え、空気を読まず、縄張りを踏み荒らす。領域を外して、理論屋と実践屋がディープな議論を徹底してやるべき」と力を込めた。
--{意思決定をAIに任せられるか––}--
急速に進化するテクノロジーを企業はどう活用するのか?

■インターネット・オブ・エブリシング

高速インターネット回線の普及で注目されるのが、人や、あらゆるモノ・コト(Everything)をつなぐ「IoE」。これにより「従来にはないボトムアップの大変革が起きる可能性が高い」と出口教授は話す。例えば工場では、実際の製造プロセス管理と原価計算、製品ライフサイクル管理を融合するような絶え間ないカイゼンが可能になるという。その一方で、既存業界の垣根を越えた越境バトルロアイヤルが起きると予想され、より強いリーダーシップが求められるようになる。

<パネリスト>
・出口弘/東京工業大学 情報理工学院知能情報コース 教授
・津呂尚樹/シスメックス ソリューション推進本部 ネットワークソリューション推進部 部長
・村田聡一郎/SAPジャパン インダストリークラウド事業 統括本部 IoT/IR4 ディレクター
・今井俊一郎/ロード・ジャパン・インク マーケティング 営業本部 シニアマネジャー
・一山正行/PwCコンサルティング ディレクター
<モデレーター>
・松崎真樹/PwCコンサルティング パートナー

■意思決定

会議における意思決定や経営判断を、AI(人工知能)に任せられるかー。経営におけるDecision(意思決定)を、サイエンスやテクノロジーがどこまで支援、代替できるか、仕組みづくりや活用法について議論された。東北大学大学院の乾教授は、この問いかけに対し「機械学習やAIは、パターン・マッチの領域を出ていないため、戦略レベルの長期的判断は難しく、責任を負わせることはできない」と話す。一方、パネリストからは現状での実際の活用事例も紹介された。

<パネリスト>
・乾健太郎/東北大学大学院 情報科学研究科 教授
・河本薫/大阪ガス ビジネスアナリシスセンター 所長
・西脇資哲/日本マイクロソフト エバンジェリスト・業務執行役員
・西内啓/データビークル 取締役
・勝山公雄/PwCコンサルティング シニアマネージャー
<モデレーター>
・矢矧晴彦/PwCコンサルティング パートナー

■サイバー攻撃

IoEやAIは、高いビジネス効果が期待される一方で、新しい脅威やリスクにも直面している。サイバー攻撃分野の有識者は「すべての製品に脆弱性がある」と指摘する。AIなどの新技術をビジネスに応用する際、不適切な発言や、予期せぬ事態の発生は企業にとってのリスクとなる。一旦機能を停止した後に、どこで再開の判断をするかについての基準も必要だ。「事業継続性」のリスク、「誰の過失と責任になるか」という法的問題には、まだまだ議論の余地が残っている。

<パネリスト>
・大井哲也/TMI 総合法律事務所 弁護士
・須田真也/アステラス製薬 情報システム部長
・ジュゼッペ・コバヤシ/シマンテックコーポレーション(US) 日本担当チーフストラテジーオフィサー
・名和利男/PwC サイバーサービス 最高技術顧問
・星澤裕二/PwC サイバーサービス 最高執行責任者
<モデレーター>
・山本直樹/PwCコンサルティング パートナー

■エンタープライズ・テクノロジー・マネジメント

テクノロジー抜きには企業活動を維持できなくなる中で、未来の社会を変革するテクノロジー・マネジメントについて意見交換がなされた。特に大きなテーマとなったのが、人材育成と、パートナー・リンクだ。新技術を社内に取り入れ、競争力を強化するためには、自社の事業と高度な技術を熟知した人材が必要だという。パートナー・リンクについては、全体像を把握して進むべき方向を描き、水先案内人として導くパートナーとの連携の重要性が指摘された。

<パネリスト>
・桑本謙介/日本ヒューレット・パッカード ビジネスデベロップメントマネージャー
・唐木明子/PwCコンサルティング Strategy & パートナー
・豊國成康/PwCコンサルティング パートナー

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:9/2(金) 17:00

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