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中国人民銀行が金融緩和を進めようとしない理由

マネーポストWEB 9/3(土) 16:00配信

 株式市場では、世界的に金融政策の動向が注目されているが、中国の金融政策はどうなっているのだろうか?

 7月26日に行われた中央政治局会議では、下半期の経済運営について方針が示された。供給側構造改革を進めること、経済の安定成長を保つこと、そして資産バブルを抑えることなどが大目標となっている。

 経済政策については、引き続き積極的な財政政策と穏健な金融政策のポリシーミックスを実施するとしている。金融政策としては緩和政策を採っているかのように聞こえるが、実際はそうでもない。

 まず、公開市場操作についてであるが、翌日物のshibor(上海銀行間取引金利)の動きをみると、2015年6月1日には1.027%まで下がったものの、2015年9月以降は1.9%前後まで上昇している。その後少し低下した時期もあったが、今年1月以降は、2%前後でほぼ固定されている。2週間物、1か月物、6か月物などについては今年の春に少し上がって7月以降は逆に少し下がっているが、ここ数年の動きと比較すれば、相対的に小さな変化である。

 一方、特定の金融機関に対して、7日以内の期限で中国人民銀行が資金を供給したり、回収したりするSLOや、3か月、6か月の期限で当局が資金供給を行うMLFなど、新しい資金供給システムが積極的に使われている。ただし、これらは、農村向けや中小企業向けなどに資金使途を限定するための金融ツールであって、貸出量の拡大というよりも、貸出の質の向上を図るといった側面が大きい。

 短期金融市場での金利誘導を見る限り、中国人民銀行は金融緩和を進めているというよりも、むしろ中立を保っているようなイメージである。

 金融の量的緩和につながる預金準備率の引き下げについては、今年は2月29日に50bp(ベーシスポイント)引き下げただけである。基準金利の引き下げについては昨年10月23日に行って以来、変更はない。こうした点も併せて考えると、金融改革は資金供給に焦点が当てられているようにはみられない。

 では、どこに焦点が当てられているのであろうか? 8月下旬の証券市場ではインターネット金融に関する悪材料があった。

 銀行業監督管理委員会、工業情報化部、公安部、国家インターネット情報弁公室の4部門は8月24日、「P2Pインターネット貸出プラットフォーム業務活動に関する管理暫定弁法」を発表した。これによれば、株式投資、先物・ストラクチャード商品取引などのために情報仲介サービスを新たに行ってはならないなど、13項目の禁止行為が示された。

 意図ははっきりしている。拡大するインターネット金融の管理を強化し、野放しになりかねない金融リスクをしっかりとコントロールしようとしている。

 このほか同時期には、高利回り保険商品に対する管理強化が話題になった。また、銀行の理財商品や、不動産市場に対する管理強化などの懸念もあり、本土市場の上値を重くしている。

 こうして俯瞰してみると、金融政策も構造改革や新産業の育成発展に重点が置かれているようだ。

 景気が減速しているが、それは適正な範囲である。中国政府は安易な景気対策など行わず、徹底的に構造改革や新産業の育成を進めている。

 本土市場はもとより、国際市場でさえも中国リスクに対する懸念が薄れているが、それは多くの投資家が政策の意図を理解しはじめたからであろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週間中国株投資戦略レポート」も展開中。

最終更新:9/3(土) 16:00

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