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こんな人間を出世させると、組織に悲劇が訪れる

JBpress 9/2(金) 6:15配信

 「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」

 西郷隆盛の言葉として引用されるこの言葉であるが、その原典は中国最古の歴史書、「書経」にあると言われている。

 この言葉を現代にあてはめれば、「功績のある者にはより高い給与を与えよ。人徳のある者にはより高い地位を与えよ」となるだろう。

 この言葉は「功績のある者でも人徳のない者には高い地位を与えてはならない」ということを意味する。

■ 仕事ができる人に潜む危険性

 私は経営コンサルタントとして様々な企業の相談を受ける中で、仕事ができるという理由で安易に部下を昇進させたことに対して、強く後悔している経営者をたくさん見てきた。

 もちろん仕事ができることは良いことである。ただ、仕事ができる人間はともすれば諸刃の剣ともなり得る性質を持っている。その背景に人間性が伴っていなければ、その人間はむしろ会社を崩壊に導く危険性をはらんでいる。

 仕事ができる人間には多くの仕事が集まり、重要性の高い仕事も任せられるようになる。そのため、組織としてその人間に対する依存度は高まっていく。それに比例して周囲も一目置くようになり、その人間の影響力は増していく。

 これが営業やマーケティングに関することであれば、売り上げの多くの割合をその人間に依存するようになるため、そういった状況になると社長ですらもその人間に対して強く言うことは難しくなる。

 このようにして、仕事ができる人間ほど善くも悪しくも社内で強い影響力を持つようになる。こういった状況でこの人間を昇進させることは、この影響力に対して会社がお墨つきを与えることを意味する。

 その影響力を公に行使することが可能となった時、その人間の本性が見え始める。

 あるメーカーでITに専門的な知識と経験を持った人間を採用した。彼は社内で特殊なITのスキルを絡めた新たなビジネスモデルを提案し、次々と顧客を開拓していった。気がつけば、そのビジネスの売上は会社全体の4割ほどを占めるようになり、それに比例して彼の発言力は増していった。

 社長は彼の実績を評価し、マネージャーに昇格させ、チームを持たせる。

 ところが、彼の人間性は決して優れたものではなかった。部下に対して高圧的な態度で臨み、罵倒したり、感情に任せて怒りをぶつけたりすることが多々あった。

 社長のもとには彼の部下から何度となく彼に対するクレームが寄せられ、社長自身も彼の目に余る行為は問題だと感じていたが、売り上げの4割を一手に担っている彼との関係が悪くなることを恐れ、その状況を黙認するだけだった。

■ 次々と退職するメンバー

 その結果、彼のチームのメンバーは次々に会社を辞めていった。そして、新たに人を雇って彼の下につけるが、短期間のうちに辞めていく。

 こういったことが続き、彼の下には人が定着せず、多額の採用コストだけがたれ流しとなり、この事業部の業績は悪化していった。彼はその原因を会社の体制の悪さにあると言い、あちこちで会社や社長に対する愚痴をこぼし、周囲のメンバーを巻き込んでいった。

 そして、会社全体の雰囲気までもが険悪になっていき、他のチームからも会社を辞める人間が出始めた。

 社長は意を決し、彼と話し合いの場を設け、彼の態度や行動を改めるよう強く注意した。彼は感情的になって反発し、その1週間後、社長に辞表を叩きつけた。

 その辞表を受け取った時、社長の心に浮かんだのは「売り上げの4割をどうするか」という焦りよりも、「何とか会社の危機を免れた」という安心感だったという。

 「1人の人間を採用したことで、会社がここまで危機的状況に陥るとは思わなかった。その原因は目の前の売り上げに気を取られ過ぎて、会社全体のことを考えることを疎かにした自分の甘さにあった」と社長は話す。

 こういった話は特殊な話ではなく、頻繁に経営者から寄せられる相談である。スポーツの世界でも名プレイヤーが名監督になれるとは限らないように、ビジネスの世界でも名プレイヤーが必ずしも優れたリーダーになるとは限らない。

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最終更新:9/2(金) 10:45

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