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イスラム女性の水着ブルキニをめぐり大騒動のフランス

週刊文春 9/3(土) 7:01配信

 公共の秩序か、信教の自由か――イスラム女性の“水着”をめぐって、そんな論争が欧州を席巻している。

 発端となったのは、個人のツイッターにアップされたものとして8月24日以降、報道された1枚の写真。そこには、フランスのニースの砂浜でくつろぐイスラム系と思われる女性を複数の武装警官が取り囲み、着ている「ブルキニ」を脱ぐように指示する姿が映されていたのだ。

「ブルキニ」とは、イスラム教徒の女性が顔を隠す装束「ブルカ」と、「ビキニ」を組み合わせた造語で、顔と手足以外の全身を覆うウェットスーツに似た水着全般を指す。

 実はフランスでは2010年に欧州で初めて「ブルカ」などイスラム教徒の女性が顔を部分的に隠す装束を公共の場で着用することを禁じている。その背景には、政治を宗教の介入から「守る」という同国の政教分離の原則とともに、女性の肌の露出を制限するのは「女性への抑圧」であり、「フランス的ではない」という思想がある。

 そして今年7月、ニースで“トラックテロ”で86名が犠牲になったことを受けて、ニース市がハイシーズン限定でビーチでのブルキニ禁止令を出し、25の市町村がこれに続いたのである。

 フランス国内では、ブルキニ禁止に異を唱える人はわずか6%(Ifop調べ)だが、フランス国外では、「排他的で時代錯誤だ」と非難囂々(ごうごう)。さらに従来のブルカなどの禁止令をイスラム教徒が「攻撃」と受け止め、過激派の醸成を促したと見る向きも多く、今後更なるテロを引き起こす可能性も指摘されている。

 こうした状況を受けて、26日、仏行政裁判の最高裁(国務院)は、「信教と個人の自由という基本的自由」を侵害するとしてブルキニ禁止令を凍結。騒動の幕引きを図ったが、3つの自治体がブルキニ禁止の継続を即座に表明。

 さらに仏大統領選への立候補を表明したサルコジ前大統領は、「我々のアイデンティティが危機にさらされている」として、「全土でブルキニを禁止する」ことを“公約”に掲げるなど、騒動は拡大の一途を辿っている。

 今や、西欧諸国でイスラム教徒が最も多く、人口の7%を占めるフランス。ブルキニ問題の根は想像以上に深い。


<週刊文春2016年9月8日号『THIS WEEK 国際』より>

近藤 奈香(ジャーナリスト)

最終更新:9/3(土) 7:06

週刊文春

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