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集中連載!極私的「シン・ゴジラ」の愉しみ方【Vol.3】

東京ウォーカー 9/3(土) 11:30配信

今回の新しいゴジラの造形や能力、設定に関しても考え抜かれ、語るべき部分も多い。そして、そうした「語るべき部分」に気付いている人も多いはずなのになぜか、ゴジラ本体について語る文章は少ない。そこで、今回は、あくまで怪獣「ゴジラ」に視点を集中して、レビューしようと思う。

【写真を見る】映画「シン・ゴジラ」より

■ ゴジラとガメラにみるアレンジしやすさの違い

怪獣映画だけでなく、SF映画として人気が高い樋口真嗣氏が特技監督を務めた「平成ガメラ3部作」において、作劇の面でガメラが魅力的であった大きな理由は、「基本を大事にしつつ、さまざまなアレンジができたから」という部分にある。飛行して移動するガメラの腕の形状をウミガメのヒレのようにすることで高速移動を可能にし、口から吐く火炎を火球として描き、さらには腹部から巨大な火球を発射できるなど、「飛行して火を吐く」というガメラの基本部分を大胆にアレンジすることで、スピーディーな動きとアグレッシブな攻撃シーンが演出された。

しかし、鈍足で移動し、口から放射能火炎を吐くゴジラは、怪獣としてのアレンジが難しい。昭和ゴジラでは、放射能火炎で空を飛ばしたり(「ゴジラ対ヘドラ」)、電磁石化する(「ゴジラ対メカゴジラ」)などの身体的な強化が描かれた。平成ゴジラではメルトダウン寸前の体表を赤く光らせたり、攻撃力の増した赤い放射能火炎を吐くなど(「ゴジラVSデストロイア」)したが、イメージを覆すほどの劇的な変化が描かれることはなかった。ハリウッド版「GODZILLA」(98年版)では、猛スピードで走るという大胆なアレンジをしたが、逆に「あれはゴジラじゃない」と言われる始末。この結果から、ゴジラは、ガメラのようなイメージを崩さずに、大きくアレンジするのが難しい怪獣だと言えるだろう。

しかし、「シン・ゴジラ」ではゴジラを大胆に設定し直すことで、大きなアレンジに成功している。そのアレンジというのは、「完全生物」という新設定だ。

■ 進化し続ける完全生物 新たなゴジラの行きつく先

「シン・ゴジラ」における、ゴジラは環境や状況に合わせて「進化」し続ける生物として描写される。最初の登場時は、全体像こそ見えないが、巨大な尻尾を持つ魚のような生物だったのだろう(第1形態)。それが、上陸するとえら呼吸ではなく、肺呼吸の生物へと進化する(第2形態)。さらに、地上を移動するにあたっては、身体を起こして直立で歩く二足歩行へと骨格を変化させて立ち上がる(第3形態)。その後、一時海に戻り、再び上陸した際には、最終形態である第4形態へと変化を遂げていた。

環境に合わせて身体を進化させ続けるがゆえに、体内には原子炉のような巨大なエネルギーを生み出す器官が存在し、身体を攻撃から内部を守るべく体表は分厚い皮膚や背びれ、歯などは細胞が突然変異しながら内側からどんどん作り出されているからこその異形さとなっている。ゴジラがなぜ、体表がただれたようになっているのかという理由=生命が環境に合わせて進化するのに必要な突然変異=ミューテーションを繰り返しているからという解釈なのだ。

そして、進化は第4形態に留まらない。米軍の爆撃で傷を負った後、ゴジラは「自身を覆う鎧のような身体でも避けられない攻撃がある」ということを理解したかのように、防御一辺倒だった身体を新たに変化させる。それが、口からレーザーの様に放たれる熱戦放射能力であり、さらには、フレキシブルな攻撃が可能な尻尾から先の熱線放射、広範囲な攻撃からも対応できる背面からの対空熱線放射能力だ。

完全生物は、身体の保護の延長である「攻撃」の面でも進化する能力を持つように描かれている。この「完全生物」というアレンジこそが、ゴジラをかつてのイメージを維持したまま、より恐ろしい「怪獣」へとその印象までも進化させることに成功したといえるだろう。また、「完全生物として環境に合わせて進化を続ける」というロジックが、ゴジラの恐ろしさを増している部分とも言える。他の評論でも言われているが、今回のゴジラは東日本大震災とそこから派生した福島第一原発の事故のオマージュであり、想像を超えて進化し、どう対処していいかわからないゴジラの姿は、あの時に我々が感じた「制御のきかないものへの恐怖」と重ね合わせているのは間違いない。

劇中では第4形態でその活動を止めることになるゴジラだが、あの姿が最終形態であるのかという疑問が残る。その最大の特徴が「腕」だ。第4形態で現れた際に、それまでなかった腕が生えていたが、劇中では使われることはなかった。完全生物として、環境に合わせて進化するゴジラになぜ「腕」が必要だったのか?その答えは劇中では出ていない。

もうひとつゴジラの特徴といえるのは「瞳」。完全生物で守る必要がないために「瞼がない」、「睨まれると恐怖を感じるように人間と同じような瞳になっている」と、ゴジラの目に関してのイメージを、造形を担当した竹谷隆之氏は答えている。目は人間と同じで、進化の結果「腕」を獲得したゴジラ。このまま進化を続けると、どんな姿になるのか?ラストシーンの尻尾の先から生まれたように見える生物は何なのか?ゴジラの進化の先が、その答えに繋がっているように見ることもできる。

【文/石井 誠(いしい まこと)●アニメ(主にガンダム)、模型&ホビー、ミリタリー、アメコミ&アメコミ映画などの解説や批評を主戦場としているフリーライター。著書に「マスターグレード ガンプラのイズム」(太田出版)などがある】

最終更新:9/3(土) 11:30

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